東京国立競技場で7日、スタープレイヤーのリオネル・メッシが所属する米インターナショナル・マイアミと、ヴィッセル神戸の親善試合が行われた(Photo by Kenta Harada/Getty Images)

「メッシの乱」香港試合欠場…中国ファン、日本との温度差に嫉妬 政治化危惧も

7日、東京国立競技場で行われたサッカーJ1リーグのヴィッセル神戸と米メジャーリーグサッカーのインテル・マイアミとの間の親善試合は、PK戦(4-3)の結果、神戸が勝利した。後半から途中出場したマイアミのFWメッシはゴールを決めることはできなかったものの、華麗なボールさばきで日本の観客を沸かせた。

メッシのプレーは、特に後半の途中からの出場が注目された。その名前がアナウンスされると、大きな歓声がスタジアムを包んだ。いっぽう、300万円の高値がつく高額チケットを中心に販売成績は芳しくなく、全6万5000席のスタジアムは半数も埋まらなかった。

メッシは、サウジアラビアで行われた親善試合で内転筋に違和感を覚え、続く4日の香港での試合を欠場するという事態に。これにより、香港政府からも「失望」の声が挙がりファンからは返金を求められるなど、一連の騒動が発生していた。

6日の東京での記者会見で「プレーできるかはまだわからない」と述べていたメッシだが、この日の試合で見事なドリブルやパスワークを披露し、日本のファンを魅了した。

香港では「失望」握手もさけるメッシ

香港での試合では約4万人の観客が集まる中、マイアミのヘッドコーチがメッシの状態は出場に適さないとして不参加を発表。会場からは失望の声が上がった。50倍の倍率となったチケットを掴んだ来場客は、みな肩を落とし「返金!返金!」とのコールが起きた。

試合主催者は、香港政府に提出していた205万ドル以上の資金援助申請を撤回。香港トップの李家超行政長官は、主催者が撤回したとしても、観客や社会に対して責任を負うべきだと述べた。チケットの払い戻しは行われていない。

香港政府は、2019年の社会運動と3年以上にわたる新型コロナウイルス感染症の影響を受け、経済回復が遅れている現状を背景に、イベント経済を通じて新たなビジネスチャンスを創出しようとしていた。しかし、メッシとルイス・スアレスの両スタープレイヤーの欠場に、多くのファンが不満を抱き、この大規模イベントは失敗に終わった。

米CNNも一連の欠場騒動を生放送し、「メッシの乱(Messi Mess)」とさえ呼んだ。記者は「香港のファンはただ素晴らしい試合を見て、愛するヒーローの技を鑑賞したかったが、この夢は砕け散った」と同情を示した。

「メッシの乱」 中共が政治化も

メッシは香港到着以来、友好的な態度ではなかったとされる。3日、サウジアラビアから到着した香港空港での駐機場インタビューも避けた。予定されたビクトリア港の遊覧船川、啓徳体育園の見学など交流イベントも全欠席し、ホテルを離れなかった。欠場した試合でも、メッシはスタジアム内での香港トップの李家超長官を含む高官らとの握手の列にも並ばず、憶測を呼んだ。

いっぽう、日本では6日「アジアツアー最後の試合を日本でできて嬉しい。いつも温かく迎えてくれる」と述べるなど東京で記者会見を開き終始笑顔。香港での欠場について、サウジでの試合後の不調を説明し「こういったことはサッカーではつきものだ。本当に香港でのことは残念」と述べた。

香港で会見せず日本で真相を語ったことも含め、中国や香港のファンは「日本滞在中での様子とは打って変わって香港での表情は終始曇ったままだ」と日本との温度差に嫉妬を抱いている様子。メッシは中国SNS微博に謝罪を表明したものの、多数の中国語や英語の不満や罵声が書き込まれている。

メッシ欠席について、中国共産党の環球時報は「スポーツの領域を超えた問題」として、その怒りを強調した報道をしており、香港での試合欠席は「差別的扱い」と報じた。

「香港での試合は、この旅行中のメッシの6試合のプレシーズン親善試合の中で唯一彼が欠場したもの。この状況は…インテル・マイアミとメッシ自身の誠実さに対する疑問と疑念を増大させた」

一部専門家は、中国共産党側がスポーツの枠を越え政治問題化させる可能性を危惧している。

メッシは半年前、中国で一時勾留されたことがある。豪州との親善試合に備え、中国合宿に参加するために渡航した際の出来事だ。メッシはアルゼンチンのパスポートではなく、スペインのパスポートを持っていたため中国入国ビザの不備が生じたという。1時間に満たない北京でのホテル滞在ののち、ビザが交付された。

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