中国太陽光発電業界 過剰生産と競争激化で淘汰の局面に

2024/12/14 更新: 2024/12/14

中国の太陽光発電業界は、中国共産党政府の長期的な補助政策によって各地でプロジェクトが乱立し、供給過剰に陥っている。この結果、業界全体が深刻な低価格競争に巻き込まれ、「自殺的」とも言える過剰競争に直面している。今年第3四半期までに、主要企業15社のうち80%が赤字を計上し、11社の純利益が前年同期比で100%以上減少している。業界は淘汰の局面を迎え、過剰な生産能力の整理が急務となっている。

大幅な価格下落が業界を圧迫

中国メディア「経済観察者」の12月6日の報道によれば、5日に開催された2024年中国太陽光発電産業年次会議で、太陽光発電産業協会名誉会長の王勃華氏が提供したデータによると、2024年1~10月において国内の多結晶シリコン価格は35%以上、シリコンウェーハ価格は45%以上下落した。また、セルとモジュールの価格も25%以上下落し、同期間の製造業全体の生産額(インバーターを除く)は7811億元(約16兆5176億円)で、前年同期比43.17%減少している。

協会理事長の曹仁賢氏は「業界全体が採算割れ状態にあり、利益率が極端に低く、多くの企業が赤字に陥っている」と危機感を示した。また、一部の企業がコストを下回る価格で入札している現状を「自殺的行為」と非難した。

原材料価格の暴落と業界の苦境

2023年からシリコン原材料価格が急落し、70%以上の大幅な減少を記録している。今年に入ってもその傾向は続き、9月末時点で価格はさらに38%下がり、1キログラムあたり40元(約800円)にまで低下している。この価格は一部企業の現金コストと同水準であり、多くの企業が採算割れに直面している。

太陽光発電関連企業全体では、上場企業121社のうち39社が純損失を計上している。中でも主要15社のうち12社が赤字、11社は純利益が前年同期比で100%以上減少している。台湾の経済学者・呉嘉隆氏は、業界が抱える根本的な問題として「供給過剰」を指摘している。特に新エネルギー車、リチウム電池、太陽光電池といった分野が同様の課題を抱えていると述べている。

輸出減少と淘汰の進行

2024年1~10月の太陽光発電製品(シリコンウェーハ、セル、モジュール)の輸出額は前年同期比34.5%減少し、総額281億4千万ドル(約4兆3297億円)にとどまっている。また、アメリカ商務省は11月29日、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム経由で輸入された製品に対し、最大271.2%の反ダンピング関税を課す仮決定を発表している。この影響で、これらの国に工場を設けている中国企業がアメリカ市場に供給する手法も制限されつつある。

国内市場では無制限の低価格競争が続き、国外では輸出規制が強化される中で、過剰な生産能力の整理が急務となっている。

業界の未来と生産能力整理の進行

今年に入り、愛康新エネルギー科技や中利科技集団、東旭新エネルギー藍天をはじめとする複数の太陽光発電関連上場企業が特別管理株(ST・Special Treatment、特別処遇)指定を受けた。その中で、愛康科技は6月に湖州、贛州、蘇州の各工場を順次閉鎖し、8月12日に上場廃止となった。

中信建投が10月に発表したレポートによれば、シリコン、セル、モジュールといった各段階での過剰生産能力の整理は2025年末から2027年にかけて進行すると予測されている。一部の主要企業では現金準備が2~4四半期分しかなく、2025年上半期には一部の生産能力が市場から撤退する可能性が高いとされている。

太陽光発電業界では、供給と需要の不均衡が続き、価格の下落が止まらない状況の中で、一部の企業は経営困難が深刻化している。セグメント(区分)ごとに生産能力の整理速度にはばらつきがあり、多結晶シリコン、電池、ガラスなどの分野では比較的早い段階で整理が進むと予測されている。現時点では、主要企業の一部で現金準備が生産活動を維持できる期間がわずか2~4四半期に限られており、2025年上半期には一部の生産能力が市場から撤退する可能性が高いとみられている。

2023年の上海展示会で隆基緑能科技(ロンジー・グリーン・エナジー・テクノロジー)の李振国総裁が予測したように、「今後2~3年以内に業界全体の半数以上の企業が淘汰される」可能性が現実味を帯びている。

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