中国成長率2%予測 内需に課題 IMF元チーフが警鐘

2025/10/26 更新: 2025/10/26

中国共産党第20期四中全会が閉幕し、今後5年間の経済計画が承認された。国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのロゴフ氏は、中国の経済成長率が今後2%台に鈍化する可能性を指摘。内需拡大の難しさ、不動産市場の低迷、米中貿易戦争など、取り巻く課題が山積みで、中国経済の先行きには不透明感が増している。さらに同氏は、米中の経済対立の中で中国経済のほうが相対的に脆弱であると述べた。

今回の四中全会は、米中貿易戦争が一層緊迫する中で開催され、会議では今後5年間の国家発展目標に関する計画草案が承認された。草案はまだ公表されていないが、四中全会の公報では第15次五か年計画の一部内容が示されている。

公報によれば、中国は現代的な産業体系を構築し、実体経済の基盤を強化し、科学技術の自立性と実力を高め、高品質な新たな生産力を形成し、強い国内市場を構築するとともに、高水準の対外開放を推進する方針である。

IMFの元チーフエコノミストであるケネス・ロゴフ(Kenneth Rogoff)氏は、大紀元の取材に対し、「国内市場の拡大こそが中国発展のカギである」と指摘した。

「長年にわたり、中国はインフラ整備と輸出に強く依存しており、現在もその路線を続けているように見える。多くの国では消費が国民所得の少なくとも60%を占める。アメリカの場合は3分の2、すなわち66%である。ところが中国では50%を大きく下回っており、需要面で大きな欠落がある。中国は長らくこの点を軽視してきた。注目すべきは、公報にその点を指摘する一文があるだけである」と語った。

ロゴフ氏は現在、ハーバード大学で国際経済学講座の教授を務めており、2001年から2003年までIMFのチーフエコノミストを務めた。米国科学アカデミーおよび米国芸術科学アカデミーの会員であり、世界で長年引用回数トップクラスの経済学者の一人として知られる。また、国際チェスのグランドマスターでもある。

内需拡大を阻む多くの課題

ロゴフ氏は、中国の経済成長の質は長年低い水準にあり、経済の再バランスが必要だと指摘する。

「中国は、実際には急を要しないインフラや不動産を過剰に建設してきた。輸出向け製品を生産し続けているが、世界はそれを十分に消費できる状態ではない。中国はより国内市場に重心を移す必要がある。興味深いのは、彼らが国内市場を拡大したいと述べているが、では具体的にどのように実現するのかという点である。そこが本当に重要な問題だ」と述べた。

同氏は、中国の不動産市場の低迷と社会保障制度の脆弱さが「強固な国内市場構築」という目標を極めて難しくしていると指摘した。

「現在、消費は非常に低調である。多くの都市では住宅の過剰供給と価格の高止まりが見られ、多くの地域で住宅価格が下落している。住宅は中国の一般家庭の資産の約8割を占める可能性がある。人々は資産価値の下落を強く懸念しており、それが消費にブレーキをかけている」と分析した。

ロイター通信によると、中国では9月の新築住宅価格が過去11か月で最も速いペースで下落しており、国家統計局のデータに基づくと、9月の新築住宅価格は前月比で0.4%、前年比で2.2%低下したという。

ロゴフ氏はさらに、「強い国内市場の構築」が難しい背景には、中国における年金と医療の不備があると述べた。「人々は将来の老後に備えて貯蓄せざるを得ない」と語る。

「医療水準も依然として低く、多くの地域で本来あるべき基準に達していない。人々は医療のために貯蓄しなければならない状況であり、これでは消費を拡大するのは困難である」と説明した。

また、彼は「人々が貯蓄を続けざるを得ない理由は他にもある」とし、「中国は今も一人っ子政策の影響を受けており、一人の子が両親を支え、場合によっては自身の子どもも養う必要がある。そのため貯蓄が欠かせない。都市部で働く農民工も子どもの教育費を負担するため、貯蓄を強いられている」と指摘した。

中国経済が輸出依存から内需主導への転換に失敗すれば、中所得国の罠に陥る危険がある。

ロゴフ氏は「中国はより消費を重視し、国内需要に焦点を当てた発展戦略を取る必要がある。そうして初めて持続的成長が実現できる。そうでなければ、中国は中所得国の罠――つまり、ある程度の所得水準、すなわち中所得層に到達した段階で、それ以上の発展ができなくなる停滞状態――に陥る可能性がある」と警鐘を鳴らした。

中国経済成長率、2%に鈍化と予測

国内需要が低迷するなか、中国共産党は依然として「高成長維持」の目標を手放していない。党指導部は、「2035年までに中等先進国の水準に到達し、経済規模を2020年の2倍に拡大する」との目標を掲げ続けている。

オランダ国際グループ(ING)大中華圏チーフエコノミストの宋琳(ソン・リン)氏は、「この目標の実現には、今後10年間で平均4~5%の経済成長が必要になる」と指摘する。

