高市首相は12月12日、自身のXへの投稿において、ガソリン価格の引き下げ策として、政府による補助金をさらに5.1円/L引き上げ、暫定税率廃止と同水準である25.1円/Lとしたことを公表した。首相はこの措置を「高市内閣の総合経済対策第一弾」と位置づけている。
軽油についても、既に11月27日に暫定税率廃止と同水準の17.1円/Lまで補助金が引き上げられている。このガソリン価格の引き下げ措置は、二人以上の世帯に対し、年間で約12,000円程度の負担軽減になると試算されている。ただし、ガソリンスタンドの在庫状況によっては、価格引き下げに時間がかかる場合があるため、国民に対し、通常のペースで給油するよう呼びかけている。
物価高騰への緊急対応と総合経済対策
今回の措置の背景には、物価高騰が家計の安心感を揺るがし、個人消費や民間需要の力強さを欠く現状認識がある。日本経済は依然として「デフレ・コストカット型経済」から「成長型経済」への移行が道半ばであり、デフレへの後戻りを避けるための分岐点に立っている。
この状況に対応するため、政府は令和7年11月21日に閣議決定された「「強い経済」を実現する総合経済対策」に基づき政策を実行している。この経済対策は「生活の安全保障・物価高への対応」「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」「防衛力と外交力の強化」の三本柱で構成されており、今回の燃料油価格激変緩和対策は、第1の柱である「生活の安全保障・物価高への対応」の「エネルギーコスト等の負担軽減」に位置づけられる。
燃料油価格に関する補助金は、令和7年11月5日に自民党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、公明党、日本共産党の6党合意に基づいて実施されたものである。政府の喫緊の課題は、賃上げが物価上昇を上回る状況を実現し、家計の実質所得を確保することであり、エネルギーコストの負担軽減策は、国民生活と企業活動の両面を下支えする狙いがある。
政府の総合経済対策には、今後のエネルギーコスト対策と税制に関する見通しが含まれている。
補助金と暫定税率の廃止
ガソリン価格の補助金は、政党間の合意に基づき、ガソリン税が令和7年12月31日、軽油引取税が令和8年4月1日に予定されている当分の間税率廃止の円滑な施行に向けた対応として位置づけられている。補助金はガソリンについて令和7年12月11日までに、軽油については令和7年11月27日までに暫定税率廃止と同等の水準まで引き上げられることが計画されており、今回の発表は、その目標水準に達したことを示している。
財源と支援策の継続
今後は、当分の間税率の廃止に伴って必要となる国および地方公共団体の安定的な財源を確保しつつ、流通の混乱を避けるための適切な対応が求められる。また、補助金終了の影響を受ける中小企業・小規模事業者や生活者に対しては、「重点支援地方交付金」やその他業種向けの施策を活用して支援を行う方針である。
経済成長への回帰
政府は、これらの対策を通じて、企業と政府の支出する力を強め、家計に所得が回る好循環を確立し、デフレに後戻りすることのない持続的な経済成長の実現を目指しており、経済対策全体で、約21.3兆円程度の国費等を投じ、事業規模としては42.8兆円程度を目指している。この大規模な財政措置は、物価高対応を通じて国民の暮らしの安全・安心を確保し、所得と消費を押し上げ、最終的に税収増と成長率の範囲内での債務抑制、すなわち財政健全化を両立させる道筋を描いている。このため、今回の燃料補助金は、日本経済を「強い経済」へ移行させるための、長期的な戦略の第一歩と見なされる。
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