中国古典舞踊の魅力②

【大紀元日本2月8日】

鑑賞のポイント其の一「身法」

身法とは、中国古典舞踊における特徴的な動作を指す。そう口で言うのは簡単だが、「神韻」によって最高レベルの身法を見た観客は、その身体能力の高さに圧倒されるという。 

しかし、これをアクロバティックな曲芸として見るのは正確な理解ではない。また、クラシックバレエなど他のジャンルの舞踊とも根本的に異なっている。身法は、あくまでも中国古典舞踊のなかで確立された極技であり、演者はこれによって、中国武人の忠義や潔癖、中国佳人の凛とした美しさなど、さまざまな内涵(内的本質)を表現するのである。

身法は、毯子功(タンズコン)という、絨毯マットの上でおこなわれる日々の厳しい訓練によって培われる。

静止技の代表には、片足を前方または体側からほぼ垂直に上げていく「朝天■(チャオ・ティエン・デン(■…登の下につくえ)」、同じく片足を背後から真上に上げていく「紫金冠(ツー・ジン・クワン)」などがある。

【朝天■(チャオ・ティエン・デン)】

(大紀元)

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【紫金冠】

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身法の特徴である空中技にもいろいろあるが、空中で一度脚をはさんでから前後に大きく開く「撕叉跳(スー・チャー・ティアオ)」など、舞台上で二メートル近く飛び上がる跳躍力はまさに驚異的である。

回転技で、手を着かずに前方へ飛んで回ると「前挺(チェン・ティン)」、側方へ回転すれば「蠻子(マン・ツー)」となる。ひねりを加えて飛びながら舞台全体を大きく旋回する技は「飛脚(フェイ・ジャオ)」または「旋子(シュワン・ツー)」という。

【撕叉跳】

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両腕を広げ連続して高速回転する「串翻身(チュアン・ファン・シェン)」は、トゥシューズを使うバレエのような水平回転ではなく、縦回転の、いわば「人間大車輪」である。美しい女性ダンサーが見せるこの大技に、観客は度肝を抜かれることだろう。身法の種類と、それを見た観客の「驚き」を挙げればきりがない。

前回の神韻日本公演での演目「覚醒」は、中国の警察に迫害される法輪功学習者が市民とともに悪へ立ち向かっていく物語であるが、その勇気と信念の象徴として、神韻芸術団のトップダンサー任鳳舞が舞台中央で見せた堂々たる「朝天■」は、まさに圧巻であった。

鑑賞のポイント其の二「身韻」

古来より日本人に親しまれてきた漢詩にも韻がある。漢詩を訓読する日本人には分りにくいのだが、漢詩における韻とは、単に同類の響きの文字をパズル的に配置したものではなく、もっと深い文学的滋味を出す「味わい」の妙であることは間違いない。しかし、それを言葉で説明するのは、俳聖・芭蕉の「わび・さび」を説明するに等しい難題であろう。

話を戻さねばならない。中国古典舞踊の身韻を少しでも理解するために、漢詩の韻からアプローチしようともがいてみたのだが、どちらも一種の「味わい」である以上、観客である私たちが自己の感性を高めるしか方法はないようだ。

身韻とは、中国古典舞踊における独特の表現方法を指すが、それは先に述べた身法のような激しい身体運動ではなく、身体の所作から表情、視線、指先に至るまでの全てから発せられる細やかで豊かな「味わい」なのである。

では、その「味わい」とは何か。もはや日本語での説明に限界を感じざるを得ないが、それは例えば、背後から声をかけられた麗人が振り向く場面で見せる「擰(ひねり)」「傾(かたむき)」「圓(まるみ)」などの、それぞれ決められた所作が一体となって醸し出す、えも言われぬ「薫り」のことである、と言えば少しは説明になるだろうか。

その上に、「反律」という、反対方向へ先に動作を振っていく技法、例えば、左へ移動する際にはまず右の方へ動作を起こしてから左へ進む、という一種の定形が加わって、他に類を見ない、中国古典舞踊独特の優美な世界が構築されるのである。

前回の神韻日本公演の演目「精忠報国」は、北方から異民族に攻め込まれた祖国を救うため、民族の英雄・岳飛が出陣していく物語である。岳飛の老母は、息子が母を心配せず心置きなく戦えるように、自ら針を取り、息子の背中へ「精忠報国」の四文字を刻み込む。しかしその瞬間、老母の心の動揺を示すように、針をもつ手がわずかに震えるのである。

それこそが、バレエなど他の舞踊には見られない、中国古典舞踊の身韻が醸し出す絶妙な「味わい」であると言われている。ただし、誤解してはならない。そのような細やかな所作は、演劇として取り入れられたものではなく、あくまでも歴史ある中国古典舞踊のなかに確立された表現方法なのである。

「神韻世界ツアー」がすでに始まっている各国から、「まさにDivine(神のような)ステージだ」という絶賛の声が続々と寄せられている。

手前味噌ながら、中国古典舞踊の魅力を理解する最高無二の方法は、まもなく来日する「神韻」を実際にご覧になっていただくことに尽きるだろう。「神韻」の会場で、皆様とともに感動できることを切に願っている。

(完)