中国上海の中心部(AFP via Getty Images)

上海女子刑務所 医療機器備えた大型バスで「全身くまなく医療検査」 臓器収奪の懸念

法輪功学習者の女性が、20年前に上海女子刑務所で受けた不可解な「医療検査」について明らかにした。この証言によれば、刑務所ではこの検査の後、女性収監者の行方がわからなくなったという。

7月末、デンマーク在住の法輪功学習者、鮑学珍氏が、法輪大法の情報サイト「明慧ネット」に文書を寄せた。

1950年上海生まれの鮑氏は、1995年から法輪功の修煉を始めた。「元々体が弱く病気がちでしたが、修煉ののち、心身ともに健康になりました」。しかし、1999年に中国共産党の江沢民による迫害政策が始まると、信念を貫いた鮑氏は2001年6月1日に逮捕、拘束された。3年6か月の刑を言い渡され、上海女子刑務所に収監された。

鮑氏の証言によると、2003年前半、刑務所は法輪功学習者全員に対し、身体の医療検査を実施した。「監区の正門前に4台の大型バスが停まっていました。バスの中には、最新の医療機器が設置されていました」

検査は広範囲に及んだという。「収監者が順番に並ばされました。バスには一人ずつ乗って、検査を受けました。列は警察が監視し、バス内にも警察がいました。頭からつま先まで全て検査されました。眼科、身長、血液検査、尿検査、婦人科、超音波検査、心臓、肝臓、肺、腎臓などすべてです」と説明した。

当時、上海女子刑務所には法輪功学習者が百人以上いたため、この検査は数日間にわたっておこなわれたという。その様子を見て、警察官は皮肉を言ったという。

「見てごらん、政府はあなたたち法輪功(の学習者)にどれだけ手厚くしているのか。あなたたち一人ひとりに全身検査をしてあげているのよ。法輪功だけがこの『待遇』を受けられる。他の人たちにはないし、私たち警察官でさえ受けられない」

全体検査の数日後、鮑氏は追加の眼科の検査に連れて行かれそうになったが、専用車両は来ることはなく、検査は実施されなかった。「私の目に問題はありません。なぜまた検査を受けるのですか」と看守らに問うても、回答はなかったという。

また、鮑氏は検査後に姿を消した収監者がいたと証言している。「上海で逮捕された地方出身の人々の中には、名前がなく番号だけの人がいて、その後姿を消しました」

収監されていた当時、女性たちは、強制臓器収奪のことを知らなかったという。

中国から脱出して海外に滞在する中、鮑氏は2015年、中国国内の病院に患者を装って電話をかけ、臓器移植について問い合わせた。上海や浙江省の病院職員は「臓器資源がたくさんある」「法輪功の臓器があり、非常に短時間で適合し、すぐに手術ができる」と答えたという。

こうした経験から、鮑氏は中国共産党による法輪功学習者からの臓器収奪は「存在する」と強調し、国際社会に向けて「中国共産党の反人類的な悪行を一刻も早く止めさせるため」に、行動を起こすよう呼びかけている。

鮑氏と同じ頃、2004年11月、黒龍江大慶刑務所に収監中、本人の同意なく病院に移され、肝臓の一部を摘出されたと証言する法輪功学習者が、今年7月3日、米ワシントンで記者会見を開いている。

中国共産党の「臓器狩り」生存者、米ワシントンで経験語る

彼らの証言は、中国における収監者からの臓器摘出問題の一端を示す。このほか、中国では、一部の死刑囚は臓器の摘出が直接的な死因になっているとの論文も、豪州モナシュ大学の研究員より報告されている。

中国政府は2005年に初めて、臓器移植の最大95%が死刑囚から得られていることを認め、2014年には2015年1月1日以降、死刑囚からの臓器摘出を完全に停止すると発表した。しかし同研究では、2015年以降も公式データの組織的な改ざんの証拠が見つかっており、この慣行が続いている可能性が指摘されている。

中国共産党による法輪功学習者からの強制臓器摘出などの残虐行為は国際的な非難を受けている。今年6月25日、米国議会下院は「法輪功保護法案」を可決した。この法案が施行されると、中国国内で臓器摘出に関与した人物に制裁が課されることになる。

アメリカ上院でも今月、マルコ・ルビオ議員(共和党)らによって同法案が議会に提出された。

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