糖質を減らしたのにLDL値が上昇? 遺伝的な体質と食事の関係

友人は炭水化物を減らし、体重を落とし、気分もよくなり、コレステロール値も安定したままです。一方、あなたも同じような食事法を試したのに、LDL(悪玉)コレステロール値が急上昇します。この違いは、意志の強さや自制心の問題ではないかもしれません。その一因は、あなたのDNAにある可能性があります。

1年間にわたる臨床試験の新たな分析から、食事の変化に対するコレステロール値の反応が人によって異なる理由を、遺伝が説明する一助となる可能性が示唆されました。低炭水化物ダイエットを実践した参加者のうち、飽和脂肪の摂取量が増えた人では、LDL値が高くなりやすい遺伝的傾向を持つ人ほど、LDLコレステロール値の上昇幅が大きくなっていました。一方、飽和脂肪の摂取量が少ないグループでは、遺伝的リスクが、飽和脂肪の摂取量とLDL値の変化との関係を同じように強める傾向は見られませんでした。

ただし、重要な注意点があります。現時点では、この知見は学会抄録としてのみ発表されています。学会抄録は、新たな研究成果を共有する一般的な方法の1つですが、完全な査読論文として評価されるまでは、結果は予備的なものとみなす必要があります。

この分析では、2018年に実施された「食事介入による治療成功の要因を調べる研究(DIETFITS)」の臨床試験を完了した481人の遺伝データが使用されました。この大規模な研究では、健康的な低炭水化物ダイエットと健康的な低脂肪ダイエットが1年間にわたって比較されました。その結果、平均すると、どちらの食事法でも同程度の体重減少が得られることが分かりました。

DIETFITS研究でいう「健康的」とは、野菜や加工度の低い食品を重視し、添加糖、精製小麦粉、トランス脂肪を制限することを意味していました。低炭水化物グループは穀物やでんぷん質の食品を減らし、低脂肪グループは油、脂肪の多い肉、全脂肪乳製品を減らしました。

研究者たちは、6カ月間のLDL値の変化を調べ、飽和脂肪の摂取量とポリジェニックスコアとの関係を分析しました。ポリジェニックスコアとは、LDLコレステロールに関連する数千の小さなDNAの違いを合算して算出する、遺伝的リスクの指標です。LDL値を上げる方向に働く遺伝的要因もあれば、下げる方向に働くものもあり、そうした多数の小さな遺伝的影響を重み付けしてまとめたものです。

平均すると、参加者は飽和脂肪の摂取量を大幅に増やすことなく、炭水化物の摂取量を大きく減らしていました。しかし、LDLコレステロール値が高くなりやすい遺伝的傾向を持つ人では、飽和脂肪をより多く摂取した参加者ほど、LDL値の上昇幅が大きくなっていました。なお、学会抄録では、飽和脂肪の摂取量の違いを生み出した具体的な食品は特定されていません。
 

遺伝子はパズルの1ピースにすぎない

ポリジェニックスコアが、個人の食事選択に活用できる段階にあるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれています。認定栄養専門家のジョニー・ボーデン氏は、遺伝が食事に含まれる脂肪への反応を左右する一因となる可能性があると述べました。しかし、今回の研究で用いられた遺伝的スコアが、個人の食事選択を導くうえで本当に役立つのかについては疑問を呈しました。

「診療相談では、臨床的に重要な遺伝子を調べます。数千もの遺伝的要因を調べるわけではありません」と、彼はエポックタイムズに語りました。「2人が実質的に同じ低炭水化物・高飽和脂肪の食事をしていても、もともと持っている遺伝的要因によって、脂質の反応が大きく異なることがあります」

単一の遺伝子検査だけで、どの脂肪を食べるのが最適か、あるいは食事を変えた後にLDLコレステロール値が上昇するかどうかを判断することはできません。スタンフォード大学医学部で個別化栄養について講義する栄養科学者のルシア・アロニカ氏は、遺伝研究が将来的に食事指導の個別化に役立つ可能性はあるものの、現時点では、個人が何を食べるべきかを具体的に指示できる段階にはないと述べました。

