画像は、2022年4月29日に崩落した湖南省長沙市の違法改造ビル(画像の中央部分)。(CNS/AFP via Getty Images)

54人死亡のビル崩落事故 違法改造と当局の不作為が招いた悲劇=中国 湖南

2022年4月、湖南省長沙市で54人が死亡するビルの倒壊・崩落事故が起きた。

この事故について、事故の発生前に、複数の関連部門が前後6回にわたって調査し、違法改造建築の実態があることを把握していたが、部門間の責任転嫁や責任追及を避けるためのデータ偽造を行っていたことがわかった。

今月8日、中国国家テレビ局「CCTV」は毎年恒例の「反腐敗特集」を放映した。そのなかで、この事故の背後にある政府部門も関係したデータ偽造の問題を暴いている。

8階建てビルが「4秒で完全につぶれた」

ただし、これは中共の官製メディアの番組である。そのため、一面においては真実の部分もあるが、中共当局が「反腐敗」の姿勢をアピールする趣旨で作られたコンテンツであることは留意したい。

2022年4月29日正午ごろ、長沙市にあった8階建てのビルが倒壊、崩落した。わずか4秒でビルは完全につぶれ、無残ながれきの山と化した。この事故により、54人が死亡している。

崩落したビルの1階は商店、2階はレストラン、3階はカフェである。4~6階はファミリー向けホテルで、7階と8階はビル所有者の住宅だった。

事故が起きたのは、ちょうど昼食をとる時間だった。そのため、近くの医学専門校に通う多くの学生がこの時、同ビル内の飲食店で食事をしていた。54人の犠牲者のなかには、同校の学生も少なくなかった。

事故の後「現地当局による情報封鎖」「人命救助になっていない無能ぶり」「犠牲になった学生の保護者へ圧力がかけられたこと」などに対する世間の非難、および学生の親たちによる共同請願書などが、ネット上に流出している。

「悲劇は防げたはず」というが

CCTVの報道によると「この悲劇は、本来防げたはずだ」という。

本当に「悲劇が防げた」というならば、こうした事故を招いた中国社会の根底にある腐敗や不条理について言及すべきであるが、当然ながら体制側の「舌」であるCCTVの番組は、そこまで追求してはいない。

倒壊したビルの所有者は、建築関連の法規を無視して、身勝手にビルを増築していた。当然、役所の関連部門に対しても報告を行っていない。しかも、工事を行ったのは無資格の職人であったため、施工段階から重大な「安全上の危険」があったという。

このビルの崩落事故が発生する前、現地の複数の関連部門は6回にわたって違法改造建築を調べていた。しかし、部門間で互いに責任転嫁するばかりで、責任追及を回避するようデータ偽造まで行っていたという。

さらに衝撃的なことに、崩壊した建物に「合格」の報告書を発行した鑑定企業は、現地の公安局の元高官が推薦する企業だった。この公安局の元高官は、鑑定企業から「数万元の謝礼」を受け取っていた。

倒壊する前、1度だけ問題のビルを検査するために「当局者」がやってきたが、それもビル管理企業が120元(約2400円)使って人を雇い「ビルを検査するふり」を装っただけであった。

こうして、安全性や強度を無視した違法増築ビルは、当局による検査もいい加減に済まされて「合格」となり、最終的に54人が犠牲となる悲劇が発生したことになる。

この悲劇をめぐっては、ネット上では「これだけ多くの政府関連部門があるのに、どれも真面目に仕事をしていない」といった怒りと嘆きが広がっている。

関連記事
2024年5月11日、中国四川省成都市で、中国のEV車の屋根上に設置された折りたたみ式テント(ルーフテント)に車主が首を挟まれて死亡する事故が起きた。
2024年5月13日、中国河南省新郷市の休業中の店に「ガス料金が5億元(約107億円)」の請求が届いたことがわかった。
全米の大学キャンパスなどで頻発している活発なパレスチナ支援デモに、中国共産党と関連のある団体が資金提供していることが明らかになった。「2024年米大統領選に向けて不安をあおり、若者を過激化させ、米国を不安定化させることが目的」と分析している。
「特別債は本来、プロジェクトからの収益によって返済されるべきだが、実際には多くの低品質なプロジェクトが含まれており、収益を期待することは難しい。結果として、自己返済は不可能であり、最終的には大きな負債の問題を抱えることになる」
このほど、中国河南省の銀行職員が顧客の預金を横領したことが中国メディアによって報じられた。関連トピックスが中国SNSのトレンド入りすると共に、同様の被害を訴える預金者が続出している。