経済が低迷するなか、勤務時間が自由で、就業までのハードルが比較的低い「ネット配車サービスの運転手」は、多くの失業者にとって飛びつきやすい選択肢の一つとなった。画像は、ディディ(滴滴)のタクシー、浙江省杭州市、2022年7月21日撮影。(STR/AFP via Getty Images)

ネット配車市場に殺到する「失業者の大軍」 供給過多で収入は激減=中国

疫病の蔓延に加えて、経済の低迷を主因とする失業率の急激な上昇など、中国の民衆にふりかかる苦難はとどまるところを知らない。

そのような中、勤務時間が自由で、運転免許があれば就業までのハードルが比較的低い「ネット配車サービスの運転手」は、多くの失業者にとって飛びつきやすい選択肢の一つとなった。

しかし今は、経済の低迷によって、多くの人が消費控えにまわっている。ネットからの要請によって配車サービスをするネット配車市場も、利用者の減少および供給過多のため、運転手が得られる収入は、以前に比べると激減している現状がある。

香港メディア「星島日報網」によると、昨年10月の時点で、新たに登録されたネット配車サービスの運転手は120万人以上だという。

「星島日報網」はネット配車サービスに従事する運転手・王さんの話として、次のように伝えた。

「今年に入ってから、閉店が相次ぐ飲食業界をはじめ、他の業界からネット配車の運転手に転身した人が非常に多くなった。しかし、利用者がどんどん減っているため、供給過多となり、私たちの収入は以前と比べたら大幅に減少している」

数年前には、1日で最高1800元(約3.5万円)を稼いでいたという上海のドライバーが、今では1日あたり600元(約1.2万円)程度にまで減っている。

登録した運転手は、プラットフォームの利用料などを支払わなければならない。なかには、生活費を節約するため5か月もの間、車中で寝泊まりをしている運転手もいるという。

また、甘粛省蘭州市でネット配車サービスの運転手として働く王さんによれば「昨年3月ぐらいから、飲食業界などの他の業種から多くの人が私の勤める会社に入った。その大半は、35歳から43歳だ」という。

中国のネット配車サービス最大手の滴滴出行ディディ)の財務報告によると、2021年3月から2023年3月までの約2年間に、中国における専業運転手などのアクティブなドライバー数は1300万人から1900万人と43%も増加している。

しかし、これに対して、配車サービスを積極的に利用する顧客数は、3.8億人から4.1億人と1割も増えていない。そのため、ドライバーの数が需要を上回っており、相対的に仕事が減ったという。

また、同じく滴滴出行の財務報告によると、2020年12月から2023年4月までの間に、タクシー1台あたりの1日平均の受注数は23.3件から10.2件に激減している。

上海のあるネット配車サービスの運転手は「この1年で、私の収入は1時間当たり90元から50元(約千円)に減った」と明かしている。

ただでさえ利用者が少なくなっている現状に、補助金の減少、およびプラットフォーム利用料の値上がり、などが追い打ちをかける。

つまり、配車サービスプラットフォームによる運転手への「搾取」は増えているのだ。そのほか、競合するプラットフォーム同士が行う価格競争によって取り分が減るなど、運転手は多大なダメージを受けている。

別の中国メディアが取り上げたケースでは、上海を拠点とするあるネット配車サービスの運転手の場合「毎日8時間は運転しないと、プラットフォームからの車レンタル料である350元(約7千円)を償却できない」という。

この運転手は、生活費の節約のため、賃貸アパートではなく車内で寝泊まりしている。午前2時に仕事を終え、翌朝8時半の仕事開始時間まで車内で寝る。「1日に15時間運転して、ようやく400元(約8千円)ほど稼げる」という。

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