「食事に対する反応は、一人ひとり大きく異なります」と、アロニカ氏はエポックタイムズに語り、遺伝的リスクは数ある要因の1つにすぎないと付け加えました。代謝の健康状態、体組成、性別、体重の変化、炭水化物の代わりに何を食べるかといった要素も、コレステロール値の反応を左右する可能性があります。現時点では、遺伝は「個人のLDL値の反応を予測するための確立された方法ではなく、有望な研究ツール」として捉えるべきだと、アロニカ氏は述べました。

よく取り上げられる遺伝子の1つに、アポリポタンパク質E(ApoE)があります。これは、血液中で脂肪を運ぶ働きに関与しています。

「ApoE4という遺伝子型を持っているために、飽和脂肪の影響を受けやすい人がいます」と、ボーデン氏は述べました。ApoEには複数の型があり、E4はリスクとの関連が指摘されています。片方の親からE4を受け継いでいる場合も、その影響を受ける可能性があります。

ただし、研究結果は一貫していないため、ApoEの遺伝子型だけで、飽和脂肪を多く含む低炭水化物ダイエットによってLDL値が上昇するかどうかを確実に予測することはできません。

まれではあるものの、見過ごしてはならないケースもあります。家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロール値が非常に高くなる遺伝性疾患で、治療しなければ若年で心臓病を発症する可能性があります。

「家族性高コレステロール血症は、LDL値と心血管リスクに大きな影響を及ぼすため、適切に特定し、管理する必要があります」と、アロニカ氏は述べました。
 

LDL以外の指標にも目を向ける

DIETFITS研究では、LDLコレステロールと総コレステロールが測定されました。どちらも重要な検査項目ですが、それだけでは心臓病のリスクを完全に把握することはできません。

「1つの指標だけで全体像が分かるとは思いません」と、アロニカ氏は述べました。低炭水化物ダイエットを実践している人については、トリグリセリドとHDL(善玉)コレステロールも確認するといいます。炭水化物を減らすことで、これらの数値が改善する傾向があるためです。

簡単に言えば、炭水化物を減らすと、血中脂肪の一種であるトリグリセリドが低下し、血流から余分なコレステロールを取り除く働きを助ける「善玉」コレステロールのHDLが増えることがよくあります。しかし、こうした変化があっても、LDL値が大幅に上昇したり、高い状態が続いたりすることへの懸念が自動的に解消されるわけではありません。アロニカ氏は、特にApoBを有用な指標と考えています。

「動脈硬化を引き起こす可能性のある各リポタンパク質粒子には、ApoB分子が1つ含まれています。そのため、ApoBを測定することで、動脈壁に入り込む可能性のある粒子が血液中にどれくらい存在するかを推定できます」と、彼女は述べました。

LDL値は、どれだけのコレステロールが運ばれているかを示します。一方、ApoBは、それを運ぶ粒子がどれくらいあるかを示します。ボーデン氏は、LDLの限界について簡潔に述べました。「LDLは指標であって、リスクそのものではありません」

アロニカ氏は、コレステロールの測定値だけでなく、ほかの検査指標も考慮しています。

「最終的には、脂質プロファイルを血圧、血糖値、インスリン抵抗性、家族歴、その他の臨床的なリスク要因と組み合わせて評価します」と、彼女は述べました。

また、非HDLコレステロールとリポタンパク質(a)も確認します。リポタンパク質(a)は遺伝的要因の影響を強く受ける、血液中のコレステロール運搬粒子です。値が高い場合、心臓病や脳卒中のリスクが高まる可能性があります。アメリカのガイドラインでは、LDLとは異なり、主に遺伝によって決まることから、成人期に少なくとも一度はこの粒子を測定することが推奨されています。
 

