習近平が北朝鮮訪問へ 金正恩との会談に見る中朝の思惑

2026/06/08 更新: 2026/06/08

中国共産党(中共)の習近平党首は来週、北朝鮮を訪問し、金正恩総書記と会談する。習近平による北朝鮮訪問は約7年ぶりとなる。専門家は、中朝両国について「同床異夢であり、それぞれに思惑がある」と指摘している。

中共は6月5日、習近平が「招請を受け」、6月8日から9日まで北朝鮮を訪問すると発表した。

習近平が前回、北朝鮮を訪問したのは2019年6月で、今回の訪問は7年ぶりとなる。金正恩との前回の会談は昨年9月で、金氏が北京で行われた軍事パレードに出席した際だった。

今回の訪朝は、習近平がトランプ米国大統領、ロシアのプーチン大統領と相次いで会談してから、わずか数週間後に行われる。これは、中共の外交政策における北朝鮮の位置づけを示すものでもある。また、習近平にとっては、昨年10月末に北朝鮮と対立する韓国を訪れ、APEC首脳会議に出席し、韓国を公式訪問して以来、初の外遊となる。

台湾国防戦略資源研究所の蘇紫雲所長は、中共は現在、日本との関係が緊張しており、北朝鮮の長距離ミサイルや核兵器は日本にとって大きな安全保障上の懸念だと指摘する。習近平は今回の訪朝を通じ、北朝鮮との関係を徐々に修復し、北朝鮮を取り込むことで日本をけん制しようとしているという。

蘇氏は「主な背景として、ロシア・ウクライナ戦争後、北京はロシアへの支援を水面下で行い、規模も限られている。一方で、ロシアと北朝鮮は非常に緊密になっている。北朝鮮は軍の派遣まで行い、その見返りとしてロシアから支援を受けている。特に新たな技術面での支援が注目される。そのため、北京とはやや距離が生じている」と述べた。

蘇氏は、習近平の訪朝後、双方の利害を反映した何らかの取引が行われる可能性があるとみている。ただ、中共と韓国は表面上、良好な関係を保っているため、中朝韓はいずれも同じ立場でありながら、それぞれの思惑を抱えているという。

シドニー工科大学の馮崇義准教授は、金正恩は父や祖父と同じく、中露の間で距離を調整しながら、双方から利益を得ようとしていると指摘する。今回、金が習近平を招いたのも、そうした駆け引きの一環だという。一方で、習近平にも地政学上の必要があるとみている。

馮氏は「個人的な関係は良くない。しかしこの局面では、北朝鮮への影響力を示す必要がある。習近平はこの機会を利用し、北朝鮮に対してなお影響力を持っていることを示そうとしている。もし招待を受けず、関係が悪化すれば、対米関係において一つのカードを失うことになる」と述べた。

中朝関係には最近、交流再開を示す動きも見られる。例えば今年3月、北京と平壌を結ぶ国際旅客列車が再開されたほか、丹東と平壌の間では毎日往復運行されるようになった。

中共は長年、北朝鮮にとって重要な政治・経済面のパートナーである。中朝両国には防衛条約もあり、いずれか一方が攻撃を受けた場合、もう一方が支援することを定めている。

しかし、2024年のロシア・ウクライナ戦争以降、北朝鮮はロシアとの接近を強めている。北朝鮮はロシアから、食糧や石油など、切実に必要としている物資を得ている。

馮氏は「中国は現在、ロシア、つまりプーチンとの間で競争関係にある。北朝鮮は以前、主に中国の支援に依存していたが、今ではロシアにより接近している。中国の北朝鮮に対する影響力はますます小さくなっている。金正恩と習近平の関係も、プーチンと金正恩ほど密接ではない」と述べた。

馮氏によると、習近平の今回の訪朝には、プーチンと影響力を争う狙いがある。北朝鮮がロシア側に完全に傾くことを防ぎたい考えだという。また馮氏は、ロシア・ウクライナ戦争やイラン戦争から、中国、ロシア、北朝鮮、イランの4か国が「新たな悪の枢軸」として互いに支え合っていることが見て取れると指摘する。ただ、各国のイデオロギーは異なっており、その関係もまた同床異夢だという。

5月上旬の米中首脳会談後、ホワイトハウスの発表では、両首脳が「朝鮮半島の非核化を実現するという共通目標を確認した」と明記された。一方、中共の公式発表では、朝鮮半島の非核化への言及はなかった。

馮氏は、北朝鮮は過去から一貫して中共に依存してきた一方で、親中派が台頭することは望んでこなかったと指摘する。これは金日成から金正日、金正恩に至るまで一貫した姿勢だという。そのため、中共の北朝鮮内政への影響力や対外的な影響力には限界がある。

馮氏は「数十年来、ずっとこのような関係だった。北朝鮮はいわば貧しい親戚のような存在で、中国の食糧や技術支援に依存してきた。一方で、中国に支配されることには不満を抱いている。内部の政治闘争にもそれが表れている。例えば、親中派とみられていた金正恩の異母兄、金正男はマレーシアで殺害された」と述べた。

馮氏は、中共は長年、北朝鮮の主要な支援者であり、食糧から先端兵器・技術に至るまで支えてきたと指摘する。ただし、中共はすべてを提供してきたわけではなく、常に一定の留保を設けてきた。これは毛沢東時代から現在まで続いているという。そのため中朝関係は、互いに利用し合いながら依存し、同時に疑念を抱き続けてきた関係だとしている。

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