2022年10月、フィリピンで行われた米比合同演習で、M142高機動砲システム(ハイマース)の横に立つ兵士。(JAM STA ROSA/AFP via Getty Images)

高機動砲ロケットシステム「ハイマース」、オーストラリアの攻撃能力を強化

オーストラリアは、遠方の標的を攻撃できる米国製の移動式ロケットランチャーの購入を計画しており、インド太平洋地域で対立が激化する中、軍事力を大幅に強化する予定だ。

2023年1月初旬に発表されたこの契約は、中国共産党の軍事力増強に対応するため、オーストラリアと米国が防衛関係を緊密化させていることを示している。

オーストラリア政府は、ウクライナ軍がロシア軍の侵攻に対して使用し、成果を挙げた高機動砲ロケットシステム(HIMARS)を、2026年までに配備する予定であることを発表した。 

「現在の戦略的環境では、オーストラリア国防軍が高性能で標的を絞った軍事能力を備えていることが重要だ」と、リチャード・マールズ国防相(副首相)は述べている。

HIMARS システムの射程は最大300kmで、技術の進歩に伴い500km程度まで伸びる可能性がある。 レーダーは、陸・空・海から飛来する脅威を検知することができる。

頑丈なトラックに搭載された HIMARS ランチャーは機動性に優れ、その長い射程により前線のはるか後方での操作が可能だ。 製造元のロッキード・マーチン社によると、こうした「シュート&スクート」システムは全世界で450台以上あるという。

パット・コンロイ(Pat Conroy)国防産業相が国営放送ABCに語ったところによると、オーストラリア陸軍の現在のロケットランチャーの射程距離はわずか30キロメートルだという。 コンロイ国防産業相は、ウクライナで高機動砲ロケットシステムが成果を挙げたことで、世界的な需要が急増し、オーストラリアの購入を加速させたと述べた。

同相はさらに、 HIMARS は「陸上攻撃能力の大幅な増加」につながるとし、 「ウクライナの紛争はその有用性を示している」と述べた。

オーストラリアは、購入に同意したランチャーの数については明言していないが、 米国国務省はオーストラリアに HIMARS 20基を推定約507億円(3億8500万米ドル)で売却することを2022年5月に承認している。

また、オーストラリアは、ノルウェーの防衛関連企業コングスベルグ(Kongsberg)社が老朽化した海軍ミサイルシステムを更新すると発表し、その取得費用は合わせて約893億円(6億7800万米ドル)に上るという。

中国共産党の軍備増強、南シナ海の領有権主張の拡大、台湾の防空識別圏への侵入は、この地域の緊張を高めている。

さらに、太平洋島嶼国への影響力を強めようとする中国政府の動きは、オーストラリアや志を同じくする国々にとって懸念材料となっている。

オーストラリアと米国は、過去10年間、オーストラリア北部への米国海兵隊の派遣、空軍の合同演習、軍事インフラへの投資などの取り組みにより、防衛同盟を着実に拡大してきた。

関連記事
アメリカ軍は、中国共産党が2027年までに台湾への攻撃能力を確立しようとしているとの見解を持ち、それに対抗するために台湾周辺での軍事配置を強化している。
米比同盟は新たな局面を迎えている。4月22日に開始された「バリカタン」軍事演習は、アメリカとフィリピンの関係が過去最高の状態にあることを示すものだ。中国共産党による南シナ海での挑発的な行動に直面し、フィリピンはアメリカとの協力を強化し、国防力を高めるチャンスを得ている。
アメリカ合衆国インド太平洋軍のジョン・アクイリーノ司令官は、中国共産党が「茹でガエル」戦術を用いてインド太平洋地域での緊張を徐々に高めていると指摘している。
8日、エマニュエル駐日米国大使と山上前駐オーストラリア日本大使が、日米同盟の重要性を力説した。エマニュエル大使は、「新型コロナウイルス感染症」「ロシアのウクライナ侵攻」「中国の威圧的行動」という「3つのC」が世界を変えたと指摘。日米両国がこの2年間で70年来の政策を大きく転換したことに言及し、「日米同盟は新時代を迎えている」と強調した。
ロシアのウクライナ侵攻が続く中、中国とロシアの関係は益々緊密化している。中国共産党がイランや北朝鮮のようにロシアに直接致死性兵器を提供しているという明白は証拠は今のところないものの、欧米は中国共産党による戦時経済支援に対する懸念を強めている。