医師たちは以前から、心臓病が糖尿病による合併症の一つであることを認識していました。しかし今回の研究は、血糖値と心臓のごく初期段階の関連性に焦点を当てた初めてのものです。この研究によると、思春期から青年期という成長段階で血糖値が長期間高めに保たれると、心臓の構造的・機能的損傷のリスクが3倍に上がることがわかりました。特に注目すべきは、女の子が受ける影響が男の子の5倍にのぼる点です。
この研究結果は、人生のこの時期における生活習慣や食生活が血糖値のコントロールに非常に重要であることを示しています。
高血糖が心臓に与える影響
この研究は医学誌『Diabetes Care(糖尿病ケア)』に掲載され、国際的な研究チームがイギリスの青少年1,595名を対象に、17歳と24歳の時点での状態を評価しました。彼らは空腹時血糖値を測定し、「前糖尿病(潜在性糖尿病)」の発症率を調査しました。これは、血糖値が正常より高いが糖尿病と診断される水準には達していない状態を指します。アメリカ糖尿病協会の基準では、前糖尿病の血糖値は100 mg/dL以上とされており、多くの国では110mg/dL 以上が基準となっています。
その結果、17歳の時点で空腹時血糖値が 100 mg/dL 以上の青少年は6.2%でしたが、24歳時点では26.9%に急増しました。また、110mg/dL以上だった人は17歳で1%でしたが、24歳では5.6%まで増加しました。いずれの基準値においても、17歳から24歳にかけての上昇率は5倍になっています。
さらに、研究者たちは心臓超音波検査(心エコー)により、左心室の肥大(サイズの変化)を測定しました。左心室は肺からの酸素を含んだ血液を受け取り、全身に送り出す重要な部位です。左心室の肥大は、心不全や不整脈のリスク因子となります。
左心室肥大の割合は、17歳で2.4%から24歳で7.1%に増加。また、心機能障害の割合も9.2%から15.8%へと増えました。高血糖は心筋の拡張機能の低下や心機能の変化、さらには心臓へ戻る血流の圧力増加とも関係しています。
17歳と24歳の両時点において、空腹時血糖値が 100 mg/dL 以上だった場合、左心室肥大のリスクが46%高まることもわかりました。また、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)が続くことで、心臓への早期ダメージやその進行リスクが10%高まるとされています。
注目すべきは、男女間での影響の差が大きいことです。高血糖による心臓への影響は、男性に比べ女性で5倍速く進行することが観察されました。このため、研究者たちは予防の観点から特に女子への注意を呼びかけています。
フィンランド東部大学の臨床疫学・小児健康学の准教授で医師のアンドリュー・アグバジェ氏は、プレスリリースの中で、「私たちの先行研究から、思春期後半は心臓と代謝系疾患の発症において重要な時期であることが示唆されていました」と語り、「今回の研究でさらに確認されたのは、見た目には健康で体重も正常な10代や若年成人でも、血糖値が高くインスリン抵抗性がある場合、心血管疾患への道を進んでいる可能性があるということです」と述べています。
心臓リスクにおける男女差
女の子の代謝システムは男の子とは異なると、アンドリュー・アグバジェ氏はエポックタイムズに語っています。血糖代謝には筋肉が大きく関わっていますが、男の子は一般的に女の子よりも筋肉量が多いため、有利な点があります。
さらに、インスリン抵抗と心臓の損傷との関係のうち、3分の2は体脂肪の質が過剰であることが原因です。女の子の体脂肪は男の子よりも多いため、これが影響しているとされています。
「生理学的に見ても、女の子は血糖コントロールがうまくいかない場合、心臓への悪影響が男の子よりも早く進行します」と彼は述べています。「成人に関する研究でも、糖尿病が女性の心臓に与える害は男性より深刻であることが示されています」
血糖値と心臓の肥大
「高血糖とは、糖が燃料やエネルギーとして必要な細胞に取り込まれずに血中にとどまっている状態を意味します。これは、インスリンが不足していることが原因である可能性があります」とアグバジェ氏は説明します。
血糖値が異常に高くなると、目・腎臓・神経・心臓などの重要な器官に悪影響を与えることがあります。
アンドリュー氏によると、高血糖は浸透圧の作用で血管内に余分な水分を引き込み、それが心臓に流れ込んで、心臓が過剰にポンプ機能を果たさねばならなくなるといいます。これが長期にわたって続くと、心腔や心筋の壁が拡大し、機能が低下します。早い段階で血糖値を正常に戻せなければ、心臓の肥大は続き、数十年にわたる慢性的な負担の末に、最終的には心不全に陥り、機能を停止するおそれもあります。
