五輪前に独立系メディアの衛星放送を中断、原因は「中国からの圧力」

【大紀元日本7月15日】中国大陸で4千万世帯の視聴者を有し、「中国の空に窓を開いた」と評価される海外最大の独立系中国語テレビ放送局新唐人テレビ(NTDTV、本部・ニューヨーク)の中国大陸向け衛星放送が、先月から突然中断され、未だに回復されないままだ。北京五輪が開催される前に、中国当局の検閲を受けず国内の情報を報道する唯一の中国語衛星放送の突然の中断に、多くの憶測が飛び交う。衛星使用提供者の欧州最大手衛星事業者、フランスのユーテルサット社がNTDTVに、中断の原因について技術的な故障と説明しているが、実質的には北京五輪の開催に向けて、中国当局と共謀した政治的行動である事実が先日、国境なき記者団(RSF、本部・パリ)が公表したユーテルサット社上層部幹部の関連発言の録音テープにより、明らかとなった。

「CEOの決定だった。主な原因は、中国政府から絶えず文句と警告を受けているからだ……2年も前から、中国放送管理総局から、『(NTDTVの放送を)止めてから、ほかの交渉に入ろう』と繰り返し言われていた……あの衛星、本当に壊れてほしかった……」。

この発言は、国境なき記者団が7月10日に独自入手したと公表したもので、ユーテルサット社(以下、ユ社)上層部幹部が6月23日に発言した録音テープの内容の一部。

公表された国境なき記者団が今回行った独自の調査報告によると、ユ社が今回、新唐人テレビ局の対中国大陸の放送を中断したのは、技術的な故障ではなく、ユーテルサット社のジュリアーノ・ベレタ会長が、利益関係から中共の気を取るために、中国の民衆がもっとも検閲を受けていない情報を必要とする五輪開催前のこの時期、

7月11日、NTDTV主催の記者会見で証言するRSFのニューヨーク支局のTala Dowlatshahi主任(写真・大紀元)

意図的にNTDTVの信号を中断した政治行動であるという。

録音テープの中で、同上層部幹部はまた、「我々が最も避けたいのは、米国政府の本件への関与」などと話し、自社の衛星には万一に備える余分の設備があることや、今回のNTDTV放送を中断させた見返りとして中国のロケットで自社の衛星の発射を求めているなどと説明、現時点までに、中国当局からいかなる優遇な条件も提示されていないと言い、この幹部は談話の中で苛立ちを見せていた。

1977年に設立したユーテルサット社は、世界第三位、欧州最大手の衛星事業会社。04年には、新唐人テレビ局と自動更新するはずの衛星使用契約を一方的に打ち切ると示したこともあったが、その後、米国政府、欧州連合、カナダ議会の強い反対により実現できなかった。その際、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「ユ社」の経営陣は中国マーケットに食い込むために新唐人テレビとのビジネスを駒として「活用」、中国当局との交渉に使おうとしている、などと報じた。

上記の録音の内容は、国境なき記者団のホームページ(下記URL)でhttp://www.RSF.org/article.php3?id_article=27818 公表されており、マスコミにも録音テープが提供できると同団が示す。

国境なき記者団(RSF)は、言論の自由(または報道の自由)の擁護を目的とした、ジャーナリストによる欧米中心の非政府組織。1985年、フランスのパリで設立された。世界中で拘禁や殺害されたジャーナリストの救出と、その家族を支援。そして各国のメディア規制の動きを監視や警告をするのが主な活動である。

RSFニューヨーク支局のTala Dowlatshahi主任は11日、新唐人テレビが主催する記者会見で証言、上記の録音テープの信憑性を再三に確認した上で、ホームページでの公開を決断した、などと述べ、「最近、ユ社の衛星製造子会社が中国当局と取引を契約、「中興9号」という新しい衛星の発射に合意した」と挙げ、ユ社に対し、新唐人テレビを対象とした放送封鎖を取りやめるよう求めた。

同件の経緯について、新唐人テレビのスポークスマン、ケリー・ホン氏が、11日の記者会見で以下のように説明した。

「6月16日、弊社中国向け衛星放送の信号が突然中断した。衛星使用契約を結んでいるユ社が、同衛星の電気系統に故障が生じたため、一部の転換設備の運行を中止させた結果であると説明、解決に取り組んでいると回答したが、1ヶ月近く経過した今でも、ユ社からの状況報告が一切なく、『調査中』と繰り返すばかり」。

また、同衛星には24個の同様の設備があり、新唐人テレビだけが運行中止されたことに、同スポークスマンが疑問を呈し、「ユ社のやり方は異常だ。一般の企業はビジネスのために、早急に顧客の技術トラブルを解決するのが常識」と指摘、新唐人テレビの放送が中断させられた同じ日に、ユ社と深い関係にあるAlcatel-Lucent社が中国の国営企業「中国移動」と10億ドルの取引を結んだと話した。

NTDTVが7月11日に、ニューヨークのマンハッタンで記者会見、6月から中国大陸向けの衛星放送中断について回復を求めた(写真・大紀元)

新唐人テレビの李綜・総裁は記者会見で、「独裁政権の下にいる中国人は客観的な情報を熱望している」と述べ、「新唐人の放送が観られないことは、新鮮な空気を吸えないのに等しい」などの中国国内視聴者からのフィードバックを紹介し、NTDTVの中国向け放送再開のため、各国政府、産業界、民間社会に対し、ユ社に圧力をかけることを呼びかけた。

同局はホームページ上で、ユ社に提出する嘆願署名を行っている。

http://ntdtv.com/xtr/gb/addsign.html

中国当局による度重なる妨害への対策について、ケリー・ホン氏は、衛星の購入計画を明らかにし、「自由・民主を求め続けているすべての人々がわが社のプラットフォームを介して自分の声を発することができるようにするために、この決断を下した。莫大な資金が必要になるため、視聴者や各界からの募金を呼びかけている」と説明した。(関連の問い合わせ先、電話:1-800-558-9045、 メール:funding@ntdtv.com)。

新唐人テレビ(NTDTV)は海外華人が運営する最大の中国人向け独立系中国語放送局。中国当局の検閲を受けず中国国内の情報を報じるのが特徴。同社の広報説明によると、「02年に米国ニューヨークで設立してから、中国当局から度重なる業務妨害、脅迫などを受け続けてきた」という。

(記者・余暁、翻訳・編集/叶子)
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