骨粗しょう症を予防するには、適切なタイミングで十分なカルシウムを摂取することが重要です。Keyi栄養相談センターの栄養士イボンヌ・カイ氏は、カルシウム補給を早期に始める重要性を強調しており、『健康1+1』という番組でその理由を解説しました。
骨量のピークと減少
アメリカ整形外科協会によれば、骨量は25~30歳でピークに達し、その後徐々に減少します。特に女性の場合、閉経前後の5~6年間で骨量が10~20%も失われる可能性があります。
骨量に影響を与える要素
骨量は以下の3つの要素に大きく依存します:
- 遺伝
- カルシウム摂取
- 運動
カルシウム不足は骨密度の低下を引き起こし、骨折や骨粗しょう症のリスクを高めます。一度骨粗しょう症になると、後から大量のカルシウムを摂取しても骨密度を回復するのは難しいとされています。
カルシウム摂取の目安
- 13~18歳の青少年:1日1300ミリグラム
- 19歳以上の成人:1日1000ミリグラム
※ただし、1日の摂取量が2500ミリグラムを超えないように注意が必要です。
骨を守るための生活習慣
カルシウムやビタミンDを摂取するだけでなく、運動を取り入れることが骨を強化するカギです。特に以下の運動が効果的とされています:
- ウォーキング
- ジョギング
- ウェイトトレーニング
カルシウム摂取を増やすための5つの食品
健康的な食事を通じてカルシウムを十分に摂取することで、推奨される1日の必要量を満たすことが可能です。
1. 牛乳
カイ氏によれば、牛乳は吸収率が高く、カルシウム補給に最適な食品の一つです。1杯(約200ml)の牛乳で、1日の必要量の約4分の1を補うことができます。さらに、以下の食品でも同等のカルシウムを摂取可能です:
チェダーチーズ 約57g(2オンス)
プレーンで全脂肪のヨーグルト 約240g(8.5オンス)
牛乳に含まれるカルシウムは、カルシウムカゼイナート、リン酸カルシウム、可溶性カルシウムとして存在します。これらはカゼインと結びついており、腸内でゆっくりと放出されるため吸収率が高く、最大で35%に達することがあります。
チーズに含まれるカルシウムは、カルシウムパラカゼイナートとして存在し、固形のため腸内でさらにゆっくりと放出され、吸収が効率的に行われます。
ケフィアなどの発酵乳飲料に含まれるカルシウムは、イオン化カルシウムとして存在します。ただし、乳酸の低いpH値の影響で腸に届くまでに一部が失われる可能性があり、吸収率は牛乳よりやや低くなります。腸内ではカルシウムが散らばりやすいため、一部が便として排出されることがあります。
2. 豆腐
約1カップの絹ごし豆腐には、1カップの牛乳と同量のカルシウムが含まれています。ベジタリアンや乳糖不耐症の方にとって、優れたカルシウム補給食品です。
3. 昆布
昆布100g(約3.5オンス)には168ミリグラムのカルシウムが含まれています。吸収率は野菜の中で最も高い約30%を誇ります。さらに、低カロリーでヨウ素、マグネシウム、食物繊維も豊富なため、カロリー制限中の方にも適しています。スープのだしや海藻サラダなどで活用できます。
4. しらす干し
しらす干し(カタクチイワシの幼魚)はカルシウムを豊富に含む小魚です。10g(約0.35オンス)で、1カップの牛乳と同じ量のカルシウムを摂取できます。タンパク質や不飽和脂肪酸も多く含まれますが、塩分が多いため摂取量には注意が必要です。
5. 黒ごま
黒ごま大さじ1.5杯(約20g)には、1カップの牛乳と同等のカルシウムが含まれています。さらに、オメガ6系多価不飽和脂肪酸や鉄、マグネシウムなどの微量ミネラルも豊富です。黒ごまはペーストにしたり、お粥、パン、ラテに加えるなど、さまざまな料理で楽しむことができます。
カルシウムが豊富な野菜
