台風13号「ドルフィン」がもたらしたのは、傘ではしのげないほどの暴風雨だった。
10日の上海では朝から激しい雨が降り続き、市内各地で道路の冠水が相次いだ。車やバイクは大きな水しぶきを上げながら進み、人々はふくらはぎほどまで水につかりながら歩く。
ブティックでは入り口に土のうを積み、従業員が店内に入り込んだ水を外へかき出していた。別の店では床まで浸水し、衣服が濡れないよう商品を棚の上へ避難させていた。
空の便も大きく乱れた。上海の浦東、虹橋の両空港では計943便が欠航し、運航能力は約4割低下した。道路は水につかり、空の便は大きく乱れ、一部の地下鉄も運休した。

それでも、多くの会社員は通常通り出勤した。
政府から一斉休業の発表はなく、交通機関が止まれば、会社員は別の方法を探して職場へ向かわなければならない。
この状況を現地で目の当たりにした台湾人ブロガーは、SNSに動画を投稿。「地下鉄まで止まっているのに、どうやって会社に行けというのか」と首をかしげ、「台湾なら、こんな状況で休みにしなければ大問題になる」と驚きを隠せない様子だった。動画は大きな反響を呼んだ。
中国のSNSでも、「台風でも休めない」会社員たちの不満が噴き出した。
この日(10日)、「ドルフィン出勤」は中国SNS・ウェイボーのトレンド1位になるほど注目を集め、「上海の牛馬は今日も出勤」「道が全部川になっているのに休みの通知がない」など、会社員の悲鳴とも自嘲ともつかない声が殺到した。
なお、中国のネットで「牛馬」とは、牛や馬のようにこき使われる働き手を意味するネット用語である。低賃金でも休めず働き続ける会社員が、自分たちを自嘲して使うことが多く、日本語の「社畜」に近い。
街は水浸しになり、地下鉄まで止まった。それでも会社へ向かわなければならない。台風より怖いのは、「こんな日でも出勤して当然」という空気なのかもしれない。

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