台湾中央山脈の南麓に位置する高雄市・茂林国家風景区には環流丘陵、渓谷、滝などの緑豊かな山林があります。特に茂林区のルリマダラの谷は、メキシコのオオカバマダラの谷と並び、世界の蝶の二大越冬谷としてCNNやBBCなどに取材されました。『ミシュラン・グリーンガイド台湾』でも、台湾茂林のルリマダラの谷は三つ星という最高評価を受けているのです。
今回は台湾茂林国家風景区にある3つの歩道をめぐり、茂林の生態の美しさを探る旅をPRして行きますよ。また、台湾原住民の一族であるルカイ族の伝統的な石板屋や、パンの香りで家を守る部族の若者たちに語り継がれている美しい物語も皆さんにシェアしたいです!
茂林ルリマダラ生態公園の紫蝶幽谷
「紫蝶幽谷」(ルリマダラの谷)は地名ではなく、ルリマダラ蝶(台湾紫斑蝶)が越冬のために南下する現象という意味です。現在、台湾には30か所以上の「紫蝶幽谷」があり、その中でも茂林区域が最も多いと言われています。それでは「茂林紫斑蝶生態公園」の周辺に沿い、それから「姿沙里步道」に入り、ルリマダラ蝶を追いかけましょう。
私たちは「茂林ルリマダラ生態公園」に入る途中で、茂林国家風景区管理処の解説ボランティアでもある廖金山さんに偶然会いました。廖さんは私たちにいろいろと説明してくれました。
「姿沙里」という名は現地の台湾原住民・ルカイ族(魯凱族)の言葉、ルカイ語で月桃という植物の多い場所という意味で命名されました。月桃が多いところなら多くの蝶々が見えるということですね。
毎年、秋分の頃から冷たい風が吹き始めるため、ルリマダラ蝶が北方から南へ移動してきます。現在、茂林区域にはおよそ三割ほどの蝶々が到着しています。蝶がここにやって来るのは、この辺りの花と関係があります。北から南下してくる蝶は、花蜜がなければここに留まらず、さらに南へ飛び続けていくのです。
茂林での観察記録によると、毎年およそ5割以上の蝶がさらに南へ飛び続けます。茂林区域は、蝶にとって最も北にある大きな棲息地に過ぎないということです。
毎年、ルリマダラ蝶が訪れる前に、茂林区域では多くのボランティアが蜜源植物を咲かせて準備しておきます。これにより、北方からやって来た蝶はその花々に誘われ、1~2か月のあいだゆっくり休んでいきます。廖さんが、その後、本格的な寒季に入ると、蝶たちはあまり移動したがらなくなると説明してくれました。
ルリマダラ蝶の飛んでいるルートの「姿沙里步道」を歩いていくと、蝶の姿などどこにもないように見えますが、実際には多くの蝶が道路の端に身を潜めているのです。人が通り、風がひと撫ですると、そのひそやかな群れは一斉に舞い上がります。まるで私たちが、蝶の織りなす幻想の回廊を進んでいるかのようでした。

ルリマダラ蝶の美しさは決して鮮烈ではないですが、太陽の光を受けたときにだけ現れる、高貴な紫褐色の輝きが、静かに私の心を奪いました。
茂林区域のルリマダラ蝶をじっくり見るのに最も良いシーズンは12月から翌年2月までの午前の時期だと言われています。ルリマダラ蝶の最盛期はどんな様子なのでしょうか? ぜひ最盛期の様子はどんなものなのか見てみたいと廖さんに尋ねました。すると廖さんは、それなら1月にもう一度来てみるといいですよ。台湾の1月は十分に寒いから、蝶の数が忘れられなくなるほどたくさん集まり、とてもロマンチックな光景が現れると答えてくれました。
廖さんは熱心にも蝶の卵まで見せてくれて、丁寧に教えてくれました。
ここが世界に二つしかない越冬型の「紫蝶幽谷」になれたのは、自然条件の良さだけじゃなくて、ボランティアや先生たちが、長年にわたり紫斑蝶の環境を守ってきたおかげです。
だからこそ、ここを訪れると「花盛りになれば、蝶はやって来る」という言葉が本当にそうなると実感できます。

「羅木斯渓登山步道」
「羅木斯」は、現地ルカイ族の言語で「美しい谷」を意味し、「茂林谷」とも呼ばれています。
この登山歩道では、二基の吊り橋や滝に加え、秀麗な山林景観や澄んだ渓流など、多様な自然環境を楽しめます。
歩道は全部で4キロありますが、今開放しているのは1.2キロだけです。
途中で第一号、第二号の吊り橋を渡って、最後に小さなアーチ橋を通ると、そこからはジグザグの上り坂です。
上りきると滝があり、横には一休みできる東屋(あずまや)もあります。
滝の近くまで行ける小道もありますが、ロープを使って降りるので注意が必要です。
歩道は片道約30~40分くらいで、気楽に楽しめるコースです。

石板屋民宿のブライパン
「茂林谷」はルカイ族の故郷です。川のせせらぎに寄り添う「得恩谷」には、石板の家が佇んでいます。この家はご主人がこつこつと石を積むように築き上げた、美しい石板屋のルカイ族風民宿です。

この家からは、焼きたてのパンの温かな香りが充満し、谷にやわらかく広がっていきます。

石板の家へ足を踏み入れると、素朴で深い味わいのブライ(部落)パンはもちろん、ルカイ族の暮らしやご主人の父親への思い、そしてルカイ族の若者へのパン作りの指導や生活支援、そうしたもの全てが、ここを訪れる旅人の心に語りかけます。

龍頭山木道
「龍頭山木道」は、近年、茂林風景区管理処により新たに整備されたハイキングコースです。龍頭山に建造された「小長城歩道」は、山の稜線に寄り添うように木道がゆるやかに続き、まるで万里の長城を思わせる景観が広がります。全長約1キロ、徒歩30分ほどの気軽なコースで、初心者や親子連れにもうってつけです。

歩道からは、環流丘陵というとても珍しい美しい谷景を望むことができ、多納大橋や望夫崖などの名所も一望できます。頭上を鷲が舞うこともあり、「イーグルバレー」の名でも親しまれています。終点の東屋でひと息ついた後、さらに300メートル進むと「多納高」吊り橋に着きます。

多納高の吊り橋
「多納高」吊り橋の正面には、ルカイ族のカラフルな彩りが目を引きます。吊り橋は全長232メートル、高さ103メートルで、濁口渓を跨いでいます。かつては多納村へ行く唯一の道でした。橋を渡ると、石板屋が立ち並ぶ多納村に到着。村のあちこちで、ルカイ族のユニークなトーテムが見られるので、じっくり散策してみるのもおすすめです。

1000歩的繽紛台湾から転載
(翻訳編集・蘇燕)
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