ラーム・エマニュエル駐日米国大使と山上信吾前駐オーストラリア日本大使は8日、日米同盟の重要性を力説した。エマニュエル大使は、「新型コロナウイルス感染症」「ロシアのウクライナ侵攻」「中国(共産党)の威圧的行動」という「3つのC」が世界を変えたと指摘。日米両国がこの2年間で70年来の政策を大きく転換したことに言及し、「日米同盟は新時代を迎えている」と強調した。
この対談は、米ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)主催で行われた。
エマニュエル氏は、「3つのC」による日本側の変化について、防衛費をGDP比1%から2%へと大幅に増加、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有の決定、防衛装備品の輸出制限を緩和、韓国との関係改善と安定化、ロシアに対する強力な制裁の実施などをあげた。
米国側の変化については、インド太平洋地域における米国の同盟戦略を「ハブ・アンド・スポーク(中心拠点、ハブに貨物を集約させ、拠点、スポーク毎に仕分けて運搬する輸送方式のこと)」型から「ラティス(格子)」型へと転換、日本とオーストラリア、フィリピンなどとの多国間連携の強化といった変化があった。
これらは、日米同盟が単なる地域的な枠組みから、課題に対応する真のグローバルパートナーシップへの進化だと指摘。特に、日本の防衛政策の大転換は、日米同盟の構造自体を変える起爆剤になったとエマニュエル大使は強調した。
山上氏は、日本が地域的なパートナーから真のグローバルパートナーへと進化したと述べ、ウクライナ支援や中東和平への貢献を例示。「日本は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守るため、米国と連携している」と語った。
中国共産党への対応では、建設的な関係構築を目指す一方で、経済安全保障の確保が重要との認識で一致。エマニュエル氏は、中国の補助金による過剰生産や経済的威圧を問題視。「中国は国内経済の問題を世界に輸出している」と批判し、各国が自国産業を守る措置を取っていると指摘した。
山上氏は、就任中の2021年に発生した中国による日本産水産物の輸入規制に言及。日本の生産品が「中国の不当な経済的威圧の犠牲となった」と述べ、毅然とした対応の重要性を訴えた。
防衛面について、山上氏は日本の国家安全保障戦略で打ち出された「反撃能力の保有」と「統合運用司令部の創設」に触れ、日米の指揮統制の連携強化に意欲的な姿勢を示した。
米上下両院合同議会での岸田文雄首相演説は、ウクライナ支援の重要な局面であり「歴史的な機会」「米国の信頼性が問われている」と指摘し、日本との連携の重要性を訴えた。
「日米豪」「日米比」など多国間連携の強化も両氏は強調。エマニュエル氏は、「中国の孤立化戦略に対し、価値観を共有する国々との連携を深化させることが不可欠」と力説した。
日米同盟が新たな次元に入る中、エマニュエル氏は「信頼に基づく関係構築」が何より重要だ。日米の絆を一層強固にし、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて官民を挙げて取り組む必要があると両氏は強調した。
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