英国バイリンガル子育て奮闘記(56) カフェテリア形式の給食(1996年頃)

【大紀元日本10月11日】日本では、離乳食の時点から栄養価を考え、蛋白質は赤、野菜は緑、穀類は黄色などで区分分けされた乳幼児の本が出版されていたりする。日本の姉から送ってもらった離乳食の本をヘルスビジター(助産婦の後の時期に母子をケアする人)に見せたら、目を見張っていた。これほどまでに美しく区分された本が、なぜ英語で出版されていないのか、首を傾げていた。

栄養のバランスを考えて、給食も「三角食べ」と言って、「パン、ミルク、おかず」の順でたべるよう指導された私の生まれ育った環境とは大違い。国をあげて栄養価の認識が低いという印象を受けた。

一概に英国人は甘党だ。バースデーパーティーでもらってくるケーキにとどまらず、乳児にホワイトチョコレートをあげている若いお母さんを目撃した覚えがある。右も左も分からない時から、そんなに甘いもの食べさせたら、もうこれでその子の一生の味覚が決まってしまうのではないかと、人様の子ながら、ひとり、心を痛めたことがある。

娘が学校に上がった時、誰がいつ来ても対応できるように、ソーセージとベーコンを冷蔵庫に入れておくようにした。しかし、フライドポテトやパスタばかり食べて、野菜にはほとんど手をつけない同級生が、ひとりならず何人もいることは驚きだった。食卓で「人参食べなさい」「いや」という、時間をかけた親子の交渉はないのだろうか。

英国の学校の給食では、娘が在校中にカフェテリア形式が導入された。校長先生の決断だったようだ。学校によってまちまちだった。学校の講堂に業者が入り、全校生徒が列について好きなものをトレイに乗せる。クラス別で行動することはなく、昼食時は担任の代わりにボランティアのお母さんが子供たちを見守る。こうして、教師には昼休みが与えられている。

子供の自主性に任せるわけだから、当然野菜は選ばれず、フライドポテトのたぐいが好まれていた。ベジタリアンとかアレルギーとかで弁当持参の子もいる。子供たちが集団の中で違う物を食べても、浮き上がることはない。しかし、一般的には偏食になりやすいと思う。「残さずに全て食べなさい」がいいのか、「自主的に選んで」がいいのか、難しいラインだ。

道理で、娘が日本の小学校に体験入学した時に、クラスルームが食堂に変身し、友達が業者さんのように配膳する日本の小学校が、実に新鮮だったわけだ。 体験入学5日めの最終日に、担任へのご挨拶もかねて教室まで迎えに行ったが、廊下に給食を残さず全部食べた人の名前が貼ってあり、娘の名前も書かれていた。

 (続く)

著者プロフィール:

1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。