「これなら栄養が壊れません」低温調理はおいしくてヘルシーです
高温の油で揚げ、強火で一気に炒めるのは、中華料理の王道です。
そのようにして作った熱々の料理は食欲をそそり、しかも本当においしいので、つい何度も手が伸びてしまいます。
中華料理の魅力は全く否定しませんが、食材のもつ栄養素を壊さず、健康に役立つという意味で、以下にご紹介する「低温調理法」を、ぜひご活用いただきたいのです。
油は加熱すると酸化します。
特に、揚げもので複数回つかった油は、かなり酸化が進んでいるため、油自体に臭いがついていたり、粘度が高くなっています。この状態を「油が疲れた」あるいは「油が重くなっている」と呼ぶこともあります。
古くなった食用油は、腐敗していない限り濾過して再使用できますが、やはり料理の味を落とす場合があります。そのため、古い油は、1回の調理にあまり多く用いることはできません。
また、酸化がひどく進んだ油を摂取することは動脈硬化の一因にもなり、肝臓への負担を増やす原因にもなります。
それに対して、基本的に120度以下で調理する低温調理法は、油の酸化が避けられ、ビタミンCなどの栄養素を壊すこともありません。
昔から使われてきた鉄製の中華鍋やフライパンは、調理前に十分に火にかけて焼き、器具自体を煙が出るほど高温にしてから炒め油を引きますので、酸化した油のなかへ食材を投入することになります。
これに対して、今ではすっかり普及したテフロン加工のフライパンは、調理前に火にかける必要はありません。炒め物をするにしても、はじめに適量の油と材料を入れ、低温からスタートすることができますので、油の酸化による健康へのリスクは最小限に抑えられます。
そこで、低温調理の要点をまとめますと、次の3つになります。
「炒め物は、冷たい油からスタート」。「弱火で、気長に調理する」。「炒め物には適量の水を加えて、炒め蒸しにする」。
それでは火を使わない調理、および加熱を最小限にした低温調理のいくつかを、以下にご紹介しましょう。
1、生食(サラダ)
太古の昔より、人々は大自然の恵みを採集して食物としてきました。
植物の種や新芽、果実から必要な栄養を得るため、これらを生食することは、もともと人類が有してきた生きるための方法です。
今でも新鮮な野菜を生食することは、普通に行われています。ただ、生ものを食べるときは、必ずきれいに洗い、泥汚れや傷んだ部分を切り落としてからにしましょう。
なお、市販のドレッシングやソースをつけない方が良いとも言われています。
これらの便利な調味料の多くはサラダ油や卵黄から作られていますが、うっかりすると油脂をたっぷり摂取してしまう上、食品添加物の心配もあるからです。
2、和え物
野菜サラダではありませんが、冷やした食材や常温の食材を切って盛りつけ、軽く調味して、そのまま食べる方法もあります。2種類以上の食材を組み合わせるときは、和え物と呼ばれます。
日本料理の「冷や奴」は、豆腐のおいしさを存分に味わえる一品です(freeangle / PIXTA)
3、水煮、湯引き
食材を、鍋のお湯で煮るのが「水煮」。熱湯にさっとくぐらせるのが「湯引き」です。
熱湯を使うといっても100度ですので、120度以下の低温調理法の範疇に入ります。
キッチンは湯気で満たされますが、熱したフライパンの油煙を肺に吸い込むほどの危険はありません。ただし、熱湯の扱いは十分に注意してください。
緑色の野菜を「湯引き」すると、緑色がより鮮やかになります。
4、蒸し物
古代の人は、米を、たき火にかけた土器で蒸してから食べたようです。
蒸すことは、サツマイモやニンジンなどの根菜にも、新鮮な白身魚やカニなどの魚介類にも適した調理法です。キッチンが油煙で汚れることもありません。
5、煮込み
「煮込み」 は、和洋中いずれの料理にもある調理法です。
蓋をした鍋で煮込む方法は、時間は長くかかりますが、食材の栄養とうま味は全て鍋の中に残るため、煮えた具材と濃厚なスープの両方が楽しめます。
そのほか、調味した汁で野菜を煮て、そのまま冷まし、味を含める「煮浸し」という方法が日本料理にあります。
6、漬け物
「塩漬け」や「ぬか漬け」は、私たちの祖先が勤勉な日常生活を続けるなかで育んだ食文化の一つです。
漬け物は、もちろんスーパーなどでも売られていますが、市販の漬物の多くは、防腐剤や色素、香料など、本来ないはずの成分がたくさん入っています。
あなたが自家製漬け物をマスターすれば、自分の好みの食材を使い、四季を通じて絶品の漬け物を味わうことができます。もちろん添加物は入っていません。
(翻訳編集・鳥飼聡)