一年の中で、「冬至」は人々の印象に顕著に残る季節です。なぜならば、この季節は天と地の間の陰陽の交替の時期でもあり、即ち「四季折々の入れ替わり」も冬至から始まります。
同時に冬至は天と地への尊敬、先祖への崇拝を表して祭る季節でもあり、家族が年に一度集まり、ご馳走を食べ、体内にエネルギーをたくさん蓄える重要な時でもあります。
古来、冬至の日に福を迎え、体のエネルギーを強めて新年を迎えるための飲食の工夫があり、様々な伝統的方法が残されています。
冬至、一年の始まり、陽気を迎える季節
多くの古書、啓発教材、例えば『幼學瓊林』などには、「冬至一陽性」について書かれています。冬至のこの日から陰気が徐々に弱まり始め、陽気が強まっていくのです。『漢書‧五行志』の中で、「冬至陽性剛健の始まり」と記載されていて、つまりこれは「新しい一年の始まり」の象徴であり、中華『易經』陰陽説の中の伝統の知恵でもあります。
冬至は八卦の卦象の中で、陰から陽へ転じ始める日であり、循環往復の開始の日です。天と地の万物の更新のスタートラインでもあります。
この時期に紅白二色の開運団子を食べることは、「冬至は陽生の始まり」の意味を反映しています。冬至に食べる団子は「冬至円」と呼ばれ、「円」は、元旦の「元」と中国語では同じ発音であり、円形の「冬至円(団子)」は歳月の循環往復を指し、一から始まる「元旦」を意味します。冬至に食べる紅白の円(団子)は陰陽交替の始まりの時期に幸運を呼び寄せる意味が込められています。
冬至の朝、民間では人々はまず神様への尊敬を表明し、先祖を祭ります。祭祀には紅白の甘い団子が必要です。もちろん紅白の2色だけではなく、ほかの料理とも色と味を合わせますが、冬至に一皿紅白団子を食べることで新年の「陰陽の交替に幸運」をもたらします。
小豆粥(アズキのお粥)を食べて一年の病気や汚れを取り除く
冬至に小豆で作ったお粥を食べると、疫病と体内の汚れが追い払われます。南北朝時代には民俗誌(フォークロア)の『荊楚歲時記』の中で「冬至に小豆粥を食べると疫病と体内の汚れが追い払われる」という記載があります。
伝説によると、古代、共工には出来の悪い息子がいましたが、冬至の日に死んでしまい、死後疫病の鬼になって、世の人々に苦しみをもたらしました。しかし、この息子は小豆を非常に恐れていました。そこで人々は冬至の日に小豆を食べることで疫病の鬼を追い払い、疫病から身を守ったそうです。
韓国では今も冬至に小豆粥を食べる習慣が残されています。日本では正月の初めの朝、小豆と焼き餅を食べる習慣が残されています。これらは東アジア文化圏における中華伝統文化の名残とも言われています。
小豆は栄養豊富な健康食品であり、体内の汚れを追い払う効果があり、冬至に紅白団子と小豆のお粥を一緒に食べることで幸運を呼び、健康を保つことができます。
ワンタンを食べて知恵を育てる
宇宙は混沌から誕生したとされています。ここでの「混沌」と中国語の「餛飩(ワンタン)」は同じ発音です。つまり、「餛飩(ワンタン)」を食べて新年を迎えることで、知恵を広げ、未来を開拓するという意味が含まれています。
清の時代、民間では冬至に「餛飩(ワンタン)」を食べる習慣がありました。『燕京歲時記』には、「餛飩(ワンタン)」の形は卵と類似していて、あたかも天と地の混沌の状態を表しているため、これを食べると書かれています。
つまり冬至に食べるものとして相応しいとされています。
宋の時代まで遡ってみても、民間に同じ習慣があって、南宋の陳元靚の『歲時廣記』の中で「首都など大都市の人が集まる場所の人間は冬至にワンタンを食べるべし」と書かれています。南宋の周密は『武林舊事』の中で、ワンタンを食べて先祖を祭ると書いています。冬至にワンタンを食べることで一年の始まりを祝い、先祖に感謝の意を表し、知恵を開き、未来を開拓します。
水餃子を食べて健康を保つ
冬至とお正月に水餃子を食べて凍傷から耳を守るという習慣があります。これは後漢の時代から伝えられています。
民間に、「冬至に餃子を食べなかったら、耳が凍って耳が落ちる」とか、「冬至に餃子を食べないと足の指が凍ってしまう」とか、「餃子を食べて耳を守る」といった多くの諺が残されています。
後漢の終わりに疫病が流行し、社会が混乱していました。当時「名医」だった張仲景は故郷に戻り、人々を病気の苦しみから救っていました。
