ロシア反体制派ナワリヌイ氏死亡、各国「プーチン政権に責任」
Guy Faulconbridge Felix Light
[モスクワ/ジュネーブ/ベルリン/ビリニュス 16日 ロイター] – ロシアのプーチン政権を批判していた反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が収監先の北部ヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で死亡した。ロシア刑務所当局が16日、明らかにした。
元弁護士のナワリヌイ氏はロシアの民主化を唱えると同時に、プーチン政権の不正を訴えていた。死亡を受け、ナワリヌイ氏ほどの影響力のある反体制派指導者はロシアからいなくなった。
刑務所当局によると、ナワリヌイ氏は散歩後「気分が悪く」なり、すぐに意識を失った。「施設の医療スタッフがすぐに到着し、救急隊を呼んだ。必要な蘇生措置は全て行ったが効果はなく、死亡が宣告された」とし「死因は現在調査中」と説明。大統領府のペスコフ報道官によると、プーチン大統領はナワリヌイ氏死去の報告を受けている。
ナワリヌイ氏の死亡がメディアで報じられた際、ロシア国営テレビはロシア中銀総裁の記者会見のもようを放送していた。ロシア検察当局は、ナワリヌイ氏の死亡を受け、モスクワ中心部の大規模な抗議デモに参加しないよう警告。「このイベントは、法律で定められた手続きに従って市の執行当局と調整されていないことに留意しなければならない」とした。
ソーシャルネットワークには、ナワリヌイ氏の死亡が伝わった後、ロシアの他の都市でも人々がナワリヌイ氏に敬意を表す様子が映ったビデオなどが投稿されている。
<欧州各地で追悼集会>
欧州各地でナワリヌイ氏の死を追悼する集会が開かれた。ドイツの首都ベルリンでは中心部に最大600人が集まったほか、ロンドンとパリのロシア大使館の前にはそれぞれ100人を超える人が集結。ポルトガルの首都リスボンでも多くの人が集まり、黙とうをささげた。
<調査要請>
国連人権事務所は、ナワリヌイ氏の死亡について信頼できる調査が行われるよう要請。「国家の拘束下で誰かが死亡した場合、国家に責任があると推定される。「われわれはロシア当局に対し、信頼できる調査が確実に実施されるよう求める」とした。
ロシアの調査委員会は、ナワリヌイ氏の死亡を巡る調査を開始したとしている。
<「プーチン政権に責任」、各国が非難>
ナワリヌイ氏の妻ユリヤさんはドイツで始まったミュンヘン安全保障会議で、死亡が確認されればロシアのプーチン大統領とその側近は罰を免れられないと訴え。国際社会に対し、ロシアの「恐ろしい政権」に対して団結するよう呼びかけた。
米国のバイデン大統領は、ナワリヌイ氏の死亡を受けロシアへの対抗措置を検討していると表明。「あらゆる選択肢を検討している」と述べた。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は、ナワリヌイ氏が死亡した責任は全てロシアの政権にあると表明。「ナワリヌイ氏は自由と民主主義の価値のために戦った」とし、EUはこの悲劇的な死について「ロシア政権に全責任を負わせる」と述べた。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は「全ての事実を明らかにする必要があり、ロシアは彼の死の状況に関するあらゆる重大な疑問に答える必要がある」と指摘。
英国のスナク首相は「ロシアの民主主義の最も強い擁護者として生涯を通じて信じられないほどの勇気を示した」としたほか、ドイツのショルツ首相は、ナワリヌイ氏は勇気の代償を命で払ったと指摘。フランスのマクロン大統領も「現在のロシアでは自由な精神は収容所に入れられ、死刑を宣告される」と非難した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は訪問先のミュンヘンで行った記者会見で「プーチン大統領は自分の地位さえ守れれば、誰が死のうと構わない」とし、ナワリヌイ氏は明らかにプーチン氏に殺されたと語った。