一方、ロゴフ氏は、「中国経済が今後2~3%の成長を維持できれば上出来と評価できる」とみている。

「中国経済の成長は今後さらに減速すると考える。年率2~3%の水準を保てれば十分健闘しているといえる。1人当たりで見れば依然として多くの国を上回るが、5~6%の成長は望めないだろう。公式統計では高い数値が示されるかもしれないが、実態としては明らかに成長の鈍化が進んでいると思う」と述べた。

中国国家統計局の公式統計によると、2025年第3四半期の実質GDP成長率は前年同期比4.8%となり、予想をわずかに上回った。国家統計局は10月20日、「年間目標である5%前後の達成に向け、堅固な基盤を築いた」と発表した。

しかし、公開報道が示す実情は楽観できるものではない。家計は消費を控え、企業の投資は減少傾向にある。経済がかろうじて崩壊を免れているのは、中国の製造業が記録的な水準で世界各国に輸出を続けているためであり、その結果、ワシントン、ブリュッセル、北京など各地で貿易摩擦が激化している。

米中貿易戦争、トランプ政権が新たな圧力を加える

米中間の貿易戦争は依然として激化の一途をたどっている。中国共産党がレアアースの輸出制限を発表したのを受け、トランプ米大統領は中国製品に100%の関税を課す構えを見せた。

10月24日、トランプ政権はさらに踏み込んだ対応に出た。米通商代表ジェイミソン・グリア氏は、「米中経済貿易協定(第一段階合意)」の履行状況について通商法301条に基づく調査を開始すると発表。調査の結果、中国側が合意を遵守していないと認定されれば、新たな追加関税が課される可能性があるという。

「政治的には中国、経済的には米国が優勢」

長引く米中貿易戦争において、どちらがより持ちこたえられるのか。ロゴフ氏は次のように分析する。

「政治面で見れば、中国のほうが『冷戦型の圧力』に耐えやすい。中国の人々は困難な時代への耐性が高く、習近平は権力のコントロールを一層厳しくしている。したがって、政治的にはトランプ大統領のほうが影響を受けやすいだろう」と述べた。

共産党の強権体制のもとで、中国国民はかつて極度の飢饉に苦しんだ時代を経ても体制に抵抗することはできなかった。一方、民主主義体制のアメリカでは、大統領は有権者の声に耳を傾けなければならない。

現在、アメリカでは大豆が豊作期を迎えている。しかし農家の表情は暗い。11年前、中国は米国から126億ドル(約1兆3230億円)分の大豆を購入したが、今年はこれまで一切購入していない。ロゴフ氏は中共政府がトランプ大統領の支持基盤を狙い撃ちしていると分析する。

それでも、こうした政治的駆け引きは、中国が受けた経済的打撃の大きさを覆い隠すことはできない。

ロゴフ氏は続ける。「経済面では、中国はより脆弱である。不動産危機を抱える中国では、不動産とインフラが最大の産業である。直接・間接を含めればGDPの約3分の1を占める。日本の現状にも似ており、日本経済は急速に減速している。その一方で、アメリカ経済は依然として堅調で、優位な立場にある」と述べた。

アメリカ政府のデータでも、今年春のアメリカ経済は消費支出の増加と輸入減少により、予想を上回る成長を示した。国内総生産(GDP)は4月から6月にかけて年率換算3.8%増となり、従来の3.3%を上回った。

消費者は世界最大の経済を支える原動力であり、関税や経済的不安の中でも底堅さを維持している。6月末までの1年間で個人消費支出は2.5%増加し、従来の1.6%を上回った。8月の小売売上高も前月比0.6%増となり、市場予想を超えた。

「中国の技術野心、世界で頓挫」

2022年以降、アメリカ政府は中国への半導体技術や製造装置、関連工具の輸出制限を強化してきた。目的はこの重要分野でのアメリカの優位を維持することにある。これに対し中国共産党は、「科学技術の自立性と自主的な実力を高める」との方針を示した。

ロゴフ氏は「戦略としては理にかなっているが、中国の技術的な野心は世界で大きな打撃を受けた」と分析する。

「中国は依然として製造業と輸出に依存しているが、世界の国々は次々に門戸を閉ざしている。欧州は環境汚染や二酸化炭素排出の削減を掲げながら、実際には中国製電気自動車の流入を認めていない」と語った。

欧州連合(EU)は2023年10月、中国製電気自動車に対する反補助金調査を開始した。調査の結果、中国メーカーが政府の補助を得て欧州企業に脅威を与えていると判断され、2024年11月1日から5年間、最大38.1%の反補助金の相殺関税を課すことを決定した。

アメリカも同様に中国製EVの受け入れを拒否している。

ロゴフ氏は結びにこう述べた。「バイデン政権時代でさえ、アメリカは中国製電気自動車を受け入れなかった。これは共産党指導部にとって大きな失望であろう。彼らは国連などが掲げる長期目標の実現を目指し、“グリーン製品”を生産して環境負荷を減らそうとしているが、世界はそれを受け入れようとしていない」と述べた。

韓江
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