張仲景は白河のほとりで寒さに震え、耳を凍らせている故郷の人々と出会い、彼らを助けたいと思いました。その年の冬至に張仲景は弟子たちと一緒に、南陽東関のある場所で小屋を建て、大きい鍋でお湯を沸かし、貧しい人々に暖かい飲み物と漢方薬を与えて治療を行いました。
張仲景は「寒気を追い払い耳を守るスープ」を調理しました。大きい鍋の中で、漢方薬と羊の肉を包んだ大きい水餃子を煮込み、人々の体を温めて寒気を追い払い、耳が凍るのを防いでいました。張仲景はこの餃子の入ったスープを「耳を守る」スープと名付けました。
冬至からお正月までの間、この暖かい餃子入りのスープを作って貧しい人に無料で提供しました。スープを飲んだ人々は、体が暖かくなり、耳も熱くなり、耳が凍りつくことはなくなりました。
中国の北の方では冬至とお正月は水餃子を食べる習慣が今も残されており、人々は寒い冬のこの時期に暖かい餃子を食べることで体の健康を保って、春を迎えるのです。
冬至に鶏肉スープを食べて精気を保ち健康を維持する
陰陽の交替に応じて生活のリズムを調整するのは、『黃帝內經』の中で人々に示された養生の方法の一つです。一年の中で最も寒い季節である冬至に精気を養生し、エネルギーを蓄えることは長生きのためのコツです。冬は「内臓」を養生し、エネルギーを蓄えて、健康を保つ良い季節です。
冬に栄養を補うというのは、古代の人々の知恵です。天と地の精気が濃縮された料理を食べることで、体を補う効果が発揮され、一年の季節の中で最も長い冬の季節を乗り越えてきました。
では、冬に「補う」食として有名なのは何かというと、鶏肉と漢方薬で作ったスープがその一例です。「龍眼乾」(ドライ龍眼)及び「桂圓肉」(ドライ龍眼の実の部分)は食べても良し、漢方薬としても良し、伝統的な滋養強壮の食品です。それをもち米に混ぜて、鶏肉と一緒に煮込んだ甘いお粥は非常に優れた滋養効果があります。そのほかにも様々な、自身の体の状態に合わせた調理方法があり、とにかく一皿暖かいお粥を食べることで陰陽の交替に陰を抑え、陽を補う効果が発揮されます。
豚足入りの麺を食べて邪気を払い、寿命を延ばす
冬至は「長生きの季節」としても知られています。冬至を過ぎると昼夜の長さは徐々に夜より昼間が長くなります。人々は太陽の下で日光を浴びて多くの陽気を吸い込み陰気を追い払います。古代には、冬至にお嫁さんが家族の長老に、靴などを手作りしてプレゼントする習慣があり、心からお年寄りに寄り添う意味を表していました。これを「獻襪履」とも言います。
三国時代、才能のあった曹植は『冬至獻襪履頌表』を作り、「冬至に幸運を迎え、靴を作り、お年寄りにプレゼントして長生きすることを祝福する」と書いています。
冬至に靴を作り親孝行を行っていましたが、ある時期から、それが豚足入りの麺料理を作ることに変わっていきました。民間ではお年寄りの誕生日に豚足入りの麺をごちそうして、お年寄りが長生きできるように祝う習慣があります。豚足は健脚で歩くという健康長寿の意を表しています。
昔、試験を控えている受験生は豚足を食べる習慣があり、「試験に合格」するという意味をこめています。豚足を柔らかくなるまで煮込んだら「熟蹄」となり、中国語で「熟題」と同じ発音になります。試験問題に熟しているという意味があります。受験生は「熟蹄」を食べたら、試験に合格できるという望みがこめられています。
冬至に家族同士が一度に集まり、お年寄りを囲んで、豚足を柔らかく煮込んだ料理を食べて邪気を追い払い、新年を迎えます。この新しい一年が健康であり、また望みがある年になるようにという意味がこめられています。
上述の様々な冬至料理は、料理そのものの効果とは別に、新旧の交替、陰陽の交替の時期に、天地の新鮮なエネルギーを体に取り入れて悪いエネルギーや邪気を追い払い、元気で健康かつ望みがある新年を迎えるという人々の気持ちを表しています。
また、季節の移り変わりに従って行う「衣食住行(衣食住と交通手段:生活上なくてはならないもの)」の行動は、天の意に従い生きるという昔の人々の思想を表しており、天の意思に従えば、必ず天の神様の保護や祝福が得られて邪魔が少なくなるという人々の世界観が表れています。古書の『尚書』には、「天は徳のある人を祝福する」と書かれており、また『易経‧大有』には「天からの祝福が得られると良いことがたくさんあって悪いことは消える」とも書かれています。
(翻訳・星野一)
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