中国移動で幹部摘発相次ぐ 通信部門支配権めぐる権力闘争か

2026/05/19 更新: 2026/05/19

この1か月で、中国の通信大手、中国移動の幹部少なくとも6人が相次いで調査対象となった。対象は広東省、四川省、江蘇省、山東省など複数の地方会社に及んでいる。専門家は、今回の粛清について、中共上層部で通信データや監視網の支配権をめぐる争いと関係している可能性があるとみている。

通信業界に広がる「粛清の嵐」

中国共産党(中共)の中央規律検査委員会・国家監察委員会は5月11日、中国移動通信集団広東有限公司(広東移動)の元党委員。元副社長の高志興が、重大な規律違反と法律違反の疑いで調査を受けていると発表した。同日、中国移動四川公司の基礎建設工程弁公室の元責任者、曹江洪も調査対象となった。

翌12日には、山東省菏沢市の規律検査委員会・監察委員会が公式WeChatで、中国移動山東有限公司菏沢分公司の労働組合元副主席、劉陸軍と、官公庁・法人顧客部門の顧客センター元副責任者、李国傑について、重大な規律違反と法律違反の疑いで調査を受けていると発表した。

この1か月で、中国移動では、少なくとも6人の幹部が調査対象となった。広東移動の元副総経理、高志興や、中国移動蘇州ソフトウェア技術有限公司の元会長、方力らが含まれる。

中国紙「南方都市報」が5月11日に報じたところによると、近年、中国移動、中国聯通、中国電信の三大通信事業者では、幹部摘発の動きが広がっている。対象は対象はグループ本社、各省、市の支社、専門子会社など複数の階層に及ぶ。不完全な統計では、2025年以降、少なくとも16人の通信事業者幹部が調査対象となっており、その中にはグループの副社長や省の支社社長といった重要人物も含まれている。

幹部の失脚が相次ぐ中、外部では、この通信業界をめぐる大規模な摘発が、利益の再配分を目的とした「反腐敗」なのか、それとも別の政治的狙いがあるのかに注目が集まっている。

専門家「習派と反習派の水面下のせめぎ合い」

台湾国防安全研究院の沈明室研究員は大紀元に対し、中共の元党首・江沢民時代のいわゆる「黙って大金を稼ぐ」風潮の中で、中共は国有企業の資本移転や、軍・政府による資源配分を通じて、中国移動のような特殊な利益集団を形成していったと分析した。

沈氏は、「中国移動は全国規模の本社を持ち、各省にも支社を置いている。そこから巨大な利益集団が形成された」と指摘する。この利益集団が長年安定して運営されてきた背景には、上層部との政治的なつながりがあり、中国移動との間に密接な政商ネットワークが築かれていたという。

公開情報によると、中国移動は長年、江沢民の長男、江綿恒と深く結びついていた。江綿恒はかつて「中国電信王」とも呼ばれ、通信業界は江沢民派の勢力圏とされてきた。

今回の通信業界における「粛清の嵐」について、米アメリカ在住の時事評論家、唐靖遠氏は大紀元に対し、「現在の中共政局の基本的な構図は、習近平派と反習近平派が重要な権限の掌握をめぐって争っていることだ」と述べた。

唐氏は、「現在、習派とみなされている多くの官僚も、もともとは江派の官僚だった。習近平が権力を集中させる過程で、習につくことを選んだにすぎない」と指摘する。上層部の政治情勢が変化する中、こうした官僚が新たな粛清の対象になっている可能性があるという。

唐氏は、「今回のような通信業界を対象とした大規模な粛清は、反習派が多くの習派官僚に対して動いているようにも見える」と述べた。

唐氏によると、中共第19回党大会以降、習近平は「一強体制」を固めたが、その路線は中共内部で強い不満を招いている。唐氏は「習近平はすでに、中共上層の多くの派閥にとって共通の敵になっている」と分析している。

分析「通信部門を握る者がネット監視を握る」

唐氏は、通信部門が権力争いの焦点となっている理由について、通信、データ、監視、社会統制の能力を同時に握っているためだと指摘する。中共内部の権力闘争において、最も敏感で重要な領域の一つになっているという。

「通信部門を掌握する者は、全国のほぼすべての重要資源に対する監視と情報把握を掌握することになる。上層部の権力闘争において、このシステムは誰も無視できない」

唐氏は、この争いを「天王山の戦い」に例えた。「天王山の戦い」は、日本の戦国時代に天下の行方を左右した重要な戦いで、山崎の戦いとしても知られている。

沈氏も、中共政権にとって通信部門の戦略的地位は極めて重要だとみている。そのため、中共内部の権力闘争が激化する中で、通信部門を掌握すること自体が大きな政治的意味を持つという。

沈氏は、今回の粛清が短期的に収束する兆しは見えないと指摘する。高圧的な反腐敗運動として続けられる場合、たとえ企業の組織構造に損害が出たとしても、当局が停止するとは限らないとの見方を示した。

李浄
駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。
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