梅の香りに誘われてやってきたメジロ(大紀元)

【花ごよみ】ウメ

「雪梅(せつばい)」と題する漢詩がある。南宋の詩人、方岳(ほうがく)の作である。 

有梅無雪不精神、有雪無詩俗了人、薄暮詩成天又雪、與梅併作十分春。

訓読は「梅有りて雪無くば、精神ならず。雪有りて詩無くば、人を俗了(ぞくりょう)す。薄暮、詩成りて天また雪。梅と併せなす、十分の春」となる。

 「梅があっても雪がなければ、生き生きとした風景にならない。雪があっても詩ごころが起きなければ、人(作者自身)を興ざめさせてしまう」

「夕暮れ時、詩がひとつ出来上がったら、おや、また雪が降ってきたよ。梅と併せて、これで十分な春の興趣となったなあ」

雪のなかに咲いた梅花は、ことのほか清らかで凛々しく、美しい。

総じて春の花というものは、ミツバチなどの昆虫が飛ぶようになってから受粉のために咲くはずなのだが、梅は不思議なもので、まだ厳冬にちかい雪中でも咲くのである。

梅が中華民国の国花であることは、よく知られている。では、大陸中国の花はというと、牡丹(ボタン)とも言われるが、実は明確には規定されていないらしい。

 台湾の人々が愛して止まない「梅」のイメージは、まさに雪中梅のように、厳しい寒さに耐えて咲く花の力強さにあると言う。

 日本人も梅は大好きだが、日本人のイメージする梅の風景はというと「梅にウグイス」のように、もう暖かくなった春の印象がつよいのではないか。

 同じ花でも、ちょっとした印象上の違いを見つけると、なかなか興味深い。

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