梅は、様々な健康効果を持っています。古くから日本人の身近な健康パートナーとして手元に置かれています。「梅はその日の難逃れ」ということわざがあり、それは梅が常に手元に置いておくことで、健康の問題にすぐに対応できる家庭医のような存在だということを示しています。
梅干しは食物、水、血液から毒素を取り除くだけでなく、下痢、風邪の解熱、咳止め、殺菌・防腐、疲労解消、熱中症などにも効果があります。一方、シソについては、中医学では「気」を調整する優れた薬とされています。すなわち、経絡の気が湿熱で詰まるのを防ぎ、気の流れを改善することができます。両者を組み合わせると、その効果は更に増します。
食事療法家の若杉友子さん(80歳)は、梅干しの素晴らしさを語ることがよくあります。彼女によれば、講演に出かけるときでも、携帯電話を忘れても梅干しは忘れないようにしているとのこと。何か体に良くないものを食べてしまったときでも、梅干しが体調を立て直し、元気を取り戻すのを助けてくれます。それは彼女にとって、常に信頼できるパートナーです。
奈良時代 薬として隋唐から渡来
梅と梅の木は元々中国のもので、奈良時代に薬用植物として日本に伝えられました。日本最古の医学書である『医心方』(平安時代に宮中医官を務めた鍼博士・丹波康頼が撰した、日本に現存する最古の医学書であり、中国の隋唐時代以前の医学書の内容を集めて編集したもの。その基本的な内容には、漢方薬、鍼灸、各種疾患の治療法、食事療法などが含まれている。全30巻)では、梅を梅と呼んでおり、これ以降、梅の解毒・養生の薬効が日本人の心に深く刻まれていきました。
この医学書は、当時の日本では宮廷の医学の秘伝とされており、医術を理解しているのは漢字や漢文が読める上層知識層の儒学者や僧侶だけでした。
そのため日常的な病気予防を重視した医者たちが、食事を通じて病気の治療や予防が可能であると認識し、この知識が広く普及しました。
その結果、家族を守る伝統的な飲食法が代々受け継がれてきたのです。そのため、梅の調理法や飲み方は医学書だけでなく、江戸時代にはシソ、ハチミツ、亀節(鰹節の一種)、コンブなどを加えた方法が次々と考案されました。
それが理由で、日本に残る伝統的な食べ物や食材の一部は薬膳食材で、とても健康的なものです。
旅行や行軍の必需品、救急・栄養・防腐の三拍子
お弁当の真ん中に、深紅の塩梅干しが一つ入っているのをよく見かけますが、「日の丸弁当」と呼ばれ親しまれています。白いご飯の中央にある赤い点は、日本の国旗を象徴しています。
戦後の厳しい時期、日本人はこの梅干しの力を借りて生活を支えてきたと言われています。昔の日本人は、戦争や旅行の際、梅干しを持ち歩き、疲労回復、食中毒、熱中症など急な体調不良に対処する手段として活用していました。
梅に含まれるクエン酸には強力な殺菌作用があり、また胃腸の働きを整えたり、体内の毒素を排除する効果もあります。
夏場に弁当を作る際、お母さんたちはよく梅干しを入れます。これは天然の防腐剤として作用し、弁当が腐敗・変質するのを防ぎ、また赤痢の予防、食欲増進、熱中症を和らげる効果があるからです。
日本の家庭では、一年を通して食卓に梅干しが欠かせません。体調が悪いときには梅干しの入ったお粥を作ることが一般的です。梅干し粥は非常に滋養があり体力の回復に有効です。梅干しは家族の健康を守る保存食として積極的に活用されています。
シソを加えて経絡を整え、湿気を取り除き下痢を止める
梅干しにはシソやハチミツを加えたものがよく使われます。ハチミツには、痰を取り除き咳を止め、美容にも良い効果があります。一方、シソは梅干しの色を深紅にし、食欲を増進させるだけでなく、湿気を取り除き体温を冷ます香りがあります。
特にシソは古代から重要な漢方薬として用いられ、経絡を開通する神薬と称されています。咳止め、解熱、利尿、去痰、健胃、発汗、解毒、精神安定、殺菌などの効果があります。
生で食べると、料理に豊かな香りが加わり、鼻が通り、胃が目覚めるような感じがし、全身がスッキリとします。これは体のエネルギー経路が開放されている状態を示していると考えられています。シソと梅を一緒に漬けることで、食欲を増進し、殺菌や解毒、病気の治療効果を高めます。
江戸時代の日本では、子供が風邪を引いたり、発熱したり、消化不良や下痢になった場合、すぐにシソ漬けの梅を取り出して潰し、熱湯に入れてかき混ぜ、子供に飲ませました。医者がいない時代、この方法が日本の家庭を守っていました。
クエン酸の量はレモンの10倍
驚くべきことに、梅に含まれるクエン酸の量はレモンの10倍とも言われています。クエン酸の役割とは何でしょうか? 現代の研究では、人体にはクエン酸サイクルと呼ばれる代謝機能があり、余分な脂肪や糖分、フリーラジカルなどの毒素とゴミを代謝し、血液や水分をきれいにします。
内臓に負担がなければ、気血が滞りなく流れ、体の機能が回復し、がんになりにくく、肌も若々しく保つことができます。この結果もまた、梅の強力な解毒効果と生命を維持する役割を示しています。
梅は酸味がしますが、食した後、体内で代謝されるとアルカリ性になり、「アルカリ食品の王」とも称されています。現代人は仕事が忙しく、精神的に緊張しており、食べ物に含まれる毒素が多すぎるため、体内に多量の酸性物質が蓄積し、酸性体質になりがちです。これは筋肉の硬直、肩の痛み、神経の興奮、疲労感など、毒素の蓄積と経絡の不通、代謝の問題が引き起こす現象です。
こんな時に梅を摂取すると、体内の酸性を迅速に中和し、エネルギー経絡をスムーズにし、内臓の機能を回復し、自然と疲労を解消します。
クエン酸にはカルシウムの吸収を高め、骨の流失を防ぐ効果もあるため、梅は骨の老化や骨粗しょう症の予防・治療にも効果が期待できます。
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