次の文章はアメリカの新聞史上最も有名な記事である。発表されてからすでに108年経つが、アメリカでは今もなお、クリスマスが来るたびに、各地の新聞や雑誌に掲載されている。
「サンタクロースは本当にいるの?―子供の質問への回答」
フランシス・P・チャーチ
「ニューヨーク・サン」紙は、最近読者から次のような手紙を受け取りました。そこで、ここに社説の形でお返事します。この手紙をくれた人は、私たちを信じて、こんなに大切な質問をしてくれました。記者一同とてもうれしく思っています。
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新聞記者のおじさん:
私は8歳です。友だちの中に、「サンタクロースなんていない」という人がいます。お父さんに尋ねると、「サン新聞に聞いてごらん。新聞社がいると言ったら、本当にいるんだろう」と言いました。お願いします。サンタクロースが本当にいるのか、教えてください。
ヴァージニア・オハンロン
ニューヨーク市西95番街115番地
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ヴァージニア、あなたの友だちは「サンタクロースなんていない」と言ったそうだけど、それは間違いだよ。
その友だちはきっと、今流行っている、何でも疑うというくせが付いてしまっているんだろう。
何でも疑う人は、自分の目で見たものしか信じない。
そんな人たちは、心が狭いので、分からないことがいっぱいあるのに、分からないことは全部嘘だと決め付けてしまうんだ。
でも、人の心っていうのは、大人も子供もとても小さいもの。
私たちが暮らすこの限りなく広い宇宙の中で、私たち人間の智慧は小さな虫けらや蟻くらいに小さいものなんだ。
広くて奥深い世界を知りたければ、全てのことを理解しなければならないし、全てのものの巨大で奥深い智慧をよく知らなければならない。
ヴァージニア、サンタクロースは確かにいる。これは決して嘘ではないよ。この世界に愛があり、人を思いやる心があり、真心があるように、サンタクロースは確かにいる。
あなたにも分かると思うけど、この世界は、愛と真心が満ち溢れていて初めて、美しく楽しいものになるんだ。
もしサンタクロースがいなくなったら、この世はなんて真っ暗で寂しいことだろう。
この世にあなたのような可愛い子供がいないなんて考えられないのと同じように、サンタクロースのいない世界など考えられない。
サンタクロースがいなければ、私たちの苦痛をやわらげてくれる信仰も詩も愛も、全部なくなってしまうかも知れない。私たちが味わうことのできる喜びは、おそらく目で見ることができ、手で触ることができ、体で感じることができるものだけになってしまう。その上、子供時代には世界中に一杯あった輝きが、全部なくなってしまうかもしれない。サンタクロースがいないなんてありえない。
サンタクロースを信じないのは、妖精を信じないのと同じだ。
クリスマスイヴに、お父さんに探偵を雇ってもらい、ニューヨーク中の煙突を見張ってもらったらどうだい?ひょっとしたら、サンタクロースを捕まえることができるかもしれない。
でも、たとえ煙突から出てくるサンタクロースの姿を見ることができなくても、それで何が証明できたと言うんだい?
この世で最も確かなものは、子供の目でも大人の目でも見ることのできないものなんだから。
ヴァージニア、あなたは妖精が原っぱを飛び跳ねているのを見たことがあるかい?きっとないだろう。でも、そうだからと言って、妖精がでたらめな作り話だなんて言えないだろう?
この世界の見えないものが全て、人間が勝手に想像した作り物だなんて言えない。
私たちは赤ちゃんの「ガラガラ」を分解して、音がどうやって出るのか、中がどうなっているのか見ることができる。でも、目で見ることのできない、世界を覆っている大幕は、どんな力持ちでも、世界中の力持ちが集まっても、決して開けることはできない。
信仰と想像力と詩と愛だけが、その大幕を開けて、その後ろにあるたとえようもない美しくきらきらと輝くものを見せてくれるんだよ。
それほど美しく光り輝くものが、人が勝手に作り出したでたらめだとでも言うのかい?
ヴァージニア、これほど確かで恒久なものは、間違いなくこの世界に存在する。
サンタクロースがいないだって?
とんでもない。サンタクロースは間違いなくいるし、おそらく永遠に死ぬことはないだろう。
千年後、百万年後にも、サンタクロースは今と同じように、子供たちをわくわくさせてくれるはずさ。
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