家族と暮らす老後 同居する際に注意すべきことは?

多世代の家族は今に始まったことではなく、古くから人類の家庭はそのような形で生活してきました。そして近年、この傾向は特に退職世代を中心に、はっきりと増加しています。住宅費の高騰、平均寿命の延長、社会的慣習の変化などを背景に、例えば「銀髪の居候」とも呼ばれるシルバー・スクワッター(高齢になってから自発的に成人した子どもの家に同居する人々)など、成人した子どもと同居することを選ぶ人が増えています。

2024年以降、祖父母・親・子どもが同じ家に暮らすこの生活スタイルは、過去10年で最高水準に達しました。さらに全米不動産協会の報告によると、直近1年間の住宅購入者のうち17%が多世代の家族でした。

このような住まい方は、家族関係や経済面でメリットがある一方、いくつかの課題も伴います。そこで本記事では、多世代家族の生活の利点と欠点、そして現実的に考慮すべき点について掘り下げます。

退職後に子どもと同居する人は、ますます増えています。(Shutterstock)

 

なぜ多世代の家族に回帰しているのか?

このように伝統的な生活様式へと戻る動きは、いくつかの現代的な要因によって後押しされています。主な理由は次のとおりです。

財政的な圧力

収入が固定されている退職者にとって、住居費、固定資産税、住宅の維持費は家計を圧迫しかねません。例えば、中価格帯の高齢者施設における個室の費用は、月額1万0646米ドルにもなります。言い換えれば、高齢の親が家族と同居すれば、それだけで大きな金額を節約できる可能性があるのです。

寿命の延長

人々が長生きするようになるにつれ、晩年に必要となる介護や支援も増えていきます。そのため、家族からの支援を受けやすい環境にあることは、大きな魅力となっています。

孫の世話を手伝えること

共働き世帯にとって、親世代と同居することは、家族全員にとって利益のある選択となる場合があります。祖父母は孫の世話を手伝うことができ、子ども世代は高齢の親を支えることができます。アメリカでは、成人のおよそ3割が親世代と同居しており、その理由として「家族の世話をしやすいから」と答えています。その内訳を見ると、25%は高齢の親を介護するため、12%は子どもの世話を手伝ってもらうためとしています。

文化の継承

多世代の家族の利点の一つは、若い世代が年長者から直接学べる点にあります。これにより、文化的伝統や言語、価値観が日常生活の中で自然に受け継がれていきます。

安全で安心できる環境

緊急時に家に誰かがいれば、すぐに助けを得ることができます。新型コロナウイルス感染症の流行はその一例で、家族が同居していることで、隔離による影響を抑えつつ、必要なときに互いに多方面から支え合うことができました。

高齢者は孫の世話を手伝い、文化的伝統を次世代へとつないでいくことができます。(Shutterstock)

 

多世代の家族のメリット

適切に運営されれば、世代を超えた共同生活は、すべての人にとって多くの恩恵をもたらします。

経済的負担の軽減

資源を共有することで、退職者とその子ども世代は生活費を抑えやすくなります。光熱費、食料品、住宅の維持費などを分担することで、全員が節約の恩恵を受けることができます。

支援体制が整う

家族が同居することで、互いに助け合うことが容易になります。高齢者は日常の家事や移動の面で支援を受けやすくなり、若い世代は子どもの世話や家事を年長者に手伝ってもらうことができます。

より強い家族の絆

一緒に過ごす時間が増えることで、家族関係はより密接になります。年長者は自らの人生経験や教訓を共有でき、孫世代は家族の歴史をより深く知ることができます。

孤独感の軽減

高齢者の健康上の課題の中には、孤独と関連していると考えられているものも少なくありません。高血圧や心臓病、肥満、免疫機能の低下、不安や抑うつ、認知機能の低下などが挙げられますが、多世代家族の生活では、日常的な交流や生活の目的、感情的な支えを得やすくなるため、孤独感を和らげる助けになると考えられます。

技能の共有

若い世代は、現代生活における技術的な支援や新しい視点を高齢者に提供できます。一方で、高齢者は自らの知恵や実用的な生活スキルを若い世代に伝えることができます。
 

多世代家族のデメリット

多世代家族には多くの利点がある一方で、いくつかの困難も存在します。そのため、実際の状況を十分に考慮することが重要です。

プライバシーの喪失

同居は、個人の空間を手放すことを意味する場合があります。一人暮らしに慣れている退職者にとっては、順応が難しいこともあります。

潜在的な衝突

生活習慣、子育ての方針、家事のやり方など、家族それぞれの違いが緊張を生むことがあります。適切に対処しなければ、騒音や掃除の習慣、スケジュールの違いといった小さな不一致が問題に発展することもあります。

