諸葛孔明――預言者か(中)【千古英雄伝】

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(続き)

諸葛孔明は若い時に友人と遊学(よその土地や国に行って学ぶこと)をしていました。当時、天文学に造詣がある殷馗(いんき)という人がいましたが、彼は星の群れから、異常に明るい星をみて、占星象(天文学)からその星が大賢者であると占い、そして、見にきたところ、孔明とその友人たちを見かけました。殷馗は「星群の兆しは皆さんのことでしたか」と感嘆し、占星象を皆に教えました。

1カ月後、孔明と友人五人は司馬徽(しばき)という人物を訪ねることになりました。司馬徽は人相をよくみると言われていますが、孔明をみた途端、「臥龍」(がりゅう)と呼んだのです。司馬徽は孔明の才能に感激し、ひそかに、「あなたの才能では師に学ぶべきだ」と言って、鄷公玖(ほう こうきゅう)の弟子になることを薦めました。

孔明が公玖に弟子入りしてから一年経っても、公玖は忘れたように、孔明に何も教えませんでした。それでも孔明は焦らず、怒らず、さらに懸命に師を手伝いました。実を言うと、公玖は孔明の人格を観察していたのです。

やがて公玖は『三才秘籙』、『兵法陣図』、『孤虚旺相』を出して、孔明に渡します。孔明はそれを百日間研究した後、返しました。公玖は驚き、短時間で孔明が理解できたことを不思議に思い、テストをしてみました。すると、孔明が完全に理解できていたことに、公玖はさらに驚きました。そこで公玖は孔明に「五つの龍」の説を教えたのです。

「秦漢の時代、五龍が現れた。嬴秦(始皇帝)が白龍、呂秦(呂不韋)が黒龍、項王(項羽)が青龍、漢高祖(劉邦)が赤龍、孝文帝が黄龍である。光武帝が『赤伏符』により即位したので、故に両漢は黄赤である。現在、漢が終焉に向かおうとして、火土が死に瀕している。炎のあまりがあってまだ滅亡はしないが、回復するため西に向かい、稟金なりて王となる。子獅子孫堅(そんけん)は土の徳にのって、江左で業をなす。火と土の仇は水になり、曹氏が北方を安定し、木が水に続いて生れ、その子が青龍の兆候を見せている。火が木を襲撃して王となる。その後、二火の讖をなす」

孔明が「今の世は乱世だから、志を養い、道を楽しむほうがいいですね」と話すと、公玖は「あなたのように才能のあるものが民を救わなければ、どうして仁の心があると言えようか。劉備は漢の皇室の出身なので、あなたが補佐すれば、王業が成り立つ」と説明しました。

孔明が続いて、関羽、張飛たちのことを聞くと、公玖は「関羽は解梁の老龍,張飛は涿州の玄豹、趙雲は常山の大蛇、縻竺(びじく)は東海の寿鹿、龐統(ほうとう)は襄陽の鳳雛、黄忠は長沙の虎母、馬超は西涼の駒子、姜維は天水小龍、皆優れた補佐官だ」と言いました。

そして、しばらく考えた後、「南郡に武当山がある。山には二十七峰があり、天柱、紫霄二峰の一番高い峰の間に一人の北極教主が住んでいる。琅書金簡玉冊靈符を持っているが、すべてが六甲秘文、五行道法である。あなたは兵陣だけを学んだから、神通術類を知らない。将来左道に難儀するので、私が武当山に連れて行こう」といい、2人は武当山に向かいました。やがて、孔明は北極教主に弟子入りして太極、陰陽、八卦、五行、奇門、遁甲(とんこう)を学んだのです。

(つづく)