「風と火が強い秋」の五行食養生——水で木を助ける方法
季節は春夏秋冬で移り変わりますが、中医学では自然の流れを「五行」(木・火・土・金・水)にあてはめ、人も自然と同じリズムで生きていると考えます。そのため、体の調子を整えるには季節ごとに合った食事が大切だと言われています。
今年(乙巳年)は特に「風と火の力が強い秋」で、肝臓や心臓に負担がかかりやすく、肺や胃腸も弱りやすい年です。これまで「土を育てて金を助ける(胃腸を強めて肺を守る)」とか「肝を和らげて乾きを潤す(肝と肺・胃腸のバランスをとる)」という養生法がすすめられてきました。けれども、腎の力(水のエネルギー)が弱い人は、今の季節こそ「水が木を育てる」方法がぴったりです。腎の水を養うことで肝が落ち着き、火の勢いもおさまり、胃腸や肺も守られるのです。
ここでは、まず五行の考え方から見た今年の秋の特徴を説明し、そのあとに鹿児島の黒豚を使った「豚骨と昆布・れんこん・大根のスープ」をご紹介します。このスープはあっさりしていて体を冷やさず、栄養はあるけれど重くなく、五行の理にかなった健康食でありながら、日常的に食べられる優しい料理です。
関連記事
腎を補う前に――まず胃腸を整える 冬は「水の季節」とされ、体の中では「腎」に関係が深い時期です。ですから冬にな […]
立冬は肺が弱まり腎が冷えやすい季節。今年は金気が不足し肺の働きが乱れやすいため、五臓の調和が重要です。白菜や豚肉を使った温かい料理で脾と腎を温め、気血の巡りを整えましょう。
秋冬は湿気と乾燥が重なり、脾胃と肺が弱りやすく便秘が増える季節。セロリは気の巡りを促し、エリンギは腸を潤し、牛肉は胃腸を温める食材。三つを組み合わせることで、気血が整い、自然な排便リズムが戻ります。
シソは胃腸を整え、体を温め、風邪や寒さから身を守る力を高めます。特に朝に食べると、体の陽気が自然に立ち上がり、秋冬の風邪予防に効果的。朝食に取り入れたい伝統の養生法です。
中医学の養生は、体を自然界のように調和させる「気候調整」の学問。五行の働きが乱れると病が生じ、整えば健康が戻る。季節と連動した「人体の気候」を理解することで、日々の食と生活に新たな視点が生まれます。