古典の味わい

【古典の味わい】貞観政要 17

(前文に続く、魏徴から太宗への上奏文)

「わが聖哲なる唐の高祖・太宗は、隋滅亡の混乱のなかに旗を揚げて、苦しみあえぐ人民を救い、荒廃した天下を再建されました。新たに天子の座につかれた陛下は今、(新宮殿を建て替えることをせず)隋の宮殿に住まわれています」

「かつて楚の項羽が阿房宮を焼き払ったような浪費をなさらず、質素なふるまいに徹しておれば、神のごとき天子の徳は自然に人民にしみわたり、無為にして天下は治まるでしょう。これが最上なる天子の徳でございます」

「また、宮殿のなかに、新たに建物をつくるにしても、豪奢を排し(尭帝の故事に則して)質素なかやぶき屋根や土の階段を織り交ぜてください。民力を浪費せず、民が喜んで工事に参加できるようにすれば、人民は自発的にやってくるようになります。そうすることで、万民は天子のおかげで寿命を全うすることができます。これが天子の徳としては、次善のものでございます」

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