この研究は、心不全や心筋梗塞がまだほとんど診断されない若年層に焦点を当てて行われました。
「とはいえ、左心室の肥大は心臓の初期損傷のサインであり、臨床的にも心疾患や死亡の予測因子であることが証明されています。それは心筋梗塞、心不全、脳卒中、腎不全や肝不全、さらには早死に繋がる可能性さえあるのです」とアンドリュー氏は述べました。
生活習慣見直しで「糖尿病予備軍」は予防できる
アメリカ内科認定医のライーダ・ギワラ医師は、エポックタイムズの取材に対し、青少年が糖尿病予備軍や糖尿病になるリスクは生活習慣と大きく関係しており、これらのリスクは可逆的であると述べています。
ギワラ医師は、血糖値の定期的なチェックを呼びかけており、早期に糖尿病予備軍を発見することが大切だとしています。
「青少年が完全な糖尿病になる前に、生活習慣を改善することで予防が可能です」と彼女は言います。
運動を増やし、スクリーンタイムを減らす
ギワラ医師によると、定期的な運動は糖尿病予備軍のリスクを下げるうえで重要な役割を果たします。
「青少年は週に少なくとも5日、1日あたり30分以上の中程度の強度(心拍数100以上)の運動を行うべきです」と彼女は述べています。「そのためには、スクリーンタイムを制限し、8~10時間の睡眠を確保し、屋外での活動を積極的に促すことが効果的です」
スクリーンタイムとは、テレビを見たり、座って行うビデオゲームをしたり、パソコンやスマートフォンを使用する時間を指します。こうした活動は青少年の間で非常に人気がありますが、長時間の座りっぱなしと関連しており、制限する必要があります。『American Journal of Preventive Medicine(アメリカ予防医学雑誌)』に掲載された系統的レビューによると、スクリーンタイムを減らすことで運動量が増え、食生活や体重管理にも良い影響を与えることが確認されています。
また、スクリーンタイムを減らすことで、ジャンクフードの広告を見る機会やスナック菓子の摂取も減るという点も指摘されています。
健康的な食事習慣
「植物性の栄養を青少年の日常の食事に取り入れることで、慢性疾患の発症リスクを下げ、長期的な健康に良い影響をもたらすことができます」と、ギワラ医師は語っています。
食事をすると血糖値が上がり、それを元に戻すために体はインスリンを分泌します。
血糖上昇指数(GI)は食べ物が血糖値に与える影響を数値で示したもので、0から100の範囲があると説明します。白パン、白いパスタ、甘いお菓子などはGI値が高く、また包装された加工食品も塩分や糖分が多いため、血糖値を上昇させやすいといいます。こうした高GI食品を制限することで、血糖コントロールに役立つとしています。
ギワラ医師は、食物繊維が豊富な全粒穀物や豆類はGI値が低く、健康的な選択であると補足します。
「こういった自然な食品は、満腹感を持続させ、青少年がより長くお腹を満たされた状態でいられるだけでなく、食事量のコントロールや健康的な体重維持にも役立ちます」と述べ、「とくに体幹部分の肥満は、糖尿病予備軍のリスク要因なので、カロリーの種類と量に気をつける必要があります」と警鐘を鳴らしています。
彼女が推奨するのは、「高血圧を防ぐ食事法(DASH)」に近い内容で、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、乳製品、鶏肉、魚などを含むバランスの取れた食事です。医学誌『Diabetes Spectrum』に掲載された研究では、DASH食はインスリン抵抗性を改善し、肥満を減らし、糖尿病予備軍の人々に有益であると報告されています。また、2型糖尿病のリスクも20%低下するとの関連も示されています。
DASH食は植物性食品が中心ですが、鶏肉や魚も含まれており、ギワラ医師の推奨する植物中心の食事とよく似ています。彼女はこの食事法を非常に健康的だと考えており、積極的に勧めています。
「魚や鶏肉を取り入れることで、より柔軟性と多様性が生まれ、長く続けやすい食習慣が身につくなら、私は大いに支持します」とギワラ医師は言い、又、「小さな変化をコツコツと積み重ねることが、大きな成果を生むのです」と述べました。
(翻訳編集 華山律)
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