雷多発、消えた火口…トンガ噴火「疑問尽きぬ」=専門家

「1000年に1度」とも言われる南太平洋トンガの火山島の大規模噴火。15メートルの津波を引き起こし、1万キロ離れた日本の気象庁は「津波とは言えない」潮位変動に警告を発した。噴火当時は毎秒100本もの雷を計測したという。これまで専門家が観測したことのない現象がいくつも確認された。

首都ヌクアロファから65キロ離れたフンガトンガ・フンガハアパイ火山の大規模な噴火から5日経った。45もの島々からなる島嶼国のトンガには10万人が暮らす。噴煙は20キロ上空に漂い雨を酸性雨に変える可能性がある。雨水を貯めて生活用水に使用する住民が多く、飲用水などの支援が急務となっている。

国際空港の火山灰除去作業が完了したトンガの空港には、支援物資を積んだニュージーランド(NZ)空軍の輸送機が現地に到着した。NZのマフタ外相によると、水を入れる容器や避難グッズ、発電機、衛生用品、通信機器などの災害救援物資を運んだという。日本の自衛隊も輸送機・輸送艦を派遣し支援を行っている。

噴火後、水面から消えた火山噴火口

国連衛星センター(UNOSAT)は17日、噴火した南太平洋のフンガトンガ・フンガハアパイ火山の衛星写真を公開した。噴火以前に海面上にあった285ヘクタールの陸地が噴火後にほぼ消失した。

米スミソニアン協会の火山学者ジャニーン・クリプナー氏は、トンガにとって壊滅的な被害をもたらす可能性があるとみている。現場にあった観測機器は噴火で破壊された可能性が高く、さらには噴火口が海中に沈んだことで、今後の予測が難しくなるだろうとロイターの取材に語った。

豪モナシュ大学の火山学教授レイモンド・カス氏は、これまでの海水を蒸発させる小規模な爆発とは違っていたと指摘する。地球内部から急激に上昇してきた1000度のマグマに多量の火山ガスが含まれていた可能性があり、今回の大規模噴火に繋がったとの推察をロイターに語った。

20世紀で2番目に大きな火山噴火とされる1991年のフィリピンのピナトゥボ噴火と類似していると考える専門家もいる。当時の災害では約800人の死者が出た。

豪オークランド大学のシェーン・クローニン教授は「およそ1000年に一度の規模の火山による大規模な爆発」だと現地誌カンバセーションで述べた。向こう数週間から数年に渡ってトンガの活動は続く可能性があるとも付け加えた。

火山噴火前の雷急増

科学誌ナショナル・ジオグラフィックの取材に答えた米国気象学者クリス・バガスキー氏は、噴火前の数日間、火山周辺の雷の発生数が約3万回まで増えていたと述べた。当日は毎秒100本もの雷を計測したという。2018年に起こったインドネシアの火山島噴火も、放電を1週間程度で34万回を記録したが、トンガの噴火はこの数字を遥かに上回った。

2018年、インドネシアのアナク・クラカタ島で数カ月にわたって小規模な噴火が続いた。噴火時に1時間あたり8000回の雷が発生した。山崩れによって生じた津波が近隣のジャワ島を襲い、数百人が死亡した。

蘇文悦
蘇文悦