腫れた足首、脚の重だるさ、記憶力の低下、認知機能の問題──これらに共通しているのは何でしょうか? それは「血行障害」です。
心臓は毛細血管、動脈、静脈を通じて血液を全身に送り出しています。この血流は脳に酸素を供給し、リンパ系と連携して体内の水分バランスを調整し、神経系に影響を与え、さらにはがんの拡散にも関与している可能性があります。
では、血行不良によるこうしたさまざまな症状を改善し、細胞の健全な生存と自然な死滅を促す「バイオフラボノイド(植物色素の一種)」があるとしたら、どうでしょうか?
実は、そうした成分は実際に存在します──それが「ヘスペリジン」です。ヘスペリジンは、柑橘類の果皮および内果皮(白くスポンジ状の部分)に豊富に含まれる有力な植物成分です。
血行のサポート
ヘスペリジンは、血管およびリンパ系の内壁を覆う特殊な細胞である「内皮細胞」と相互作用することで、循環器系に良い影響を与えることが知られています。
この植物成分は、一酸化窒素という体内の化学伝達物質の生成を促進します。一酸化窒素は血管を拡張することで、血圧や血流の改善に貢献します。さらに、ヘスペリジンには抗炎症作用もあります。
静脈弁が弱いと、心臓は血液を全身に送り出し、再び自らに戻すためにより大きな力を必要とします。その結果、体液がたまりやすくなります。さらに、リンパ系が詰まったり損傷したりすると、この体液の蓄積が悪化する可能性もあります。
管理栄養士のカールン・カースト氏は、ヘスペリジンが循環器系、特に静脈に与える有益な効果について、以前からよく知られていると語ります。
「ヘスペリジンは慢性静脈不全の改善に役立ち、静脈性潰瘍にも効果が期待できます」と、カースト氏はエポックタイムズ紙に語りました。また、ヘスペリジンは血行不良によって引き起こされる冷え性、むくみ、静脈瘤、脚の重さといった症状の緩和にも効果があると述べています。
ヘスペリジンは健全な血流を整えることで、酸素を供給する神経系や脳など、身体の他の部位にも良い影響を与えます。これにより、記憶力の低下やその他の認知機能の問題を抱える人々の助けになる可能性があります。
精神的・認知的健康
認知症などの疾患は、うつ病、記憶力の低下、運動能力の低下を引き起こす可能性があります。
研究者たちは、ヘスペリジンが中枢神経系および認知機能に良い影響を与えることを観察しています。2024年2月に『European Journal of Medicinal Chemistry』に掲載されたレビューでは、19件の臨床試験の結果がまとめられています。
ヘスペリジンは神経を保護し、新しい神経細胞の生成を促進することができます。したがって、アルツハイマー病に対抗し、うつ症状を緩和し、認知機能を支え、運動能力や記憶力を向上させる可能性があります。
ヘスペリジンは脳内の特定の経路の活動を変化させます。これらの経路は、感覚や直感を通じて人々が情報を収集し処理するために、脳や体が使用する化合物の生成や変化に関与します。
2023年に『Biomedicine and Pharmacotherapy』に掲載されたレビューでは、ヘスペリジンが脳内の海馬──感情を調整し記憶を支える部位──を介して作用することが指摘されています。
脳のシグナル伝達経路におけるこれらの変化は、不安やうつ症状を軽減し、認知機能や記憶力を改善する可能性があります。これらは特にアルツハイマー病で影響を受けやすい重要な領域です。
アルツハイマー病患者における症状の主な原因は、「神経の炎症」「酸化ストレス」「ミトコンドリア機能障害」の3つであるとされています。ヘスペリジンはこれらすべてに対応する能力を持っています。
酸化ストレスとは、有害なフリーラジカルによって体が圧倒され、それらを適切に排除できない状態を指します。フリーラジカルは対となる電子を持たない不安定な分子で、高い反応性を持ち、細胞を損傷させる可能性があります。酸化ストレスはアルツハイマー病の主要な要因のひとつであり、脳内にプラークが蓄積し、脳細胞が損傷される原因となります。
