私の三女は中学校の卒業式を終えると、大勢のクラスメイトをがやがやと連れて、「パパ、卒業したよー。お祝いちょうだい!」と興奮しながら家に戻って来た。「まずは、ブラッド・ピットの映画を見て、新しいパソコンを買ってから、四川料理を食べに行って、電子辞書を買ってもらう・・・」と、彼女の希望リストを読みあげた。
リストの内容は、2~3週間前から、彼女から何度も聞かされている。「全く問題ない。全部実現しよう。でも、これらは君たちへの卒業祝いにはふさわしくないね」と私は言った。子どもたちは疑うような目で私を睨み、「なぜ?」 と聞いた。
「皆はもう15歳だろう。ならば、準成人ということだから、それなりのプレゼントでなければならないね」と答えた。子どもたちは頷きながら、興味津々に私を見つめ、話の続きを待った。
「準成人ならば、社会やコミュニティーに関心を寄せなければならないから、この地区に社会貢献すべきだよ。だから、君へのお祝いは近所の道路掃除のボランティアだね」と話した。私の話が終わったとたん、娘のクラスメイトたちはどうやらお祝いパーティーを期待する雰囲気ではなくなったことに気づき、席を暖めるいとまもなく、別れを告げるとそそくさと出て行った。
それからの3日間、我が家は総動員で家の近所から約300メートル続く道路を掃除した。ボランティアの初日、子どもたちは友人に見られたくないのか、マスクをして帽子を深く被った。しかし、2日目からは、雑草がいっぱい生え、ゴミが散乱していた一部の道路がきれいになったのを嬉しく感じたのか、子どもたちはマスクを外して作業を行った。その次の日、さらに自信がついた三女は、まるでこの地区の区長であるかのように、往来する住民たちに声をかけて挨拶をし始めたのだ。
これが、私からの三女への卒業プレゼントだった。あれから何年も経つが、彼女は今でもこのプレゼントが忘れられないと話している。
※呉雁門(ウー・イェンメン)
呉氏は2004年8月~2010年8月までの6年間、台湾雲林県口湖中学校の第12代校長先生として務めた。同校歴任校長先生の中で最も長い任期。教育熱心で思いやりのある呉氏と子どもたちとの間に、たくさんの心温まるエピソードが生まれた。
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