2月1日、パキスタンは過去最悪の通貨安に見舞われ、緊急の財政引き締めが実施されるなど経済の混乱が深まり、国際通貨基金(IMF)から大規模な支援を受けられなければデフォルト(債務不履行)を起こしかねない危険が迫っている。写真はカラチの両替ブローカー。1月撮影(2023年 ロイター/Akhtar Soomro)

アングル:パキスタン、債務不履行の危機迫る IMF支援が鍵

[イスラマバード/ロンドン 1日 ロイター] – パキスタンは過去最悪の通貨安に見舞われ、緊急の財政引き締めが実施されるなど経済の混乱が深まり、国際通貨基金(IMF)から大規模な支援を受けられなければデフォルト(債務不履行)を起こしかねない危険が迫っている。

パキスタンは昨年の壊滅的な洪水で瀬戸際に立たされた。外貨準備はわずか37億ドル(約4800億円)と必需品の3週間分の輸入を賄う分しかない。11月までには激戦の総選挙が予定されている。

6月に期限を迎えるIMFの支援プログラムは現在停止状態。延び延びになっている11億ドル分が実行されなければパキスタンは立ち行かない状態で、仮に実行されればプログラムは残り14億ドルになる。

IMFは洪水後に支援を70億ドルに上積みしたが、昨年11月に実行を停止。IMFの緊急代表団が現在パキスタン入りしているが、問題は増える一方で実行の保証はない。

先週はパキスタンルピーが15%下落し、燃料価格が上昇。税制措置が間近に迫っていることもあり、IMFとの交渉に向けて重大な障害がある程度解消する可能性はある。

しかし支援プログラムを6月以降に延長することは不可能な上、総選挙も迫り、プレッシャーは高まっている。

不良債権専門ファンド、グラマシーのソブリンリサーチ共同責任者、キャサリン・エグザム氏は「(IMFの)資金を得られなければ債務不履行のリスクが著しく高まる」とし、大規模な債務償却ではなく「リプロファイリング(繰り延べ)」が行われると予想した。

昨年IMFから支援プログラムの拡大を取り付けることに成功したパキスタンのイスマイル前財務相も「IMFの支援がなければ債務不履行に陥る」と述べ、IMF支援が唯一の現実的な選択肢だとした。イスマイル氏はその後、立て続けに次のIMF支援策が必要になるとみている。

選挙でシャリフ首相の対抗馬となるのが、昨年春に首相の座を追われ、今も高い人気を維持する元クリケットのスター選手、イムラン・カーン氏だ。両者は今の危機的状況について互いに相手を非難しているが、パキスタンの財政はずっと以前から窮状にある。

債務の対国内総生産(GDP)比は70%と危険な水準。今年は歳入の40─50%が利払いに充てられ、パキスタンより状況が悪いのは債務不履行に陥ったスリランカ、ガーナ、ナイジェリアだけだ。

国債の大半は額面の半分以下の価格で取引され、「債務再編は、その有無ではなく時期の方が問題だ」(エイゴン・アセット・マネジメントの新興市場債務部門責任者のジェフ・グリルズ氏)との声も聞かれる。

<困難な情勢>

カナダ銀行とイングランド銀行(英中銀)のソブリン・デフォルト・データベースによると、パキスタンがこうした債務再編を実施すれば同国にとって1999年以降で初の国際的な債務不履行となる。

パキスタンの中国に対する債務は300億ドルに上るのに対し、債務不履行となる国債は86億ドル相当にとどまる。イスマイル氏はパキスタン政府の対応について、「多額の融資を受けている国や機関に出向き、より長期の融資獲得を交渉する」方が良策かもしれないと述べた。

シャリフ首相はIMFの融資再開に楽観的だ。先週のイベントで「IMFとの合意は神の思し召しで行われるだろう」と強調。「われわれは間もなく困難な時期を脱することができる」と述べた。

しかし国内のアナリストでさえ、政府は厳しい立場に置かれているとみている。IMFは支援の実施に際して厳しい財政引き締めを要求する可能性が高いが、すでに数十年ぶりの高インフレと雇用不足に苦しめられている有権者から反発を受けるのは必至だ。

IMFは貧しい国々の支援に前向きで、一方のパキスタンは欧米の重要なパートナーになると約束している。しかし支援プログラムの終了時期が近づけば支援実行は難しさを増すし、新政権が誕生して合意破棄を目論む恐れもある。

6月までに支援が実行されなければ、新政府が発足するまで6カ月間の空白が生じる可能性がある。その場合、パキスタンは資金不足に陥り、国民は危機に瀕する。外貨準備が乏しいため、生き延びるのは大変だ。

パキスタンが外国で発行した債券は、今年の利払いが計5億ドルに過ぎないが、中央銀行総裁は対外債務の返済全体を賄うには30億ドルが必要との認識を示した。

政治的なタイミングも重要だ。8月に現政権の任期が切れると、自由で公正な選挙を確保するために最長で90日間、特別暫定政府が指揮を執る。しかし暫定政権にはIMFとの協定に署名する権限がない。デフォルトを回避するために政府と野党が協力し、IMFの要求を敢行できるかどうかが課題だ。

エグザム氏は「融資実施を巡って何かが起こり、そこに選挙が加わってくれば問題が持ち上がるかもしれない」と不安を口にした。

(Marc Jones記者、Gibran Naiyyar Peshimam記者)

関連記事
米司法省は最近、IR事業をめぐり日本の政府関係者に賄賂を渡すよう指示して、中国企業のCEOを海外腐敗行為防止法違反の容疑で起訴した。
豪州初の女性宇宙飛行士ベネル=ペッグ氏は、シドニーの会議で「宇宙には地球上の砂浜の砂粒に例えるほどの恒星があり、生命の存在は確実だ」と語り、太陽系内外での地球外生命探査の可能性に期待を寄せた。「宇宙での発見は生命の理解を深める貴重な手がかりになる」と強調。
11月18日、アメリカとフィリピンは軍事情報共有協定を締結し、両国の防衛関係を強化して中国共産党の脅威に共同で […]
サッカー日本代表は19日、FIFAワールドカップ2026アジア最終予選で中国と対戦。3-1で勝利したが、「アウ […]
中国サッカーが衰退する一因は、賭博を支配する官僚と警察の影響。胡力任氏によると、賭けが普及し、体制下での腐敗が進行中。