食品添加物は本当に安全? 見過ごせないリスク(1)

エリザベス・ダンフォード(Elizabeth Dunford)さんがオーストラリアからアメリカに引っ越した初日のことです。何気なく近くのスーパーに立ち寄ってパンを買おうとした彼女は、食品添加物研究者として反射的にパンのラベルに書かれた成分表に目を通しました。

「添加物がこんなに入っているんだ」と彼女はびっくりしました。どのパンにも多かれ少なかれ不快な成分が含まれており、ためらいましたが、渋々1袋手に取りました。

「これからの買い物は困るな」とダンフォードさんは本誌『エポックタイムズ』のインタビューを受けた時に当時のことを思い出しました。彼女はノースカロライナ大学の客員助教授であり、登録栄養士で、ジョージグローバル健康研究所のプロジェクトアドバイザーでもあります。

アメリカ人が1日に摂取するエネルギーのうち、60%以上は超加工食品から得ており、5人に1人は80%を超えているといわれています。天然食品と超加工食品、どちらも「食品」と呼ばれますが、雲泥の差があります。超加工食品は土から生まれたのではなく、工場で加工され作られたもので、多くの成分は食料品とは程遠いものとなっています。

「正直言って、今の時代に加工されていない食品を手に入れることは至難の業だ」とアメリカアンチエイジング及び再生医療委員会認定医師である医学博士のネイサン・グッドイヤー(Nathan Goodyear)氏は『エポックタイムズ』へのメールで述べました。

一方、超加工食品に使用される添加物の種類はますます多様化しています。食品添加物は保存期間を延ばすために使用される防腐剤や抗酸化剤、見た目や香りを良くするための食用色素や香料というイメージがありますが、時が経つにつれ、食べ物の味、風味、食感を改善する添加物も大量に登場してきました。例えば、安定剤、乳化剤、凝固剤、膨張剤、抗凝結剤、艶出し剤、保湿剤などが挙げられます。

現在、アメリカ食品医薬品局(FDA)が食品添加物として許可しているものは3972種類あります。

2022年「営業と食事アカデミー」の学会誌に発表された研究によると、過去20年の間にアメリカ人が購入した加工食品の添加物含有量は10%増えたと言います。同じ年に「栄養学フロンティア」誌に掲載された別の研究では、アメリカの食品メーカーデータベースにある24万種類を超える加工食品を分析した結果、65%以上の商品に少なくとも1種類の「五感を楽しませる添加物」が含まれていることがわかりました。

高まる食の質への追求および加速する社会からのプレッシャーにより、添加物はすでに人々の日常生活に溶け込み、当たり前の存在となっています。

私たちは食品添加物に慣れていて、現代の食生活ではそれらが普通の一部だと感じることさえある(Shutterstock)

 

思い寄らぬ問題

人々は最初、塩やお酢を使って食べ物を保存していましたが、産業時代に入るとスーパーの棚に並ぶ手間のかからない調理済み食品や半製品に頼るようになりました。

「20世紀の半ばには、ますます多くの食品添加物が使用されるようになりました」と栄養科学博士モナ・カルボ(Mona Calvo)氏は『エポックタイムズ』のインタビューで述べました。彼女はニューヨークのマウントサイナイ医科大学の医学系客員教授であり、元FDA食品安全応用栄養センターの規制審査専門家で主任研究員でもあります。

彼女は、アメリカでは第二次世界大戦終戦後に初めて人々が食品添加物の問題に関心を持つようになったと述べました。その頃、アメリカFDAは発展を遂げ、食品に含まれる成分にも注目し始めました。

20世紀の50~70年代にかけて、FDAは日常よく使用される食品添加物の安全性を評価し始めました。「通常、げっ歯類を使った簡単な毒性学の研究でした」とカルボさんは説明しました。

アメリカを除き、イギリス、EU諸国、オーストラリア、ニュージーランドなど多くの国では、食品添加物を管理するために「食品コーデックス(CODEX)システム」を採用しています。「これは非常に優れたシステムです」とカルボさんは言います。食品コーデックスは添加物に番号を付け、使用基準と制限を明記する非常に細かく厳格なシステムです。

この管理システムには多くのメリットがあります。例えば、国や機関によって同じ添加物でも名前が異なることがありますが、番号を使えば正確に識別できます。その上、使用基準や制限が設けられ商品の安全性が保障され、市場が受け入れやすくなります。

「しかし、アメリカは異なる管理システムを選びました」とカルボさんは説明しました。アメリカでは添加物に名前を付け、機能を定義して管理します。例えば「Xという名前の添加物は抗酸化剤として食品に使用できます」といった具合です。しかし、この表現は管理上に曖昧な部分があります。

しかも、FDAが許可した食品添加物の中には、二つの大きなカテゴリに含まれる添加物が実際に審査されずに承認されたものも多数あります。一つのカテゴリは「一般的に安全だと見なされる」(GRAS)もので、過去に広範囲での使用実績のある添加物です。

もう一つのカテゴリーは1958年までにFDAやアメリカ農務省がすでに承認したものです。これらの添加物の安全性については現行の法律で定義を定められず、FDAは「予想される使用条件が合理的であり、十分安全だろう」と解釈しています。

しかし、多くのGRAS(一般に安全とみなされている食品添加物に与えられる安全基準合格証)添加物には、食品に使う際の上限が設けられていません。添加量はGMP(適正製造基準)に基づいて適正と思われる量が投入されます。例えば、果糖ぶどう糖液糖の場合、甘さをコントロールするために入れる人工甘味料の量はメーカーがこれぐらいだと美味しいだろうと決め、消費者はその量を知る権利がありません。

また、たとえFDAが添加量の上限を設けても、食べる人間の摂取量を定めていません。人々が一日にどれだけ添加物含有の食品を食べたかを監視されていないのです。つまり、「FDAは食べる量をコントロールできていない」ということです。現在最も多く使われている食品添加物は、1970~1975年にかけてGRASに承認されたものです。

しかし、当時は外で働く女性が少なく、人は天然食材を使って家で調理するのが主流でした。添加物の使用量はかなり限られていました。しかし、現代社会では女性の社会進出が進み、多くの家庭が超加工食品に頼るようになり、添加物含有食品の使用量も大幅に増えたとカルボさんは述べました。

GRASに承認されている添加物は絶対安全だと言えるのでしょうか? そうとは限りません。2015年にFDAによってGRASリストから除去されたトランス脂肪がその典型的な例です。

また、ある添加物の特定の機能が承認されると、各食品メーカーは我先に様々な製品に使用します。その結果、その添加物はクッキー、インスタントスープ、ソーセージ、冷凍食品など、至る所に存在するようになります。

「FDAは添加物含有食品への継続的な検査を行っていません」と、長年にわたり食品添加物問題に注目しているマウントサイナイ医科大学腎臓専門医のハイメ・ウリバリ(Jaime Uribarri)医師は『 エポックタイムズ』のインタビューで強調しています。つまり、新しい超加工食品が市場に出回った後、FDAは定期的なサンプリング検査を行い、安全性を確認する仕組みがありません。

一度ある添加物が特定の目的で使用することが承認されると、食品メーカーはその添加物をいろいろな製品に次々と使うようになる(Shutterstock)

(つづく)

李路明