考古学者たちが最近キプロスの墓から発掘した宝石や陶磁器、アクセサリーなど約500点の貴重な副葬品は、3000年以上前のものだ。そのうちの一つ、宝石をちりばめた「蓮の花」のペンダントは、古代エジプトのある王妃が身に着けていたアクセサリーと酷似しており、キプロスとエジプトの間には早くから貿易取引があったことを証明している。
ニュー・スウェーデン・キプロス探検隊の考古学者たちは2018年、古都ハラスルターンテッケ(Hala Sultan Tekke)で、初めて2つの青銅器時代の地下墓を発見した。当時、内部で155体の人類の遺骨が発見され、3000年以上前のものと確認された。
「これらの発見は、この遺跡がこの都市の支配層家族の墓地であることを示している」と、スウェーデンのヨーテボリ大学歴史研究名誉教授、発掘作業主任のピーター・フィッシャー(Peter Fischer)氏は声明で述べている。
最近、同チームはさらに墓の中から約500点の副葬品を発見した。これらの物品は幾重にも積み重なっており、墓室の使用が何世代にもわたって続いていることを示している。
今回の発見の中で最も印象的な文物の一つは、5歳の子供の人骨につけた金の頭飾りであり、この子供が裕福な家庭出身であることを示している。また、この人骨には金のネックレスと金のイヤリングが付いている。
副葬品には、金、銀、青銅、象牙で作られたアクセサリーや記念品のほか、異文化の宝石や華やかな食器、陶磁器などが含まれていた。
もう一つの重要な発見は、メソポタミア(現在のイラク)の楔形文字が刻まれたヘマタイト(赤鉄鉱)製の円筒印章だった。
フィッシャー教授によると、文字は3行あり、そこにはメソポタミア人が崇拝した神アムールの名前と紀元前18世紀に王になった父子の名前が記されている。
考古学者たちは現在、なぜこの印章が最終的に1000キロメートル以上離れたキプロスで発見されたのかを突き止めようとしている。
他の副葬品には、インドの赤い瑪瑙の宝石、アフガニスタンの青い天青石、バルト海周辺の琥珀が含まれている。これらの貴重品は、キプロスが青銅器時代の貿易で中心的な役割を果たしていたことを示している。
考古学者たちはまた、キプロスが南部の隣国エジプトと交易を行っていた証拠である黄金の首飾りや聖甲虫 (甲虫の形をした象形文字のお守り) などを発見した。
フィッシャー教授によると、エジプトの同様の発見と比較することで、考古学者たちはこれらの黄金装飾品の年代を特定したという。これらの遺物のほとんどは、紀元前1350年頃の王妃ネフェルティティ(Queen Nefertiti)と夫アクエンアテン(Akhenaten)の統治時代にさかのぼる。
「ネフェルティティ王妃が身につけていた宝石によく似た、蓮の花の形をして宝石がちりばめられた金のペンダントが見つかった」
古墳の陶器の分析から、陶器の制作様式が時間の経過とともに変化していることが明らかになり、これらの発見の年代決定にも役立っている。
考古学者たちは、これから古墳にあるすべての人骨のDNAを分析する予定である。「それによって、個人間の関係や、その中に他の地域からの移民がいるかどうかが確認できる。大規模な貿易ネットワークを考えれば、それは不可能ではない」とフィッシャー教授は言う。
(翻訳 橋本 龍殻)
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