岸田首相のNATOサミット参加…中国は「警戒」表明 専門家「指図する権利ない」

2023/05/29 更新: 2023/05/30

7月にリトアニア首都ビリニュスで開催予定のNATOサミット(北大西洋条約機構首脳会合)に、岸田文雄首相が参加すると報じられている。これについて中国外交部は「東方進出」とたとえ、不満を露わにした。専門家は「中国に国益を追求する他国に指図する権利はない」と指摘した。

外交部の毛寧報道官は26日の定例記者会見で、NATOのアジア太平洋地域は地理的範囲を超えた「軍事ブロックの拡大」、「東方進出」だと批判した。また、日本の現代史に言及しアジア地域の国々に「警戒を強めるべきだ」と呼びかけた。

中国の反応について、日本だけ特別な警戒を示していると安全保障専門家は指摘する。

「中国は(同様にNATOサミットに招待された)韓国、オーストラリア、ニュージーランドの指導者に対しても同様の警告を発するのか。なぜ日本だけが特別なのか」と独シンクタンク、マーシャル基金のボニー・グレイザー氏はツイートした。「中国は(他国が)国益をどのように追求するかを指示する権利を持っているのか」と疑問を投げかけた。

今回のNATOサミットは構成国首脳ほかオーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国首脳パートナー国枠で招待されている。ストルテンベルク事務総長は15日、NATOが直面する課題はグローバルであり、サミットにはインド太平洋地域のパートナー国を招待したことを明らかにした。岸田氏が出席すれば昨年に続き二度目となる。

日本とNATOの距離縮まる

「際限のない協力」を掲げる中国とロシアの蜜月関係に相応して、日本とNATOの距離も縮まっている。

日経アジアレビュー26日付によれば、日本は今夏にもNATOとの間で二国間の安全保障協力を深化する新たな文書に署名する見通し。東京に設置する東アジア初のNATO連絡事務所の開設について話し合われる予定だ。

報道によると、従来、日本と欧州は海陸空の共同行動を実施するのは地理的に困難だったが、ウクライナ戦争により双方の関係は緊密化した。中国への懸念を共有するなか、欧州はさらに深くインド太平洋地域に関与している。現に、先日閉幕したG7広島サミットの共同声明でも、台湾海峡における力による現状変更や東シナ海・南シナ海の軍事拡大への懸念も記された。

日本はNATOのグローバルパートナーに位置付けられ、主に海上保安と人道支援などの領域に重点を置く。軍隊間の協力はほとんど含まれていない。しかし、今回協議される日・NATO「国別パートナーシッププログラム」は、AIや量子計算などの先進な軍事・民間技術について情報共有等を深める。対中露を念頭にした協力関係とされている。

防衛省はすでに昨年よりNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)主催のサイバー防衛訓練に参加している。

16日にはCCDCOEメンバーとして迎えられ、エストニア・タリン同本部には国旗が掲揚された。浜田靖一防衛相は「日本は必要な貢献を続け、NATOおよび志を同じくする国々とのサイバー領域での協力をさらに強化し、国際秩序を維持し続ける」と代理臨時大使を通じてコメントしている。

CCDCOEのメンバーに加入した日本やウクライナ、アイルランド、アイスランドの国旗がエストニア・タリンの同本部に掲げられる(CCDCOE)
日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
関連特集: 欧州・ロシア