トルコのカナッケールにある木馬のビュー。映画「トロイ」の撮影後、小道具として使われた木馬がカナッケール市に寄贈されました。(Shutterstock)

トロイの木馬のお話(4)

この男は海の上のギリシャ軍に少しも驚きませんでした。すべてが彼のコントロール下にあるように思えたからです。その時、壁の隙間から松明(たいまつ)を取り出し、松脂(まつやに)の入った籠の中に慎重に投げ入れました。すると籠から赤い炎が立ち上り、壁の向こうの広場と男の顔を照らしました。

その男の目は赤く、顔は赤く腫れ、傷だらけで、左耳は半分に切られていました。そうです、この男はシノンです。

この頃になると、ギリシャ軍船の明かりがはっきりと見えるようになりました。シノンは急いで壁を降りて木馬に近づき、短刀の背で前脚を三度叩くと、すぐに馬の中から鎧のぶつかり合う音が聞こえてきました。すると、馬の胸の板がギシギシと音を立てて開き、中から金色に輝く兜をかぶった兵士が出てきました。

「すべて順調か?どうだ、シノン?」と低い声で尋ねました。

「すべて順調だ、ユリシーズ。我々の軍艦は海岸に停泊中だ。ギリシャ軍の兵士はここで突撃の準備をしている。愚かなトロイの人々は家で眠っていて、自分たちがこれから殺されるとは夢にも思っていないだろう!」

ユリシーズは馬の胸の隙間から素早く縄梯子を垂らし、地面に下りていきました。こうして50人の兵士が彼に従って、トロイに奇襲攻撃を仕掛けたのです。

「何があったのか?兄弟よ」ユリシーズは走りながらシノンに言いました。「その顔の傷、目も半分見えていないし、耳も半分切れている。いったい、どうしたんだ?もしかして、トロイの木馬のことが関係しているのか?」

するとシノンは「彼らは私を蔑み、呪ったが、私を殴らなかった。この傷は彼らの手によるものではない」「敵が私の話を信じ込み、私の仕掛けた罠にかかるように、私はわざとこのように自分を傷つけたんだ」と答えました。

「よくやった、相棒!」「人々は私を計略の悪魔と呼んでいるが、今度は君にこの名誉ある称号を与えよう」。ユリシーズはいとこの肩を叩いて笑いました。そして、手にした長い剣を振りかざし、背後にいる戦士たちに向かって、「戦いの時が来た、この10年にわたる戦いも終わりを告げる」、「さあ、男たちよ、剣を掲げろ!今夜は戦うぞ!」と叫びました。

眠っていたトロイの人々は、ギリシャ軍の叫び声と物音で夢から覚め、家は炎に包まれ、ある者は捕まり、ある者は殺されました。こうして、10年にわたった戦いの最終戦の幕が切って落とされたのです。エーゲ海の西岸で繁栄を謳歌していた都市国家トロイの人々はこうして壊滅し、苦い教訓を後世に残すことになりました。

つまり「要塞は内側から破るのが最も簡単であり、正義感が強く善良な人々は、木馬の中に潜むという侵略者の陰謀に用心しなければならない」ということです。

(翻訳・微宇)

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