「動物性食物を多く食べるほど、糖尿病の発症率が高くなる」という研究もあります(Shutterstock)

「肉食は糖尿病の原因になるか?」

糖尿病を発症する有力な要因の一つとして、久しく「炭水化物の過剰摂取」と言われてきました。

炭水化物は「主犯格」なのか?

米国の「責任ある医療のための医師会(PCRM)」の栄養学専門家である徐嘉氏は、糖尿病の誘因として、昔に比べて「類の消費量が増大したこと」を挙げ、炭水化物過剰摂取以外の理由が存在する可能性を指摘します。

徐嘉氏はまた、糖尿病リスクを軽減するには「低脂肪野菜中心の食事を摂ることが効果的」と言います。

実際「糖尿病は炭水化物の過剰摂取による」という見方が、長くされてきました。

食べた炭水化物は消化管で糖になり、その糖が吸収されて血糖値が上昇します。それが過剰あるいは急激であれば、常に血糖値の高い状態、つまり糖尿病になると考えられるからです。

徐嘉氏は、「そうであるならば、1人当たりの米の消費量が多いほど、その国の糖尿病発生率は高くなるという推論が成り立つ」とした上で、近年の中国の事例を提示します。

「1980年から2010年までの中国の状況を見てみると、1人当たりの米消費量に大きな変化は見られず、1人当たり年間100 kg前後で推移しています。しかし、同時期の糖尿病の発病率は0.7%から11.6%まで上昇しました。したがって、中国での糖尿病の増加は、米飯に代表される炭水化物によるものではないと考えられます」

そのほか「糖尿病の人は果物を食べてはいけない」という説も、一部にあります。

そこで科学者は、糖尿病患者を「果物が多い」と「果物が少ない」の2グループに分け、3カ月間にわたり、全く同じ栄養治療を行いました。3ヶ月後、この2グループの全体的な治療効果に、目立った差はないことが分かりました。

つまり食べる果物の量は、糖尿病の症状に影響しないということです。

 

激変した中国人の食事

米や果物ではないとすると、一体何が糖尿病に関係するのでしょうか。徐嘉氏が指摘したのは、次の点です。

1980年代以降、この約40年間に、中国人の「肉の消費量」は10倍以上に増加しています。

それと全く同時期に、中国における糖尿病の発病率も10倍以上に増加しています。

これは、単なる偶然の一致なのでしょうか。

6万人以上の被験者を対象とした米国の研究でも、「摂取する動物性食品の種類と量が多いほど、糖尿病の発症率が高くなる」ということが分かっています。

極論を避けるという意味で、糖尿病の原因を1つに絞ることには理性的であるべきです。ただ明確な事実として、近年の「激変した中国人の食事」は私たちに何かを示唆しているようです。

一般的に言われるように、肉を食べ過ぎてはいけません。

しかし適量を守れば、動物性タンパク質の優良な供給源である肉類を「敵視」するほどではなく、そこまでのエビデンスはまだ得られていないのです。

したがって現段階では、「肉を食べなければ糖尿病にならない」あるいは「肉を止めれば糖尿病は治る」ということではありません。

 

「低脂肪・野菜中心」の効果

1979年の試みですが、研究者は20人のインスリン注射が必要な糖尿病患者に対して、「低脂肪で野菜中心の食事」を実践させました。

その結果、わずか16日後には、9人の患者はインスリンを打つ必要がなくなり、他の11人についても、接種するインスリン用量が26単位から11単位に下がったと言います。

また1994年には、糖尿病治療薬を服用している197人の患者が、「低脂肪で野菜中心の食事」およびウォーキングを含む簡単な生活習慣の改善を行いました。

すると26日後には、140人が薬の服用を中止し、投薬を必要とする患者は57人にまで減少したと言います。

肉をどれほど食べるかはさておき、食事内容に最大の関心をもつことは、糖尿病の予防と改善につながる確実な道であると言えるでしょう。

 

低脂肪で野菜中心の食事は、糖尿病の改善に役立ちます。(Shutterstock)

(翻訳編集・鳥飼聡)

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