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「風と火が強い秋」の五行食養生——水で木を助ける方法

季節は春夏秋冬で移り変わりますが、中医学では自然の流れを「五行」(木・火・土・金・水)にあてはめ、人も自然と同じリズムで生きていると考えます。そのため、体の調子を整えるには季節ごとに合った食事が大切だと言われています。

今年(乙巳年)は特に「風と火の力が強い秋」で、肝臓や心臓に負担がかかりやすく、肺や胃腸も弱りやすい年です。これまで「土を育てて金を助ける(胃腸を強めて肺を守る)」とか「肝を和らげて乾きを潤す(肝と肺・胃腸のバランスをとる)」という養生法がすすめられてきました。けれども、腎の力(水のエネルギー)が弱い人は、今の季節こそ「水が木を育てる」方法がぴったりです。腎の水を養うことで肝が落ち着き、火の勢いもおさまり、胃腸や肺も守られるのです。

ここでは、まず五行の考え方から見た今年の秋の特徴を説明し、そのあとに鹿児島の黒豚を使った「豚骨と昆布・れんこん・大根のスープ」をご紹介します。このスープはあっさりしていて体を冷やさず、栄養はあるけれど重くなく、五行の理にかなった健康食でありながら、日常的に食べられる優しい料理です。

1.乙巳年は「金」が弱く「木」が強い

今年の秋は「金の力」が弱い年です。本来なら金の力が木を抑えてバランスをとるのですが、それが効かないため木が強くなり、風の影響が一年中強く出ます。

2.7月22日〜9月22日は「火」と「風」が合わさる時期

1年を6つの時期に分けると、今の時期(7月22日〜9月22日)は「君火」と呼ばれる強い火のエネルギーが中心になります。ここに風の勢いが加わるので、炎がさらに燃え上がるような状態になります。本来なら秋らしい涼しさが出るはずですが、強い火にかき消されてしまい、なかなか涼しくなりません。

3.後半はさらに「相火」が加わる

下半期になると「相火」というもう一つの火のエネルギーも加わります。すでに木(風)の勢いが強いところに火が重なるので、秋だけでなく冬までも気温が高めになりやすいのです。

4.「風火の秋」と体の不調、その整え方

今はちょうど下半期の始まりで、「君火」と「相火」、そして「風」が一緒になって金の力(涼しさや潤い)を弱めています。そのため秋なのに暑さが残り、体に次のような影響が出やすくなります。

火は心臓に入り、動悸やイライラを招きます。風は肝臓に入り、めまいや気分の乱れにつながります。そして、肺は火にさらされ、のぼせや寝苦しさが出安くなるでしょう。この時期の養生は、風を鎮めて肝を落ち着かせ、火を冷まして肺を潤すことが大切です。そのためにおすすめなのが「水で木を育てる」考え方です。腎は水、肝は木なので、腎を養えば肝が整い、火も落ち着き、肺や胃腸も守られるのです。
 

食養生の考え方

秋になってもまだ暑さが残り、湿気も多いため、冷たいものばかり食べると胃腸を傷めやすくなります。食養生では「体を温めながら潤いを与える」ことが大切で、腎を潤して肝を養い、肺を潤して乾燥を防ぎ、さらに湿気を取り除いて胃腸を守るのが理想です。

日本の南部、とくに鹿児島や宮崎では煮込み料理が盛んで、豚骨スープや根菜の煮物などがよく食べられています。これらはちょうど「陰を補って乾きを潤し、胃腸を守り湿気を取り除く」という養生にぴったり合います。そんな郷土の知恵を活かして、この秋おすすめなのが 「鹿児島黒豚の骨と昆布・れんこん・大根の薬膳スープ」 です。温かくて優しい味わいで、体に潤いを与えながらも重くなく、ちょうどよい滋養になります。
 

鹿児島黒豚の骨で作る「腎を補い肺を潤す薬膳スープ」

黒豚の薬膳スープ 料理イメージ画像

材料(4人分)

  • 鹿児島黒豚の骨(またはスペアリブ) 500g
     → 特産品で腎を補い、肝を養う。骨の旨味が濃く、普通の豚骨でも可。
  • れんこん (宮崎産)  200g
     → 肺を潤し、胃腸を整え湿気を取り除く。
  • 白大根(宮崎大根が最適) 200g
     → 体の熱を冷まし、消化を助ける。甘みのある根菜。
  • 昆布 50g
     → 肝腎を潤し、火を抑える。痰を和らげる効果も。
  • 赤なつめ(乾燥なつめ) 5個
     → 胃腸を養い、気を補う。
  • 生姜(鹿児島産がおすすめ) 3枚
     → 体を温め、湿気を除き胃腸を守る。
  • クコの実 15g
     → 肝と腎を養い、肺を潤す。
  • 塩 適量

作り方

  1. 豚骨を洗い、下ゆでして臭みを取る。
  2. れんこんは皮をむいて一口大に切り、大根は乱切りにする。昆布は水で戻して切る。
  3. 鍋に水を入れ、豚骨と生姜を加えて強火で沸かし、その後弱火で40分煮る。
  4. れんこん・大根・昆布・なつめを加え、さらに弱火で30分煮る。
  5. 仕上げにクコの実を入れて10分ほど煮込み、最後に塩で味を整える。
     

食養生の効果

  • 鹿児島黒豚の骨:栄養豊富で脂っこくなく、腎を補い骨髄を養う。腎の水が肝を助けて火を鎮める。
     
  • れんこん:肺を潤し、体の熱を冷まし、湿気を取り除いて胃腸を整える。さらに水分を補って乾燥を防ぐ。
     
  • 大根:気の巡りをよくし、痰を取り除き、消化を助ける。
     
  • 昆布:体を潤し、熱を鎮め、腎の水を補って肝を養う。
     
  • 赤なつめ:気を補い、胃腸を養い、全体の食材のバランスをとる。
     
  • クコの実:肝と腎を補い、乾燥を防ぎ、目の健康も守る。
     
  • 生姜:体を温め湿気を追い出し、胃腸を冷えから守る。
     

郷土の味わいと養生の知恵

鹿児島は昔から「黒豚料理」で知られ、豚骨を長時間煮込んで白濁した濃厚なスープに仕立て、体を温めながら湿気を取り除く食文化があります。宮崎で育つれんこんや大根は、湿潤な田畑や砂地で育つためみずみずしく甘みがあり、豚骨との相性も抜群です。

この「養生スープ」は、南日本の食文化と中医学の五行思想——「水が木を生む」を組み合わせた一品です。温かみがありつつもさっぱりとして、栄養豊富で重くならず、しかも「黒は腎に入る」「腎は骨をつかさどる」という考えから、黒豚の骨は腎を養うのに最適です。特に「風と火が強い秋」に飲めば、肝と腎を潤し、胃腸を守り、肺を養う効果が期待できます。

この秋に一杯の黒豚骨れんこんスープは、南日本の郷土の味わいを楽しめるだけでなく、風火の影響を和らげ、五臓を整える頼もしい一杯です。
 
(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。