緩和政策発表:民間資本、国有事業参入へ 懸念される実効性とリスク=中国

【大紀元日本5月19日】中国国務院は5月13日、「民間投資の健全な発展の奨励と牽引に関する若干の意見」を通達し、鉄道、インフラ、公共事業、軍需産業、金融サービスなどこれまで国有企業が独占してきた分野に、民間資本が参入できるようにする緩和政策を発表した。2005年2月発表の民営経済の発展奨励に関する通達「非公経済36条」を拡張したもので、「新36条」と呼ばれているが、経済の新しい起爆剤になるか、それとも新たな腐敗の温床になるのか、専門家が様々な見解を発表している。

中国政府の統計によると、2009年1~11月の期間、中国の民間部門への投資額は都市部の固定資産投資の56%を占め、重要な経済勢力へと成長した。この部門の経済活動を刺激することで、不動産価格抑制新政策で市場が崩壊する際に、不動産投資のリスクを分散させようとする政府の狙いや、不況下での経済発展を維持しようとする政府の意図が見え隠れしている。

同政策が提案された背景として、イギリス在住の中国経済学者張炜氏はBBCの取材に応じて、08年年末から政府が実施した4兆元(日本円52兆円相当)の景気対策が、顕著な経済効果を上げなかったことにあると話す。同景気政策は、私有経済の発展を促進できなかっただけでなく、資金の大部分を国有企業に流入し、国有資本の市場シェアを拡大させ、民間資本が市場撤退する「国進民退」と呼ばれる現象を深刻化させ、批判を招いている。

こうした背景のもと、新たな打開策として、政府は民間資本が起爆剤となることに期待しているようだ。

懸念される民間資金の金融参入

しかし、実施にあたっての規則が明確に規定されておらず、「画餅に帰する」のではないかと中国人民大学、金融・証券研究所の趙錫軍副所長は見解する。「民間企業が銀行を開業した場合、それに付随するリスクの責任の取り方など不明な箇所が多く、適切な規定なしでは、社会の混乱を招きかねない」との懸念を示した。

中国紙「羊城晩報」に「政策上の『ボーナス』は、民間資本を孤立状況から救えるか」という評論が記載されている。新政策の効果について「机上の空論ではないか」と疑問を投げかけ「具体的な規定がなければ、民間資金は今までの通り、不動産市場や株式市場への投入、またはニンニク、お茶、ゴールドなどの投機くらいしかできないだろう」と手厳しい見方を提示している。

上述の経済学者・張炜氏も、銀行の管理・監督が極めて弱い中国では、民間企業による金融業界への参入はリスクが高く、それに対応する法律や規定、関連措置が準備されていない状況での実施は、一連の社会混乱を引き起こす可能性があると指摘している。中国社会の管理は、基本的に行政手続きを通して行われているため、大量の民間資金が金融業界に入る場合、同様な行政手続きを通して管理されることは、民間資金にとっては「不公平、極まりない」と同氏は見解する。

張炜氏は、民間資金を金融サービスに参加させる際、最も切迫した問題として、闇の金融組織の合法化を挙げている。

新政策に対して同氏は、政府が市場参入の主導権を握り、司法が政治から独立しておらず、幹部腐敗に汚染された現在の中国では、民営企業による公的事業への参加は、更なる腐敗を増大させ、社会的モラルを低下させるだけと憂慮している。

(翻訳編集・高遠)

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