習近平にとって張又俠をどう扱うかは、避けて通れない難題となった(大紀元)

習近平にとって張又俠は重荷に 「軍掌握」から「軍警戒」へ

張又俠、劉振立が失脚して以降、中国共産党(中共)軍内部の空気は一気に緊張した。軍の動揺や内部の駆け引きをめぐるさまざまな情報が広がっている。今回の揺れは小さくないとの見方が一般的だ。習近平にとって張又俠をどう扱うかは、避けて通れない難題となった。

旧正月を控えた2月10日、習近平は北京の八一ビル(軍の施設)で、ビデオ形式で全軍の戦備状況を確認し、将兵を慰問した。官製メディアは習近平が「党に従う」「頼りになる」「信頼できる」と述べたと伝えた。しかし過去と比べると変化は明らかだ。2013~22年までは何度も前線部隊の軍営に足を運んでいたが、2023年以降はビデオ方式に変わった。今年も現地訪問はなかった。かつては兵士の前で演説していたが、現在は画面越しの訓示となっている。

台湾国防安全研究院の沈明室研究員は大紀元に対し、軍の士気は確実に影響を受けており、今回のビデオ慰問は主に士気の安定が目的だと述べた。そのうえで、画面越しの呼びかけでどこまで効果があるかは疑問が残ると指摘した。

中国問題の専門家、王赫氏は、ビデオ形式自体は初めてではないが、今年は状況が特殊だと指摘した。軍内部に不満があり、安全面の懸念も強まっているため、習近平はより慎重になる。軍営に入らないのも不測の事態を避けるためだとの見方を示した。

ジャーナリストの艾時誠氏は、健康上の理由であれ安全上の配慮であれ、軍営を直接訪れなくなれば部隊との距離が広がり、直接的な統制力も弱まると考えている。将兵に不信感が芽生えかねないと分析した。

こうした中、中央軍事委員会副主席の張升民は2月11日、北京駐屯部隊を慰問し、「中央軍事委員会主席責任制」を強調した。ただ沈明室研究員によると、政治工作部門出身の張升民が実権を握る将官を抑えられるかは不透明だ。軍全体は依然として安定しているとは言えないという。

軍機関紙は最近、一連の論評を掲載した。張又俠と劉振立の調査を支持するよう全軍に求め、「軍を強め、勝利を収める」ことに力を注ぐよう呼びかけている。外部では、こうした集中的な意思表明こそが、軍心の揺らぎを証明していると受け止められている。2月25~26日に全国人民代表大会常務委員会が開かれる予定だ。張と劉の代表資格が剝奪されるかが焦点とみられる。解任されれば正式な処分確定を意味するが、内部の駆け引きがまだ完全に終わっておらず、なお不確定要素があるとの指摘もある。

また、軍機関紙は中共長征中に造反し、その後除名された張国燾(ちょうこくとう)を反面例として取り上げ、政治教育の強化を強調している。これはさらなる粛清を示唆するシグナルと受け止められている。艾時誠氏は、第21回党大会を見据え、習近平が連任を目指すなら軍内部の粛清は今後も続くと指摘する。ただし密室政治の下で実際の駆け引きを外部が把握するのは難しいとしている。

王赫氏は、張又俠は軍内で影響力があり、扱いを誤れば連鎖反応を招きかねないため、今後の対応はより慎重になる可能性があると述べた。いずれにせよ、今回の粛清は部隊全体に大きな衝撃を与え、習近平にとっても大きな重荷となっていると指摘した。

一方、沈明室研究員は、張又俠にまで手を付けたことは習近平に退陣の意思がなく、障害を排除しようとしている表れだと語った。ただし、経済の苦境が解決されないまま、情勢が悪化し続ければ、課題は一層大きくなるとの見方を示した。

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