年齢を重ねるとともに、記憶力の低下を感じ、物忘れがひどくなるというのは、多くの人が同じ意見をお持ちでしょう。 しかし、最近、日本の老年精神医学者が、高齢者の記憶力は若い人とあまり変わらない、高齢者が忘れやすいのは、実は伝統的な観念による潜在意識と関連する錯覚である、と指摘しました。
日本のビジネス誌「PRESIDENT Online」によると、老年精神医学の専門家で日本神経学会医師の和田秀時氏は、正常な状態では、高齢者の記憶力は若者と大きな差は実際にはないのに、「高齢者は記憶力が悪い」という偏見が脳に植え付けられると、高齢者は記憶する意欲や気持ちを失い、考えることや思い出すことをあきらめてしまい、これが、記憶力の低下という自己実現的なジレンマにつながっている、と指摘しています。
脳科学と認知科学を専門とする「Memory & Cognition」誌の編集長であるアヤナ・トーマス博士も、高齢者の記憶力は思っているほど悪くないことを証明する実験を行ったそうです。
18歳から22歳の若者64名、60歳から74歳の高齢者64名に英単語を暗唱してもらうよう伝えました。 トーマスが実験前に「これは単なる心理テストです」と被験者に伝えると、若い被験者と年配の被験者が同じように多くの問題を正解したことが分かりました。
しかし、被験者に「この記憶力テストでは、高齢者は成績が悪くなる」と事前に伝えておくと、実際に高齢者の正答数が大幅に減少しました。このことから、高齢者の「物忘れ」は、実は「高齢者は成績が悪い」という偏見によるものであることが分かります。
和田秀時氏によると、80代の高齢者は60代の高齢者に比べて、認知症になる確率が12倍も高いのですが、60歳から70歳の間にしっかりと脳を使えば、脳の寿命が延び、脳の機能を強化することができるのだそうです。
さらに、人間は筋肉のある部分を使わないと「廃用症候群」になりますが、脳も同様だと説明しました。 生きていて頭を使わなければ、記憶力はどんどん悪くなっていきます。
また、ロンドン大学の認知神経科学者であるエレノア・A・マグワイア氏は、実は大人になってから、脳の神経細胞の数が再び増え、記憶する訓練を続けることで、神経細胞をつなぐシナプスの数を増やし、それを刺激できることを報告しています。 したがって、実は記憶力は年齢とともに、必ずしも低下するわけではありません。
(翻訳編集:井田千景)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。