クルミを食べるとき、多くの人は少し複雑な気持ちになります。一方では、脳の働きを助け、心臓を守ると信じて、健康的なおやつとして取り入れています。その一方で、クルミの油分を見ると、カロリーが高すぎるのではないかと心配になります。殻をむいたクルミの実を約7個、つまり30gほど食べるだけで、約200キロカロリーを摂取することになります。食べたいけれど太るのが怖い、かといって食べなければ栄養を逃してしまいそうです。
そこで、多くの人が疑問に思います。クルミは本当にそれほど健康によいのでしょうか。それとも、評判がよいおかげで、高カロリーであることを見過ごしてよいと思われているだけなのでしょうか。
研究者たちは、平均年齢69歳の高齢者319人を対象に調査しました。その約3分の2は女性でした。うち166人には、毎日30~60gのクルミを2年間食べ続けてもらいました。
その結果、クルミを食べたグループでは、オメガ3脂肪酸、マグネシウム、食物繊維の摂取量が多く、食事全体としても炎症を促進しにくい傾向が見られました。
クルミが健康によいと評価されてきたのには、やはり理由があったのです。ただし、この結果には重要なポイントがあります。クルミは、もともと食べていたおやつの代わりに取り入れるのが理想的であり、満腹になった後に無理に追加して食べるものではありません。
319人の高齢者が2年間クルミを食べ続けた
今回の分析は、「クルミと健康的な加齢に関する研究」(Walnuts and Healthy Aging、WAHA)に基づくもので、2026年8月28日に『栄養・食事療法学会誌』(Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics)に発表されました。
WAHAは、米カリフォルニア州ロマリンダとスペインのバルセロナにある2つの研究拠点で実施されたランダム化試験です。今回の分析では、米国側の参加者319人のみを対象としました。参加者は研究開始時点で比較的健康で、自立した生活を送っていました。
研究者たちは、参加者を無作為に2つのグループに分けました。166人は毎日30~60gのクルミを食べました。量にすると、小さなひとつかみから、ふたつかみほどです。残る153人はクルミを食べず、その他のナッツ類も週2回分以内に制限しました。クルミは、前者のグループの1日の総摂取カロリーの約15%を占めていました。
どちらのグループも、普段どおりに食事をしました。減量用の食事でもなければ、見ただけで食欲を失うような健康食の献立が用意されたわけでもありません。唯一、決められていた違いは、一方のグループでは毎日、食卓にクルミが登場するということでした。
2年間にわたり、研究者たちは無作為に5回、「24時間食事思い出し法」による調査を実施しました。参加者に前日に何を食べたかを尋ね、その記録をもとに、一人ひとりの「食事性炎症指数」を算出しました。
この指数は血液検査によるものではありません。1日を通して摂取した食品に基づき、食事全体を評価するものです。数値が低いほど、栄養構成の面から見て、炎症を促進しにくい食事であることを意味します。
クルミを食べたグループの食事性炎症指数の平均はマイナス0.025で、対照グループは0.615でした。年齢、性別、体格指数(BMI)、人種、エネルギー摂取量、喫煙、身体活動量、教育水準を調整した後も、両グループの差は統計的に有意でした。
さらに、食事内容を詳しく分析すると、クルミを食べたグループでは、オメガ3系多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、食物繊維、タンパク質の摂取量が多いことも分かりました。
クルミに含まれるオメガ3脂肪酸の主成分はα-リノレン酸(ALA)で、心血管の健康によい食生活を構成する栄養素の一つです。マグネシウムは、血圧や血糖値、神経や筋肉の機能の調節に関わります。食物繊維は、腸の機能を維持し、排便を促すほか、満腹感を高める働きがあります。
簡単に言えば、クルミをひとつかみ食べると、約200キロカロリーが増えるだけではありません。心臓や腸に必要な複数の栄養素も一緒に摂取できるのです。この研究は、クルミが心臓病や腸の病気を治療できると示したものではありません。毎日決まった量のクルミを食べたグループでは、これらの栄養素の摂取量が実際に多かったことを明らかにしたものです。
クルミを取り入れることで、ビスケットを減らせる