乳製品以外にも、野菜、豆類、穀物はカルシウムを摂取する重要な供給源となります。特にベジタリアンにとって、これらは貴重な選択肢です。
カルシウムを多く含む野菜
濃い緑色の葉物野菜や海藻類は、カルシウムが豊富に含まれています。
ケール:100gあたり254ミリグラムのカルシウムを含み、最も多い部類に入ります。
ワカメ:100gあたり150ミリグラムのカルシウムを含みます。
アスパラガス、カイラン(中国ケール)、ブロッコリー、ヒユ(アマランサス)もカルシウムが豊富です。
吸収率を左右する要因
カルシウムやその他のミネラルの吸収率は、シュウ酸やフィチン酸といった「吸収を妨げる成分」に影響を受けます。例えば、ほうれん草のようにシュウ酸を多く含む野菜では、カルシウム吸収率がわずか5%程度に低下します。一方で、シュウ酸が少ない野菜では吸収率が高いことが分かっています。
以下は代表的な野菜のカルシウム吸収率:
ケール:49%
ブロッコリー:61%
高菜(チンゲンサイ):40%
白菜:54%
これらの野菜を日常の食事に取り入れることで、効率よくカルシウムを摂取することができます。
カルシウム吸収に影響を与える6つの要因
体がカルシウムをどれだけ効率的に吸収できるかは、以下の要因に大きく左右されます。
1. シュウ酸とフィチン酸
シュウ酸
多くの野菜に含まれる天然化合物で、カルシウムと結びつきシュウ酸カルシウムを形成することで吸収率を低下させます。例として、ほうれん草やヒユ(アマランサス)が挙げられます。
フィチン酸
全粒穀物、豆類、ナッツ類に多く含まれる成分で、カルシウムと結びついて吸収しにくい化合物を作ります。ただし、シュウ酸より吸収阻害効果は弱いとされています。
2. 過剰なナトリウム
ナトリウムとカルシウムは尿として一緒に排出されるため、ナトリウムを過剰に摂取すると腎臓がナトリウム排出を促進し、それに伴ってカルシウムの排出量も増加します。また、ナトリウムの過剰摂取は腸でのカルシウム吸収を妨げる可能性があります。
3. 過剰なタンパク質
タンパク質が分解される際、腎臓はアンモニアとカルシウムイオンを処理します。タンパク質の過剰摂取によりアンモニアを排出する際、血液中のカルシウムも同時に排出されます。研究では、カルシウムとリンの摂取量が一定である場合、タンパク質摂取量が2倍になると尿中のカルシウム排出量が50%増加することが分かっています。
4. 過剰なカフェイン
カフェインには利尿作用があり、1日300ミリグラム以上(ブラックコーヒー約3杯分)を摂取すると、尿中にカルシウムが排出されやすくなります。特に閉経後の高齢女性では、カフェインの過剰摂取が脊椎の骨密度低下を加速させる可能性があります。
5. ビタミンD不足
カルシウムを効率よく吸収するにはビタミンDが不可欠です。ビタミンDは小腸でのカルシウム吸収を促進し、骨の健康を保つためにカルシウムとリンのバランスを調整します。また、副甲状腺ホルモンと協力して血中のカルシウム濃度を維持し、腎臓でのカルシウム再吸収を助けます。ビタミンDが不足するとカルシウムの代謝が妨げられます。
推奨される1日のビタミンD摂取量:
1~70歳:600IU(国際単位)
70歳以上:800IU
アメリカでは、食品にカルシウムやビタミンDを強化することが増えており、これらの栄養素を食事から効率よく摂取できるようになっています。
6. 炭酸飲料
炭酸飲料には以下の成分が含まれており、カルシウム吸収を妨げる原因になります:
- カフェイン
- リン酸
- 砂糖
- ナトリウム
これらはカルシウムの喪失を増加させ、骨密度の低下や骨折リスクの増加を招く可能性があります。また、カルシウムとリンの比率を乱し、骨の健康に悪影響を与えることが知られています。
(翻訳編集 華山律)
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