岸田文雄首相は1月、来日した北大西洋条約機構(NATO)ストルテンベルグ事務局長と東京で会見を行った (Photo by Takashi Aoyama/Getty Images)

岸田首相のNATOサミット参加…中国は「警戒」表明 専門家「指図する権利ない」

7月にリトアニア首都ビリニュスで開催予定のNATOサミット(北大西洋条約機構首脳会合)に、岸田文雄首相が参加すると報じられている。これについて中国外交部は「東方進出」とたとえ、不満を露わにした。専門家は「中国に国益を追求する他国に指図する権利はない」と指摘した。

外交部の毛寧報道官は26日の定例記者会見で、NATOのアジア太平洋地域は地理的範囲を超えた「軍事ブロックの拡大」、「東方進出」だと批判した。また、日本の現代史に言及しアジア地域の国々に「警戒を強めるべきだ」と呼びかけた。

中国の反応について、日本だけ特別な警戒を示していると安全保障専門家は指摘する。

「中国は(同様にNATOサミットに招待された)韓国、オーストラリア、ニュージーランドの指導者に対しても同様の警告を発するのか。なぜ日本だけが特別なのか」と独シンクタンク、マーシャル基金のボニー・グレイザー氏はツイートした。「中国は(他国が)国益をどのように追求するかを指示する権利を持っているのか」と疑問を投げかけた。

今回のNATOサミットは構成国首脳ほかオーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国首脳パートナー国枠で招待されている。ストルテンベルク事務総長は15日、NATOが直面する課題はグローバルであり、サミットにはインド太平洋地域のパートナー国を招待したことを明らかにした。岸田氏が出席すれば昨年に続き二度目となる。

日本とNATOの距離縮まる

「際限のない協力」を掲げる中国とロシアの蜜月関係に相応して、日本とNATOの距離も縮まっている。

日経アジアレビュー26日付によれば、日本は今夏にもNATOとの間で二国間の安全保障協力を深化する新たな文書に署名する見通し。東京に設置する東アジア初のNATO連絡事務所の開設について話し合われる予定だ。

報道によると、従来、日本と欧州は海陸空の共同行動を実施するのは地理的に困難だったが、ウクライナ戦争により双方の関係は緊密化した。中国への懸念を共有するなか、欧州はさらに深くインド太平洋地域に関与している。現に、先日閉幕したG7広島サミットの共同声明でも、台湾海峡における力による現状変更や東シナ海・南シナ海の軍事拡大への懸念も記された。

日本はNATOのグローバルパートナーに位置付けられ、主に海上保安と人道支援などの領域に重点を置く。軍隊間の協力はほとんど含まれていない。しかし、今回協議される日・NATO「国別パートナーシッププログラム」は、AIや量子計算などの先進な軍事・民間技術について情報共有等を深める。対中露を念頭にした協力関係とされている。

防衛省はすでに昨年よりNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)主催のサイバー防衛訓練に参加している。

16日にはCCDCOEメンバーとして迎えられ、エストニア・タリン同本部には国旗が掲揚された。浜田靖一防衛相は「日本は必要な貢献を続け、NATOおよび志を同じくする国々とのサイバー領域での協力をさらに強化し、国際秩序を維持し続ける」と代理臨時大使を通じてコメントしている。

CCDCOEのメンバーに加入した日本やウクライナ、アイルランド、アイスランドの国旗がエストニア・タリンの同本部に掲げられる(CCDCOE)
関連記事
8940億ドルの2025会計年度国防予算を議会が今後数週間で審議する予定だ。ロバート・ピーターズ氏は、ロシアの戦術核兵器の優位性は「最も緊急の注意を要する」と述べた。
ロシアが最近行った戦術核兵器使用の威嚇を一見すると軽視されがちだが、「ウクライナ国外」の英軍施設への攻撃という状況は、あからさまな警戒とまではいかないまでも、注目を集めるものだ。
ウクライナ保安庁(SBU)は7日、ゼレンスキー大統領と複数の高官を対象としたロシアの暗殺計画に関与したとして、国家反逆などの容疑でウクライナ国家警備局の大佐2人を拘束したと発表した。
5月6日、米国ホワイトハウスは、ロシアによる法輪功学習者の逮捕に対して、再び声を上げ、中共とロシアの関係の強化に懸念を表明した。 中国での法輪功学習者に対する迫害は、生きたままの臓器収奪を含めてすでに有名だが、先週、ロシア警察が突然4名の法輪功学習者を逮捕し、その中の46歳のナタリア・ミネンコワさんが2ヶ月間の拘留を受けたことが判明した。
5月2日に開催された、米連邦議会上院軍事委員会の公聴会では、「世界の脅威」について議論され、ヘインズ総監は中共とロシアの秘密協力が政治、経済、軍事、技術の各分野に及び、特に台湾問題にも大きな影響を与えていると述べ。