低炭水化物ダイエットは、どれも同じではない

「低炭水化物」という言葉が示すのは、摂取量を減らす食品についてだけであり、その代わりに何を食べるかまでは分かりません。

ある低炭水化物ダイエットでは、オリーブオイル、アボカド、ナッツ、種子類、脂肪の多い魚、卵、非でんぷん質の野菜、加工度の低いタンパク質源を取り入れるかもしれません。一方、別の低炭水化物ダイエットでは、バター、クリーム、ベーコン、ソーセージ、チーズ、ココナッツオイル、高度に加工されたケトスナック食品に大きく依存することもあります。

どちらも低炭水化物ダイエットに分類されます。しかし、食物繊維の量、食品の加工度、脂肪の種類など、栄養面では大きく異なる可能性があります。

「この研究が間違っているとか、飽和脂肪は誰にとっても素晴らしいと主張しているわけではありません。物事は文脈の中で捉える必要があります」と、ボーデン氏は述べました。

この文脈は、今回の分析結果を解釈するうえでも重要です。参加者は、飽和脂肪の総摂取量を大幅に増やすことなく、炭水化物の摂取量を大きく減らしていました。

「この結果を、飽和脂肪は関係ない、あるいは誰もが同じように反応すると解釈するべきではありません」と、アロニカ氏は述べました。また、予備的な学会抄録では、研究者たちが観察した飽和脂肪の摂取量の変化を、どの食品がもたらしたのかは明らかにされていません。
 

LDL値が上昇した場合、どうすればよいか

低炭水化物ダイエットを始めた後にLDL値が大幅に上昇した場合、アロニカ氏は、炭水化物の制限をすぐにやめるのではなく、まず食事に含まれる脂肪の供給源を見直すことを勧めています。

「脂肪の一部をエクストラバージンオリーブオイル、アボカド、ナッツ、種子類、脂肪の多い魚に切り替え、バター、クリーム、脂肪の多い加工肉への依存を減らします」と、彼女は述べました。

また、炭水化物の摂取目標を守りながら、非でんぷん質の野菜や加工度の低い食品を取り入れ、十分な食物繊維を摂取することも勧めています。そのうえで、血液検査を再び受け、数値が変化するかどうかを確認します。

ボーデン氏は、さらに広い視点から評価することを重視しています。ApoB、空腹時インスリン、炎症の指標、トリグリセリド、HDLコレステロール、血圧、ウエスト周囲径に加え、睡眠、ストレス、身体活動なども確認します。

「リスクとは全体像のことです。たくさんのピースから成るパズルなのです」と、彼は述べました。

再検査と臨床評価を行っても判断が難しい場合には、画像検査が役立つこともあります。冠動脈カルシウムスキャンでは冠動脈の石灰化したプラークを確認でき、頸動脈超音波検査では首の動脈にプラークがあるかどうかを調べられます。

「バイオマーカーはリスクを推定するのに役立ちます」と、アロニカ氏は述べました。「しかし、画像検査によって、動脈硬化、つまり動脈にプラークが蓄積しているかどうかを確認できる場合もあります」

DIETFITS研究の予備的な知見は、低炭水化物ダイエットが本質的に有害であることや、飽和脂肪が誰に対しても同じように作用することを示しているわけではありません。むしろ、遺伝、代謝の健康状態、食品の選び方が、炭水化物を減らしたときのコレステロール値の反応に影響する可能性を示唆しています。

「問題は、低炭水化物ダイエットがよいか悪いかという単純な話ではありません」と、アロニカ氏は述べました。「どのような低炭水化物ダイエットが、どの人に適していて、どのような測定可能な反応が得られるのか、ということです」

遺伝子だけで健康上の結果が決まるわけではありません。しかし、遺伝的要因は、すべての人に同じ食事法を当てはめることが難しい理由の1つであり、食事を個別化する必要性を裏付ける要素となる可能性があります。

(翻訳編集 日比野真吾)

臨床栄養士および自然療法士として、2009年より消化不良、依存症、睡眠障害、気分障害に悩む方々を支援するコンサルティングを実施。大学で補完医療を学ぶ中で、行動神経科学や腸・脳の不均衡に強い関心を抱く。それ以来、栄養ゲノミクス、トラウマにおけるポリヴェーガル理論、および栄養療法アプローチに関する大学院レベルの認定資格を取得。