夏の高温多湿で眠れない 食事で整える不眠対策

芒種の節気に入ると、気候は梅雨から日中の高温と蒸し暑さ、そして午後の雷雨が特徴的な本格的な夏の気候へと移行します。

湿気と暑さが重なるこの時期、多くの人が睡眠の質の低下・イライラ感・夜中に目が覚めやすいといった問題を感じ始めます。中医学の医師は、湿熱が重なる気候は気血の巡りや自律神経のバランスに影響を与え、不眠を招きやすいと指摘しています。真夏の不眠の悩みから解放されるには、まず体質を整え、適切な食事を心がけることが大切です。

高温多湿が睡眠を奪う仕組み

欣悦中医診所の中医師、頼俊宏氏は、現代医学の観点から、夏の高温によって人体の新陳代謝が活発になり、大量の発汗で水分や電解質が失われると説明しています。夜間になっても気温が高いままだと、体の深部体温が十分に下がらず、自律神経が休息モードへうまく切り替わらないため、睡眠の質が低下します。

さらに、仕事のストレスや忙しい生活リズム、不安感なども高温の影響でより強く現れ、悪循環を形成しやすくなります。

中医学では不眠を「不寐(ふび)」と呼びます。頼俊宏氏によると、夏は五臓のうち「心」に対応する季節であり、高温によって生じた熱は「心火」となって精神を乱しやすくなります。また、暑湿の邪気は脾胃の働きを妨げ、「胃不和則臥不安(胃が調和しなければ安眠できない)」という状態を引き起こします。

さらに、夜間に陽気が陰血のなかへ十分に収まらず、心神が安定した拠り所を失うと、寝返りを繰り返してなかなか眠れなくなります。

頼俊宏氏は、中医学において不眠は臓腑のバランス失調による症状であり、治療の核心は体質改善にあると強調しています。漢方薬や鍼灸によって気血を整え、陰陽のバランスを回復させることで、体が本来の調和を取り戻し、自然に質のよい睡眠が得られるようになります。そのため、睡眠薬への長期依存による副作用を心配する必要もありません。
 

食事から始める、よく眠れる体質づくり

快適な睡眠を得るためには、日々の食事選びが非常に重要です。

頼俊宏氏は、現代医学の研究により、人間の睡眠は主に松果体から分泌されるメラトニンによって調節されていることが確認されていると説明しています。日中の強い光はメラトニンの分泌を抑制し、人を覚醒状態に保ちます。一方、夜になると光刺激が弱まり、脳内のセロトニンがメラトニンへ変換されて睡眠スイッチが入ります。

そのため、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを豊富に含む食品――オートミール・アーモンド・ジャガイモ・七面鳥肉・バナナなど――を積極的に摂取したり、就寝前に温かい牛乳や菊花茶、はちみつ湯を飲んだりすることで、神経をリラックスさせ、入眠を助けることができます。

一方、中医学では不眠は主に「心神不寧(心が落ち着かない状態)」によって起こると考えます。そのため、心脾を補い血を養い精神を安定させる食材を多く摂ることが勧められています。例えば、竜眼肉(リュウガン)・ナツメ・ハスの実などが不眠改善に役立ちます。

漢方生薬のなかでも、酸棗仁(さんそうにん)は現代の臨床研究によって優れた睡眠改善効果が確認されており、養血安神作用によって睡眠構造そのものを改善します。特に更年期女性のほてり・寝汗・動悸による不眠に対して非常に高い効果が認められています。

 

睡眠を奪う、避けたい就寝前の食事

頼俊宏氏は、良質な睡眠を得るためには就寝前の食事選びが極めて重要であり、次のような食品は避けるべきだと指摘しています。

  • カフェインを含む食品:濃いお茶やコーヒーなどは中枢神経を刺激し、感覚を鋭敏にして脳の睡眠シグナルを妨げます。
     
  • 辛味の強い刺激物:胃腸への負担を増やし、横になることで胃食道逆流症(いわゆる胸やけ)を起こしやすくなります。胸部の灼熱感で一晩中眠れなくなることもあります。
     
  • チーズや加工肉製品:これらにはチロシンが多く含まれており、脳内で興奮性神経伝達物質であるドーパミンの合成を促進します。その結果、脳が深夜まで「残業」を強いられる状態になります。
     
  • 精製された甘いお菓子:糖分を過剰に摂取すると血糖値が大きく変動し、自律神経が血糖を安定させようと過剰に働くため、眠気が消えてしまいます。その後、いわゆる「糖による眠気」が訪れることもありますが、甘い食品は胃食道逆流を引き起こす場合もあり、辛い食品と同様に睡眠の質を低下させる原因となります。
     

安神・除湿に役立つ2つのスープ

夏の湿熱と不眠対策として、頼俊宏氏は食養生による補助的な体質改善を勧めています。以下は安神作用と睡眠改善効果が期待できる2種類のスープです。

白キクラゲとハスの実のスープ

材料:

  • 白キクラゲ……4個
  • 乾燥ハスの実……20粒
  • ナツメ……4個(割って種を除く)
  • リュウガン……5粒
  • 遠志(オンジ)……12g
  • 合歓皮(ゴウカンヒ)……4g
  • 氷砂糖……適量

効能:
遠志には心腎の働きを調和させ、痰を除き精神を安定させる作用があります。合歓皮には気分の落ち込みを和らげ精神を安定させる作用があります。

さらに、白キクラゲの滋陰潤肺作用、ハスの実とナツメの補脾養心作用が加わることで、精神を総合的に安定させます。夏の心神不安や、憂うつ・不安型の不眠改善に非常に役立ちます。

午後のおやつや夜食としても適しています。

注意事項:
白キクラゲとハスの実には食物繊維や多糖類が豊富に含まれています。消化機能が弱くお腹が張りやすい方は、適量にとどめてください。

四神湯(ししんとう)

材料:

  • 豚の小腸……600g
  • スペアリブ……150g
  • ショウガ……4枚
  • 長ネギ……2本
  • ハトムギ……40g
  • ヤマイモ……20g
  • ハスの実……40g
  • 芡実(けんじつ)……40g
  • 茯苓(ぶくりょう)……20g
  • 米酒……半瓶
  • 塩……小さじ1

効能:
四神湯は中医学の代表的な健脾・除湿処方です。ヤマイモとハスの実が脾を補い、茯苓・ハトムギ・芡実が利水・除湿を助けます。

体内の湿熱が尿として排出され、脾胃の機能が正常化して体内環境が安定すると、夏のむくみや消化不良が改善されるだけでなく、神経の安定にもつながり、良質な睡眠を促します。

注意事項:
伝統的な四神湯には豚の小腸が使用されますが、これは高カロリー・高コレステロール・高プリン体の食材です。そのため、心血管疾患・高脂血症・痛風のある方は、豚の小腸を除くか、キノコ類に置き換えることをお勧めします。体への負担を増やさないためです。

(翻訳編集 解問)

黄星若