米国ニューヨーク市の85 10th AveにあるGoogleのオフィス「Google Building 8510」の外壁には、Googleのロゴが飾られている=2019年6月3日(Drew Angerer/Getty Images)

中国の対外プロパガンダがGoogleやYouTubeの上位検索結果に表示=報告書

人権問題や新型コロナウイルスの起源に関する中国国営メディアのプロパガンダ(政治宣伝)は、GoogleYouTube、Bingの上位検索結果に頻繁に表示されている。米有力シンクタンク、ブルッキングス研究所と民主主義同盟(ASD)が5月27日発表した共同研究報告書で明らかにした。

研究者は、Google検索、Googleニュース、Bing検索、Bingニュース、YouTubeから情報を追跡・収集し、「Xin Jiang(新疆)」と「COVID-19」に関連する12の用語の検索結果について120日間にわたり日次データを集計した。

その結果、調査期間中(2021年11月~22年2月)の合計120日間の検索結果のうち、106日(約88%)にわたって「新疆」に関する中国共産党系メディアのコンテンツがトップ10に表示されたことが判明した。

YouTubeでは、「新疆」に関する中国国営メディアの動画が、検索された120日間のうち118日、つまり98%の確率でトップ10に表示されている。

中国政府の対米陰謀プロパガンダも、検索エンジンの上位に頻繁に登場する。YouTubeの検索に「Fort Detrick(フォート・デトリック)」と入力すると、最初のページの約半分は中国国営メディアのプロパガンダである。

中国国営メディアは、新型コロナウイルスが米首都ワシントン郊外にあるフォート・デトリック(米陸軍感染症医学研究所)で作られ、流出したと主張しているためだ。

中国共産党系メディアが発信する宣伝記事は、欧米メディアの報道や学術報告で指摘された新疆の人権問題を否定し、西側政府による「中国を貶めようとする試み」としている。

報告書の主執筆者の一人であるブルッキングス研究員のジェシカ・ブラント(Jessica Brandt)氏は米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の取材に対し、「率直に言って、本当に驚いた」と述べた。「人々はこの情報(中国共産党の新疆における人権侵害)に触れずに『新疆』をググると、この中国共産党のプロパガンダを目にするかもしれない。これらのコンテンツは中国共産党の人権侵害を美化するものである」と指摘した。

中国政府による巨額投資が要因

5月27日付のWSJによると、中国政府が欧米系検索エンジンの1ページ目の検索結果に影響を与えることができるのは、中国政府が自らの政治的立場を世界中に浸透させるために、ウェブサイト、通信社、放送チャンネルの国際ネットワークの構築に多額の投資を行っていることが大きな要因である。

同時に、中国政府は、中国で禁止されているプラットフォームへの影響力を強め続けている。例えば、インフルエンサーを使って共同プロモーションを行ったり、中国政府と連携したTwitterアカウントを数百個作り、プロパガンダを流布したりしている。

欧米の検索エンジンサービスでは、ソースの権威性や鮮度などの要素を考慮したアルゴリズムで、コンテンツの表示順をアレンジし、更新している。

研究者によると、共産主義国家メディアの高い更新回数は、ニュースエンジンやYouTube検索では有利で、関連する動画やニュースをアップロードすることが多く、検索エンジンは最新のコンテンツに注目する傾向があるという。

もう一人の主執筆者であるブレット・シェイファー(Bret Schafer)氏は、「欧米のメディアやシンクタンクは毎日のように、新疆に関するコンテンツを制作しているわけではない。しかし、中国の国営メディアはそうしている」と述べている。

中国政府のプロパガンダは、国営メディアだけにとどまらない。この調査では、19の情報サイトが、中国政府とのあからさまな繋がりはないものの、中国のプロパガンダメッセージを定期的にそのまま転載していることが分かった。これにより、中国政府からの情報が検索結果の上位に表示される確率が10%近く上昇した。

メディアの懐疑的な声に対し、YouTubeの親会社であるGoogleの広報担当者は、この問題を発見し、解決に取り組んでいると回答している。Bingの親会社である米マイクロソフト社の広報担当者は、「マイクロソフトは常に改善を求めており、今回の報告書の調査結果を評価している」と述べている。

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