ショウガは台所の常備薬「胃を温め、体内の湿気を除去します」

ショウガ(生姜)は、台所でよく見かける香辛料であるだけでなく、漢方医師がよく使う「薬」でもあります。

漢方医学では、生姜の栽培時間の長短によって若生姜、中生姜、老生姜に分けています。この3種の生姜は、食事療法において、それぞれ異なる作用を発揮します。

ところで若生姜、中生姜、老生姜は、どこが違うのでしょうか。
まずは、その3種の生姜の違いを、以下の写真でご覧下さい。

 

1  若生姜(栽培時間4~5カ月)

栽培時間が最も短い「若生姜」。表皮は淡黄色で、赤い茎部がつきます。肉質は柔らかく、水分が多いため、辛味はつよくありません。(Shutterstock)

 

2  中生姜(栽培時間6~8カ月)

最も流通量が多い「中生姜」。光沢のある土黄色で、塊茎はよく太っています。(Shutterstock)

 

3、老生姜(栽培時間10カ月以上)
 

栽培時間が最も長い「老生姜」。表皮は厚く、しわがあり、最も辛味がつよくなっています。(Shutterstock)

 

料理に使われる生姜は、その香りを生かすことにより、肉や魚介の臭みをよく消します。

一方、漢方医学で使われる生姜には、「発汗解表(発汗させて病邪を排除する)」「温中止吐(胃腸を温めて嘔吐や下痢を止める)」「温肺止咳(肺を温めて咳を止める)」などの薬効があります。

現代の薬理学から見ても、生姜には抗炎症、抗菌、抗ウイルスの作用があるとされています。そうした意味で生姜は、家庭の台所にある「常備薬」とも言えるでしょう。

さて、その生姜ですが、先述したように漢方医学では3種類を使い分けます。

台湾の漢方医師・余雅雯氏は、「若生姜の効果は体内の湿気を取ることです」と言います。

春から夏にかけては、気候も暑くて雨が降りやすいため、体内に湿気がたまって病気になりやすいのです。このような時は、病気の予防になる若生姜を食べてください。

若生姜は日持ちしないので「酢漬け生姜」にするといいでしょう。この季節は、いつ食べてもいいですよ。

中生姜は、胃腸を温める効果があります。
冷性の野菜を調理する際に、中生姜を加えて寒温のバランスを取ります。例えば、冬瓜の性質は冷性なので、生姜の細切りを入れて「冬瓜生姜スープ」にすると良い、ということです。

インフルエンザではない、一般的な風邪の場合を想像してください。
症状は、少し寒気がして、白い痰や水のような鼻水が出ます。喉は痛くなく、とりあえず熱もありません。そのような時、中生姜と茶葉を煮た「生姜茶」を飲むと、体の不快感を緩和することができます。

余雅雯氏によると、「老生姜は温陽の効果が最も高く、全身の陽気を増やすことができます」とのこと。
寒い秋冬の食事療法では、主として中生姜を用いますが、さらに寒さの厳しい真冬には、老生姜で陽気を補います。

また、体質が虚寒の女性は、生理時に生理痛になりやすいので、老生姜を入れたお茶を飲むと緩和できます。老生姜は体内の陽気を増やし、血気を活発にするのです。

ただし、以下の2つの場合は、現在の症状が治まるまで生姜を服用することは控えてください。

一つは、体内が炎症を起こしている場合です。
症状としては、熱がある、喉が炎症を起こしている、体に痛みがある、口内が炎症を起こしている、体のどこかに出血がある(例えば痔の血、胃の血、鼻血、歯ぐきの血)などが相当します。

このような特殊な場合に、良かれと思って生姜を服用すると、毛細血管が拡張して、かえって炎症や出血が悪化することがあります。

もう一つは、月経時の女性で、出血量が多い場合です。この時に、例えば生姜茶を飲むと、経血量が増える心配があります。

体が炎症を起こしている時や、生理時の出血量が多い女性は、その間、生姜の服用は避けてください。(Shutterstock)

生姜茶は普通、3~5枚の生姜スライスを入れれば十分です。
ただし、歯ぐきが赤く腫れたり、舌が乾燥するなどの「のぼせ症状」が見られる場合は、生姜を食べすぎている可能性があります。

生姜は健康に有益な食材ですが、食べ過ぎや常食には適さないということも併せてご理解ください。

(翻訳編集・鳥飼聡)

蘇冠米