ミトコンドリア機能障害は、神経細胞内のエネルギー生産が妨げられることで酸化ストレスを助長します。たとえるなら、正常に機能しない発電所のようなもので、細胞内の「発電所」が正常なプロセスを妨げ、脳の健全な働きを低下させるのです。
2024年に『Current Molecular Medicine』に掲載されたレビューでは、ヘスペリジンが脳障害の治療における有望な候補化合物として特定されています。
要するに、ヘスペリジンは細胞の健全なライフサイクルを促進し、新しい神経細胞の成長を支援し、不健康な細胞を排除するのに役立ちます。
ヘスペリジンの補給
ヘスペリジンはサプリメントとして簡単に入手でき、しばしば強力な抗酸化作用と抗がん特性を持つビタミンCやジオスミンと組み合わせて販売されています。
管理栄養士のカールン・カースト氏は、1日1~2回、食事とともに100〜150mgの摂取を推奨しており、植物成分をサプリメントとして摂取するのが最も簡単な方法だと述べています。
しかし、新鮮な果物をそのまま食べたり、ジュースとして飲んだりすることでも、同様の効果を得ることができます。
食べ物とジュース
柑橘類に含まれるヘスペリジンの量は、主に品種によって異なります。どの果物も一般的には安全とされており、健康維持に重要な代謝産物を供給します。
果物によってヘスペリジン含有量は異なります。例えば、オレンジジュース100ミリリットルには20〜60mg、ミカンジュースには8〜46mg、レモンジュースには4〜41mg、グレープフルーツジュースには2〜17mgのヘスペリジンが含まれています。
したがって、2~6個の新鮮なオレンジを搾ったジュースで、栄養士が推奨する1日の摂取量を満たすことが可能です。甘いオレンジ(ネーブルオレンジとも呼ばれます)は、ヘスペリジンが主要なフラボノイドであるため、比較的容易に摂取できます。
一方で、1日に4~20個のミカンを食べるのは現実的に難しく、レモンやグレープフルーツに至っては、食事だけで推奨量を摂取するのはほぼ不可能です。
通常は捨てられてしまう果皮の色付き外層や白い中間層には、より高濃度のフラボノイドが含まれています。
粉末形態
柑橘類の果皮全体は、乾燥させて健康食品として保存することができます。
乾燥の際には風通しを良くして、カビの発生を防ぐことが重要です。適切に乾燥させた後は、密閉できるガラス容器に保存することで、数か月間保管が可能です。
楽しみ方としては、乾燥させた果皮を粉末にし、熱湯に加えておいしいお茶として飲むか、お好みの温かい飲み物に混ぜて味わうことができます。
チンキとして
オレンジなどの柑橘類の果皮は、アルコール抽出にも使用でき、より多くの植物成分を取り出すことが可能です。作り方は『Homemade Phytopharmaceuticals–How to Decoct and Extract Medicinal Plants in Your Kitchen』に記載されています。
オレンジやレモンの果皮を使ったチンキは、70%のアルコールを用いて浸漬するのが最適です。4週間ほど漬け込んだ後、こして使用します。
このチンキは、1日に最大3回、1回あたり5〜10滴を目安に摂取することができます。
注意事項
漢方薬や中医学において、みかんの果皮(陳皮)は珍しい「温める苦味剤」とされています(通常、苦味剤は冷やす作用があります)。そのため、胃炎や消化器系の炎症、潰瘍のある方は使用に注意が必要です。
ヘスペリジンは、内外の健康に大きな価値をもたらす優れた植物成分の一つです。ただし、柑橘類の果皮には農薬や防カビ剤が使用されていることが多いため、必ず信頼できる供給元から購入し、使用前には果実を十分に洗浄してください。
(翻訳編集 日比野真吾)
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