関係の緊張

個人の境界が尊重されない場合、同居がかえって家族間の距離を広げてしまうことがあります。

役割の混乱

退職した親が孫に関することを過度に決めてしまったり、成人した子どもが親を必要以上に世話しすぎて、不満が生じたりすることがあります。

金銭面の不透明さ

負担が不均等だったり、費用の分担が明確でなかったりすると、金銭問題は複雑になりがちです。

アメリカでは、成人のおよそ4分の1が高齢の親と子どもの両方を扶養しており、家庭生活や退職後の生活に大きな影響を及ぼしています。

近四分之一的美国成人同时赡养年迈父母和子女,严重影响家庭生活与退休生活。(Shutterstock)
(Shutterstock)

 

同居前に考慮すべきこと

同居を始める前には、円満な多世代の家族生活を築くための準備が欠かせません。率直な話し合いと計画、そして明確な合意を通じて、誤解を防ぐことができます。

早めの話し合い

同居の理由、各自のニーズ、どこまで協力できるのかを事前に話し合いましょう。また、家庭内のルール、プライバシーの境界、財務状況、仮の同居なのか永続的な同居なのかについても確認しておく必要があります。

快適な個人空間の設計

家族のつながりを保ちつつ個人の独立性を確保するために、地下室の改装、ガレージの転用、義理の家族用のスイートルームなど、世代ごとの独立した生活空間を用意しましょう。

財務分担ルールの確定

家賃や住宅ローン、光熱費、食費、維持費の分担方法を書面に残しておきましょう。家庭の予算を共同で管理することで、支出の透明性を保ち、将来的な金銭トラブルを防ぐことができます。

家事の分担

子どもにも家事を分担させ、誰か一人に負担が偏らないようにしましょう。好みや能力、時間に応じて割り振り、定期的に見直して調整することが大切です。

介護ニーズの事前計画

家族に健康上の問題が生じた場合に備え、誰がどのように介護を担うのかをあらかじめ決めておきましょう。

バリアフリーな住環境づくり

現在と将来のニーズを考慮し、手すりの設置、照明の強化、通路の拡張など、小さな改善を早めに行うことで住まいの安全性を高めることができます。

子育ての境界を尊重する

祖父母は子育ての大きな助けになりますが、最終的な決定権は子ども世代に委ねるべきです。不要なストレスを避けるためにも、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。

法律面・財務面で全員を守る

同居は、財産権や相続権、各種給付の資格に影響を及ぼす場合があります。引っ越し前に不動産計画を見直し、賃貸や介護の選択肢を検討し、ファイナンシャルプランナーや不動産弁護士に相談することが望まれます。

 

日々の暮らしを快適に保つ

財務や住空間、役割分担も重要ですが、日常生活のリズムこそが、多世代の家族生活の成否を左右します。以下の習慣は、円滑で尊重に満ちた家族関係を保つ助けになります。

コミュニケーションを絶やさない

問題を放置すると、小さなことが積み重なって大きくなります。問題が生じたら1週間以内に短い話し合いの場を設け、うまくいっている点、うまくいっていない点、必要な調整を話し合いましょう。

プライバシーを尊重する

他人の部屋に入るときは必ずノックし、無断で物を借りず、一人の時間を尊重しましょう。関係が近いほど、個人空間への配慮が重要になります。

家族での食事は柔軟に

家族そろって食事をすることは良い習慣ですが、毎回である必要はありません。個人の自立を保つため、別々に食事を取ることが必要な場合もあります。

やり方の違いに柔軟に対応する

料理、掃除、子育ての方法は世代によって異なります。衝突には冷静に対処し、本当に大切なことに焦点を当てましょう。

共同活動と個人活動の両立

個々の趣味や友人関係を大切にすることで、誰もが家庭に縛られていると感じずに済みます。

家事のローテーション

料理、買い物、子どもの送迎などを交代で担当することで、負担の公平性を保ち、過労を防ぐことができます。

共有スペースを清潔に保つ

キッチン、リビング、洗濯室などの共用スペースは衝突が起こりやすい場所です。基本的な清潔基準を決め、それを守りましょう。

日々感謝する

同居は義務ではなく選択です。たった一言の「ありがとう」が、家族の調和を長く保つ力になります。

互いに寛容であること

誰にでも調子の悪い時はあります。理解し合い、衝突を解消しようとする姿勢、そして忍耐と包容力こそが、家庭の幸福を支える鍵です。
 

結論

多世代の家族は、節約につながるだけでなく、家族の絆を強め、同居する家族同士が必要なときに支え合える環境を生み出します。しかし、軽い気持ちで決められる選択ではありません。うまく機能させるためには、丁寧な計画、明確なコミュニケーション、そして現実的な期待が欠かせません。多世代の家族では、各人のニーズと境界を尊重することで、その恩恵は単なる生活様式を超えた価値あるものとなります。

(翻訳編集 井田千景)