クルミを食べると、食事全体の評価が変わるのはなぜでしょうか。その答えの一つは、クルミ自体にあります。もともとオメガ3脂肪酸、マグネシウム、食物繊維、植物性タンパク質が含まれているため、毎日一定量を食事に取り入れれば、これらの栄養素の摂取量が自然と増えるのです。
もう一つの理由として考えられるのが、ほかの食品の代わりになることです。人が食べられる量には限りがあります。午後3~4時ごろにクルミをひとつかみ食べれば、もともと食べるつもりだったビスケットやポテトチップス、ケーキなどを食べる余裕がなくなるかもしれません。クルミから栄養を摂取できるだけでなく、栄養価の低いおやつを自然に減らせる可能性もあります。
つまり、クルミの利点は「何をもたらすか」だけでなく、「何の代わりになるか」にもあるのです。
ただし、これは研究者たちが示した合理的な解釈にすぎません。今回の分析では、参加者がビスケットやケーキをどれだけ減らしたのかを一つひとつ調べたわけではないため、クルミが特定の食品の代わりになったと断定することはできません。
それでも、一般の人にとって大切なポイントは明らかです。クルミを食べるなら、満腹になったおなかに無理やり新たな居場所を作るのではなく、これまでビスケットが占めていた場所に取り入れるのが理想的です。
クルミの脂質の大部分は不飽和脂肪酸ですが、体によい脂質にもカロリーはあります。クルミ30gには約180~200キロカロリーが含まれています。普段の食事やおやつを減らさず、そのうえにクルミをひとつかみ追加すれば、体重計の数値に変化が現れるかもしれません。
午後に何か食べたくなったときは、ビスケットの代わりに、味付けしていないクルミをひとつかみ食べてみましょう。朝食では、クルミを砕いてオートミールや無糖ヨーグルトに加えるのもよい方法です。和え物やサラダに少量を散らせば、食後にわざわざ追加で食べる必要もありません。
クルミは、できるだけ味付けされていない無塩のものや、砂糖でコーティングされていないものを選びましょう。砂糖で煮詰めたクルミ菓子も、確かに「クルミ」には違いありませんが、表面の砂糖まで健康的な食品に変わるわけではありません。
歯が弱い高齢者は、クルミを細かく刻んでおかゆや料理に混ぜるとよいでしょう。嚥下が困難な人は、むせる危険があるため、大きなクルミをそのまま食べるのは避けてください。クルミアレルギーのある人は食べてはいけません。
クルミは油分が多く、開封後は酸化して風味が落ちやすいため、密閉して冷蔵保存しましょう。数カ月保存したい場合は、そのまま冷凍することもできます。
食事が炎症を促進しにくいことと、体内の炎症が低下することは同じではない
今回の研究では、C反応性タンパク質(CRP)などの血液中の炎症マーカーを直接測定していません。そのため、「毎日クルミを食べれば炎症を抑えられる」と結論づけることはできません。
研究で確認されたのは、クルミを食べたグループではオメガ3脂肪酸、マグネシウム、食物繊維の摂取量が多かったこと、そして摂取した食品に基づいて計算すると、食事全体として炎症を促進しにくい傾向があったことです。
これはあくまでも食事の評価であり、体内の炎症が実際に低下したことを意味するものではありません。また、クルミが病気を治療できることを示すものでもありません。
対照グループでは、クルミを食べなかっただけでなく、ほかのナッツ類の摂取も制限されていました。したがって、今回比較されたのは「毎日クルミを食べること」と「ナッツ類をほとんど食べないこと」であり、クルミとアーモンド、カシューナッツのどれが優れているかを比較した研究ではありません。
この研究はカリフォルニア・ウォルナット委員会(California Walnut Commission)の資金提供を受けており、著者の一部も、所属機関を通じて関連研究の資金を得ていたことを開示しています。業界から資金提供を受けているからといって、研究結果が無効になるわけではありません。しかし、こうした関係は公開される必要があり、研究結果についても、ほかの独立した研究による検証が待たれます。
では、クルミはこんなに脂質が多くても、毎日食べてよいのでしょうか。今回の研究が示した答えは、日常の食生活に取り入れることで、オメガ3脂肪酸、マグネシウム、食物繊維の摂取量を増やせるということです。ただし、たくさん食べるほどよい健康食品だと考えてはいけません。
次にビスケットの箱へ手を伸ばしそうになったら、少し方向を変えて、クルミをひとつかみ取ってみましょう。ビスケットの場所を、クルミに譲ってあげる。それが一番の活用法です。
(翻訳編集 解問)
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