「ペンは剣よりも強し」との格言が示すように、時に世論が戦争の帰趨を決定する(大紀元)

【寄稿】プロパガンダとは何か【現代情報戦争の概略】

3 プロパガンダとは何か?

情報には発信と受信の二つの作用がある。通信傍受と暗号解読は受信に基づいた戦術である。一方、発信を利用した戦術があることは容易に理解されよう。その戦術の名前はプロパガンダである。

プロパガンダは、宣伝戦のことで、この戦術も第一次世界大戦において近代的発展を遂げた。そこで活用されたのが映画である。テレビがまだ発明されていない時代において、映画は唯一の動画であり、その影響力は圧倒的であった。

第一次世界大戦においてドイツは極めて強力であり、当時の大英帝国が総力を挙げても打ち負かせなかった。そこで米国を参戦させるべく作成されたのがプロパガンダ映画である。そこでは俳優が残虐なドイツ兵を演じており、婦女子を虐待する場面が次々に描かれている。

米国はもともと、欧州の戦争には介入しない方針を堅持してきたが、婦女子が虐待されているのを見過ごすのは男じゃないとの義侠心に米世論は動かされ、最終的に米国は対独参戦を果たした。そしてこれがドイツを降伏させる決定的な要因となったのである。まさに英国の宣伝戦は大成功であった。

第一次大戦後、ラジオ放送が普及すると、このニューメディアに着目したのがナチス・ドイツのヒトラーであった。ナチス政権下で宣伝相を務めたのがゲッペルスである。ゲッペルス宣伝相はラジオ放送を通じて有名無実のニセ情報を連日、流し続けたのである。

当時は録音技術が不十分であるから、ラジオ情報は垂れ流しで、その事実確認ができぬままに次のニセ情報が上書きされるので、誰もがこれを信じてしまったのである。

特に同じドイツ語圏であった隣国のオーストリアは完全に、これに振り回されてしまい、ドイツ軍が侵攻しても、まったく無抵抗で、民衆は歓呼の声でドイツ軍を迎えたのである。

米国は、第二次世界大戦では宣伝戦を重視していたが、ベトナム戦争では報道の自由を尊重して宣伝戦を軽視した。その結果、内外に反戦運動や反米闘争が激化し結局、ベトナムから敗退するに至った。

この教訓を生かし湾岸戦争では徹底した宣伝戦を展開し、内外の世論を味方につけ多国籍軍を結成、かつての米国の盟友であったイラクのサダム・フセインを侵略者として糾弾し、勝利を勝ち取った。

(つづく)

関連記事
歴史的な経験から、米国が共和党政権になったとき、韓国が左翼政権になれば、在韓米軍撤退が進展することになる。2024年米大統領選の結果によっては、日本を取り巻く国際環境が大きく変化するのだ。
私は経済記者として1990年代後半から日本経済、そしてさまざまな産業を見てきた。中でもエネルギー産業の持つ力の巨大さ、社会全体に影響を与える存在感の大きさが印象に残り、働く人の真面目さに好感を持った。特にその中の電力産業に関心を持った。
イスラエル・パレスチナ問題をめぐる分断は米国社会に大きな爪痕を残している。年末に米大統領選を控えるなか、中国共産党が背後で影響力を行使していることに警戒しなければならない事態となっている。
不思議な現象がある。メディアが作り出す世論を、SNSでは作ることができない。オールドメディアの影響力が強い沖縄では、中国共産党への警戒を呼びかける一般人の声がかき消され、人々は真実の情報を入手できない境地に陥っている。
5月上旬に中国・福建省の共産党トップが沖縄訪問する。自由主義対共産主義の「新冷戦」が進むなか、沖縄をめぐる熾烈な争いが、水面下で進んでいる。