2024年8月14日、晴天に恵まれた東京の空のもと、東京スカイツリーと都市のスカイラインが広がっている。(PHILIP FONG/AFP via Getty Images)

賃金上昇が物価を押し上げる見通し 消費者物価 2025年度は2%推移か 

日本銀行が1日に発表した「経済・物価情勢の展望」では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、輸入物価上昇による価格転嫁の影響が徐々に薄れつつあるものの、賃金上昇に伴うサービス価格の上昇が続くことで、現在は2%台半ばを維持している。中長期的な予想物価上昇率も緩やかに上昇している状況だ。

展望によると、2024年度の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は2%台半ばで推移し、その後2025年度および2026年度には概ね2%程度で安定すると見込まれている。これは、過去の輸入物価上昇による価格転嫁の影響が減少する一方で、賃金上昇が物価を支えているためである。

マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まることで、中長期的な予想物価上昇率が上昇し、見通し期間の後半には、日本銀行が掲げる「物価安定の目標」に整合する水準で推移すると考えられる。

さらに、2025年度に向けては、政府による各種施策の影響が押し上げ要因として作用する一方、原油をはじめとする資源価格の下落が物価の押し下げ要因となる見通しである。特にガソリン、電気、ガス代の負担緩和策が段階的に終了することで物価が押し上げられる一方で、原油価格の緩やかな低下が物価に抑制的な影響を与える見込みだ。前回の展望リポートと比較すると、成長率については概ね不変であるが、2025年度の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、資源価格の下落による影響で若干下振れしている。

物価の上昇に伴い、企業の賃金・価格設定行動も積極的になっており、名目賃金の増加が続くとともに、賃金上昇が販売価格に反映される動きも強まっている。需給ギャップが改善し、企業の価格設定行動が変化することで、中長期的な予想物価上昇率はさらに上昇することが見込まれる。

こうした要因を考慮すると、消費者物価の基調的な上昇率は、需給ギャップの改善と予想物価上昇率の上昇を受け、見通し期間後半には物価安定の目標に沿った水準に達すると予測される。ただし、依然として不確実性が残るため、企業の賃金や価格設定の動向を今後も慎重に見守る必要があるとされる。

関連記事
東京株式市場の前場で日経平均が下げ幅を拡大し、一時800円超の下落を記録。米株高後の過熱感から利益確定売りが膨らみ、植田日銀総裁の講演を前に投資家が警戒
金価格の高騰を背景に、日本への金の密輸が3年連続で急増している。片山さつき財務大臣は28日、税関で申告のない金について没収を可能とする制度改正を明らかにした。不正薬物以外の没収対象化は初めてであり、財務当局が金密輸を従来より深刻な脅威と捉えていることがうかがえる
ソニーや三菱自動車など多くの日本企業が中国で事業縮小や撤退を進行中。生産拠点は東南アジアやインドへの移転が目立つ
高市首相は、日米が南鳥島周辺海域でレアアース鉱物の共同開発を検討すると発表。経済・安全保障の強化を目的に日米が協定を締結し、中国依存脱却を目指す。
9月貿易統計では、半導体関連の輸出回復により5カ月ぶりの増加が確認されたが、輸入がそれを上回り、貿易赤字は3か月連続となった。円安進行が輸出企業の追い風となる中、高市早苗氏の政策スタンスが市場で注目を集めている。