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【芸術秘話】天才の集中と散漫――レオナルド・ダ・ヴィンチ(下)

レオナルド・ダ・ヴィンチは晩年にローマに滞在したことがありました。メディチ家出身のローマ教皇、レオ10世に仕事を依頼されましたが、すぐに取り掛からず、作品完成後に表面に塗る釉薬(うわぐすり)を精製し始めたのです。

レオナルド・ダ・ヴィンチの並はずれた行動について耳にしていたレオ10世は「この者は永遠に何も完成させられない!手がける前に完成後のことを考える者などどこにいるのか?!」と怒り、結局、当時、新人ながらとても優秀だったラファエロ・サンティを起用することになりました。

レオナルドはまたよく突飛なことを思いつき、面白い発明をし、年をとってもこの趣味をやめませんでした。

ジョルジョ・ヴァザーリの『画家・彫刻家・建築家列伝』によると、すでに60代になったレオナルド・ダ・ヴィンチは、粘土を蝋に似た物体にし、それ自体が輝くようにする実験をしたり、また、生きたトカゲの背中に、水銀の混合物を用いて小さな翼をくっ付け、皆を驚かせました。このことから、この天才はいくつになっても、まだ子ども心やいたずら心を持っていたことが伺えます。

晩年になると、フランス王フランソワ1世に重用され、フランスの首席宮廷画家となりました。機械を愛する彼はフランスの盛大な祝典のために、機械のライオンを創り出しました。このライオンは胸の部分を開けることができ、中からフランス王の象徴であるユリの花が現れる仕掛けとなっていました。

しかし、レオナルドは面白い発明や研究に多大な時間を費やしたことに後悔したようです。彼は死ぬ間際に「私は一体この社会に何を貢献したのか?」と何度も周りの人に尋ねたと言われています。自分が「芸術分野でなすべきことをしなかったので、神と全人類の怒りに触れた」と考えていたようです。

それでも、レオナルドは芸術を成熟させ、完成させました。レオナルド・ダ・ヴィンチが後世に残したのは作品だけでなく、その生涯をもって示した、「真実」と「完璧さ」を追求するという精神なのです。

(完)

(翻訳編集・天野秀)

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